撮っておきの音楽家たち|リッカルド・ムーティ|林喜代種
リッカルド・ムーティ(指揮者)
2018年10月23日 ホテルオークラ東京
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
イタリアの指揮者リッカルド・ムーティが第30回高松宮殿下記念世界文化賞(音楽部門)を受賞。個別会見を行なった。会見の前に天皇皇后両陛下にお目にかかり、大変感動をしたと述べた。
リッカルド・ムーティは1975年ウィーン・フィルと来日し日本デビューを飾った。今までにいろいろな団体と150回以上の公演を行なってきた。日本の合唱団とも共演したが特に児童合唱団の素晴らしさ、教育水準の高さには感心したという。
ムーティは2010年から音楽監督を務めているシカゴ交響楽団を率いて、ヴェルディの『レクイエム』や他の演目で2019年1月に来日公演を行なう。3月から4月にかけては「東京・春・音楽祭」でイタリア・オペラ・アカデミー in 東京 が開催され、ムーティが指導する。このアカデミーは2015年からイタリアのラヴェンナで行われているのを東京でも行なうというもの。
そのムーティは指揮をトスカニーニの一番のアシスタントだったアントニーノ・ヴォットーに学ぶ。「指揮者になるということは作曲の勉強を完全にするということ、ピアノの勉強も弦楽器の勉強も必要です。そして作曲のアレンジが行き過ぎる危機感を抱いている。中でもヴェルディ作品は非常に悪い演奏がされてきた。曲のカット、歌手の都合での音程の変更。今日指揮者の腕がショーをするための見世物になっているのではないか。指揮台の上で飛び上がったり無駄な動きをする若い人たちがいる。聴くことよりも見ることを重視する時代になったからではないか。」と語る。
「イタリア・オペラは言葉と音楽の関わりが非常に大切で、言葉と音楽は並行でなく縦の関係が大切なことを分かってもらいたい。日本版オペラアカデミーでは日本の若い音楽家たちに音楽を作る上で大事なことを伝えていきたい。」と語る。
これらの考え方を述べたムーティの著書がある。『リッカルド・ムーティ自伝』と『リッカルド・ムーティ、イタリアの心、イタリアの心ヴェルディを語る』の2冊が音楽之友社から刊行されている。
(2018/12/15)