MARO World vol.27 ”ふたつの四季”|藤堂清
王子ホール ニューイヤー・スペシャルコンサート
MARO World vol.27 ”ふたつの四季”
by Fuminori maro Shinozaki & MARO company
2016年1月12日 王子ホール
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
<演奏>
篠崎史紀(ヴァイオリン)
石丸幹二(朗読)
MARO Company
小林壱成、崎谷直人、白井篤、伝田正秀(ヴァイオリン)
佐々木亮、鈴木康浩(ヴィオラ)
桑田歩、岡本侑也(チェロ)
西山真二(コントラバス)
鈴木優人(チェンバロ、オルガン、ピアノ)
田尾下哲(演出)
<曲目>
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 Op.8-1~4「四季」
※朗読=楽譜に書かれているソネット
———————-(休憩)——————-
ピアソラ(鈴木優人編):ブエノスアイレスの四季
※朗読=ロルカ作/濱田吾愛訳「ベルデ」
—————–(サプライズ・ピース)————-
ハルヴォルセン:ヘンデルの主題によるパッサカリア
——————–(アンコール)—————-
ピアソラ(鈴木優人編):リベルタンゴ
“まろ”の愛称で親しまれている、NHK交響楽団の第1コンサートマスター、篠崎史紀が、王子ホールでほぼ10年にわたって開催してきた「MAROワールド」、今回が27回目となる。テーマは「四季」。1700年代に活躍したヴィヴァルディの協奏曲『和声と創意への試み』op.8から第1曲~第4曲と、20世紀、アルゼンチン・タンゴに大きな変革をもたらしたアストル・ピアソラの『ブエノスアイレスの四季』。後者は鈴木優人により楽器編成を変更した版で演奏された。
ヴィヴァルディの『四季』4曲はすべて三楽章の形、その楽章ごとにソネットが書かれている。この日は各楽章の演奏に先立ち石丸幹二が朗読した。
「よろこびに満ちた春が来た
鳥たちは陽気な歌で迎え
そよ風の愛撫をうけて
泉が甘くせせらいでいる」
こういった言葉を聞いた後だと、音楽を聴きながら「あ、鳥の歌だ」といった反応が容易になる。表題音楽として『四季』を聴くにはよい試みといえる。
独奏ヴァイオリンは”まろ”さんが担当、モダン楽器での演奏であるが、通奏低音を担った鈴木のチェンバロやポジティヴ・オルガンが全体の響きに影響を与え、時代楽器での演奏に通じる雰囲気を作り出していた。
後半のピアソラ、オリジナルのバンドネオンやエレキギターを含む編成とは異なる弦楽合奏による演奏がどのように響くかに注目したが、若手の多い彼らのリズム感がピアソラのタンゴに合っていたこと、オルガンによる多様な色彩感もあり、楽しいもの。
こちらの朗読はフェデリコ・ガルシア・ロルカの詩「ベルデ(緑)」、音楽との関連がそれほど明確ではなく、イメージをふくらませる助けにはあまりならなかった。
“まろ”さんのスピーチや演奏者紹介も、場の雰囲気を盛り上げて、音楽をかしこまって聴くというより、文字通り「楽しむ」ものとしている。このシリーズの人気の理由はこういったところにもあるのだろう。
本サイト中に王子ホールの方が書かれた「MARO World」の舞台裏に関する記事があるので、そちらもお読みいただければと思う。