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サントリーホール サマーフェスティバル 2019 〈ミカエル・ジャレル〉《室内楽》|藤堂清

サントリーホール サマーフェスティバル 2019〜サントリー芸術財団50周年記念〜
サントリーホール 国際作曲委嘱シリーズ No. 42(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家〈ミカエル・ジャレル〉《室内楽》
Suntory Hall Summer Festival 2019 ― SUNTORY FOUNDATION for the ARTS 50th Anniversary ―
SUNTORY HALL INTERNATIONAL PROGRAM for MUSIC COMPOSITION No. 42 (Artistic Director: Toshio Hosokawa)
THEME COMPOSER 〈Michael Jarrell〉Chamber Music

2019年8月26日 サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
2019/8/26 Suntory Hall Blue Rose (Small Hall)
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 山廣康夫/画像提供:サントリーホール

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プレ・トーク[ミカエル・ジャレル&細川俊夫]

<曲目・出演>作曲:ミカエル・ジャレル
エチュード ピアノのための(2011)
  ピアノ:永野英樹
《ベーブング(ヴィブラート)より》 クラリネットとチェロのための(1995)
  クラリネット:上田希
  チェロ:多井智紀
《…分岐された思考..(. ナッハレーゼⅦb)》 弦楽四重奏のための(2015)
  ヴァイオリンⅠ:辺見康孝
  ヴァイオリンⅡ:亀井庸州
  ヴィオラ:安田貴裕
  チェロ:多井智紀
《無言歌》 ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための(2012)
  ヴァイオリン:辺見康孝
  チェロ:多井智紀
  ピアノ:永野英樹
《エコ》 声とピアノのための(1986)
  ソプラノ:太田真紀
  ピアノ:永野英樹
《分岐(アソナンスⅠc)》 アンサンブルのための(2016)[日本初演]
  指揮:キハラ良尚
  フルート:上野由恵
  クラリネット:上田希
  バス・クラリネット:山根孝司
  打楽器:神田佳子
  ピアノ:永野英樹
  ヴァイオリン:辺見康孝
  ヴィオラ:安田貴裕
  チェロ:多井智紀
  コントラバス:地代所悠

前半の最後の曲《…分岐された思考..(. ナッハレーゼⅦb)》、4人の奏者が同時にアタックするように弦を叩く、最弱音で緊張を高める。
曲の構造や奏法が目新しいわけではなく、また楽器の音の重ね方や和声も伝統的なものに感じられる。しかし、ここでの辺見ら4人の集中力の高い演奏は、ダイナミクスの大きいフレーズの連続、弱音のピッチカートで奏されほとんど無音と感じられる時間、といったような幅広い表情を描き出す。
演奏は熱を帯び、客席も巻き込んでいく。「現代音楽」とは思えないような盛り上がりをみせた。これは演奏者の力量によるものなのだろうか?それとも曲自体のもつポテンシャルだろうか?

同時代音楽の祭典サントリーホールサマーフェスティバル2019、今年のテーマ作曲家はミカエル・ジャレル。スイスのジュネーヴ出身、ドイツ、フランス、イタリアなどで学び、積極的な作曲活動とともに、教育にも力を尽くしてきている。
テーマ作曲家シリーズでは室内楽と管弦楽のコンサートが行われ、管弦楽では委嘱作品が初演される。また作曲家の推薦する新人作曲家の作品などが演奏される。一方室内楽は、この作曲家の作品のみで構成されることが多い。
この日のプログラムもジャレルの作品のみ6曲。
ピアノの独奏曲《エチュード》では、永野の技巧のさえがきわだつ。フランツ・リスト国際ピアノコンクールの課題曲として作曲されたという事情もあるのか、鍵盤楽器としての用法以外の使い方はみられない。音色の多彩さはあまり感じられなかったが、曲のせいか、演奏者のせいか、はたまたホールの音響のせいなのか、判断できなかった。
後半のはじめはピアノ・トリオのための《無言歌》。ピアノの永野の安定した響きの上で、ヴァイオリンの辺見、チェロの多井が自在に動く。緩やかな部分でも三人の緊張感のある音が緩みを感じさせない。
最後の《分岐(アソナンスⅠc)》は、これまでに登場した器楽奏者5名に管楽器と打楽器が加わる大きな編成。打楽器奏者は多くの楽器を担当し大忙し、常に走り回っている。管楽器も通常の奏法で演奏する場面は多くなく、息を強く吹き込み風切り音を交えた響きを作り出す。音自体の面白さは感じられるが、音楽全体の構造や流れといったところに惹きつけられるものがない。熱演なのだが。

コンサート全体としては、演奏者の曲への踏み込んだ姿勢もあり、熱気あふれるものとなった。だが、現代曲としてみると少し定型化された印象で、不満も残る。

(2019/9/15)

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ProgramPre-Concert Talk: Michael Jarrell & Toshio Hosokawa

<Pieces & Players> All composed by Michael Jarrell:

Étude pour piano (2011)
   Pf: Hideki Nagano

“Aus Bebung” pour clarinette en Si♭ et violoncelle (1995)
   Cl: Nozomi Ueda
   Vc: Tomoki Tai

“…in verästelten Gedanken… (Nachlese Ⅶb)” pour quatuor à cordes (2015)
   Vn Ⅰ: Yasutaka Hemmi
   Vn Ⅱ: Yoshu Kamei
   Va: Takahiro Yasuda
   Vc: Tomoki Tai

“Lied ohne Worte” pour violon, violoncelle et piano (2012)
   Vn: Yasutaka Hemmi
   Vc: Tomoki Tai
   Pf: Hideki Nagano

“Eco” pour voix et piano (1986)
   S: Maki Ota
   Pf: Hideki Nagano

“Verästelungen (Assonance Ic)” pour ensemble (2016, Japanese Premiere)
   Cond: Yoshinao Kihara
   Fl: Yoshie Ueno
   Cl: Nozomi Ueda
   Bs-Cl: Takashi Yamane
   Perc: Yoshiko Kanda
   Pf: Hideki Nagano
   Vn: Yasutaka Hemmi
   Va: Takahiro Yasuda
   Vc: Tomoki Tai
   Db: Yu Jidaisho