注目の公演&イベント|2023年10月
♩9/30~10/1 ウィチャヤ・アータマート/For What Theatre『ジャグル&ハイド(演出家を探すなんだかわからない7つのモノたち)』(KYOTO EXPERIMENT 2023)
クンステン・フェスティバル・デザールへの参加(2019、2023)ほか、国際的なツアー公演や創作活動を続けるタイの演出家ウィチャヤ・アータマート。その新作が、KYOTO EXPERIMENT 2023に登場する。アータマートの同芸術祭への参加は、2021年春に引き続き、今回が二度目となる。サウンドデザインに荒木優光、ドラマトゥルクに塚原悠也を迎えた国際共同制作。俳優ではなく小道具が出演する舞台がいったい何を問いかけてくるのか、目が離せない。
9/30~10/1@京都芸術センター 講堂
https://kyoto-ex.jp/shows/2023_wichaya-artamat/
♩9/30~10/3 チェルフィッチュ「宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓」京都公演 (KYOTO EXPERIMENT 2023)
舞台はある国が消滅したあとの世界。文化を残すというミッションを掲げ、宇宙船イン・ビトゥイーン号に、4人の乗組員と1体のアンドロイドが乗り込んだ。銀河を漂う船内では、それぞれの思い出を振り返る対話が“ある言語”で繰り広げられる。
2021年より非日本語母語話者とのワークショップを進めてきた岡田利規主宰の劇団チェルフィッチュ。これまでのワークショップ参加者を対象としたオーディションの末、選ばれた4名と共同で創作したSF演劇の本作が、今年8月の東京初演を経て、今回のKYOTO EXPERIMENT 2023で関西初演を果たす。
9/30~10/3@ロームシアター京都 ノースホール
https://kyoto-ex.jp/shows/2023_chelfitsch/
新シーズンの開幕コンサートとなることの多い10月1日のトッパンホールバースデーコンサートだが、今年は従来と趣向を変えてトッパンホールにゆかりの深い日本人アーティストのみの参加。周防亮介や笹沼樹、クァルテット・インテグラなどの現代日本を代表する若手〜中堅の名手たちが参加する1度限りの豪華な日曜日の午後。先日行われたトッパンホール・アンサンブル(弦楽四重奏)の発展形態的プログラムという点でも実に興味津々だ。
10/1@トッパンホール
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202310011600.html
海外で錚々たる受賞歴、演奏歴を積み上げ、その実力も確たるものと見られながらここ日本ではその音楽に触れることが不当に少ない(動画も少ない)作曲家、今堀拓也の待望の個展が開かれる。叙情と理性の狭間で吹き荒ぶ音の群れに耳を傾けたい。出演は打楽器に會田瑞樹、エレクトロニクスに有馬純寿。
10/1@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=73761&
昨年6月に逝去し、12月に追悼コンサートが開催された渡辺宙明のメモリアル・コンサートがまた開かれる。ある年代のかつての少年たちは必ず聴いて育った宙明サウンドに生オケで浸れるとはなんたる喜びか。音楽監督・指揮を宙明の息子、渡辺俊幸が担当するのも感慨深い。
10/1@東京文化会館
https://chumei-memorial.com/
♩10/1,4,7,9 《修道女アンジェリカ》/《子どもと魔法》
プッチーニの《修道女アンジェリカ》とラヴェルの《子どもと魔法》のダブルビル。新国立劇場2023~2024シーズンのオープニングの演目、どちらも新制作である。「母子の愛のダブルビル」と銘打っているが、この二つの性格の異なる作品がどのように相互に響き合うのか、音楽面、演出面で興味をひかれる。アンジェリカのキアーラ・イゾットン、子どものクロエ・ブリオ、両主役の歌唱も楽しみ。
10/1,4,7,9@新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/suorangelica/
日本オーケストラ連盟主催の【アジア オーケストラ ウィーク 2023】。今回は千葉交響楽団が指揮:山下一史でボロディン/交響詩「中央アジアの草原にて」、團伊玖磨/管弦楽組曲「シルクロード」、ムソルグスキー/「展覧会の絵」を。イスタンブール国立交響楽団が指揮:ギュレル・アイカル、ヴァイオリン:チハト・アスキンで芥川也寸志/弦楽のための三楽章、ウルヴィ・ジェマル・エルキン/ヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキー/交響曲第4番を、韓国チェンバー・オーケストラが音楽監督:キム・ミン、ヴァイオリン:ユン・ソヨンでシューベルト/序曲 ハ短調 D、ピアソラ/ブエノスアイレスの四季、ユン・イサン/弦楽のためのタピ、ドヴォルザーク/弦楽セレナーデを披露。各国カラーを堪能したい。とりわけイスタンブールに注目大だ!
10/5~7@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.orchestra.or.jp/aow2023/
♩10/7~8 バック・トゥ・バック・シアター『影の獲物になる狩人』(KYOTO EXPERIMENT 2023)
知的障害のある俳優を中心に、30年以上にわたって活動を続けてきたオーストラリアの劇団バック・トゥ・バック・シアター。応用演劇の枠に収まることのない、既存の視点を鋭くえぐるような鋭くえぐるような視点を投じた異化的なドラマが特徴である。日本には『ガネーシャVS.第三帝国』をフェスティバル/トーキョー’13で初上陸。今回が関西初紹介&KYOTO EXPERIMENT初参加となる。障害のある活動家たちの公開集会を扱った本作は2019年初演で、ウィーン芸術週間やクンステン・フェスティバル・デザールをはじめ、世界各地の芸術祭に招聘されている。
10/7~8@ロームシアター京都 サウスホール
https://kyoto-ex.jp/shows/2023_back-to-back-theatre/
2007年より、京都出身のロックバンドくるりの主催で毎年行われてきた音楽フェスティバル。今年は初となる2日連続開催。今年は1日目には、Saucy Dog、坂本真綾、sumika、角野隼斗、Tigran Hamasyan“StandArt”、秦基博が出演する(くるりは両日出演)。なかでも、ピアニストの角野隼斗と、アルメニア出身のジャズ・ピアニストのティグラン・ハマシアン率いるトリオの参戦が注目される。
10/8~9@梅小路公園
https://kyotoonpaku.net/2023/
♩10/11 鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3 ヘンデル 歌劇《ジュリオ・チェーザレ》
鈴木優人が中心となって制作、指揮を行ってきているBCJオペラシリーズ、今回はヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》を取り上げる。このオペラ、新国立劇場が昨年10月に上演しているが、その時の東京フィルハーモニー交響楽団に対し、今回のオーケストラがバッハ・コレギウム・ジャパンということで古楽の響きが楽しめるだろう。ティム・ミードのチェーザレ、森麻季のクレオパトラ、マリアンネ・ベアーテ・キーラントのコーネリアなど粒ぞろいのキャストも楽しみ。演技する空間の狭いコンサート・オペラ形式だが、制約が大きい中でも佐藤美晴の演出は楽しませてくれるだろう。名歌手マイケル・チャンスの息子アレクサンダー・チャンスの歌が聴けるのにも期待大。
10/11@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2036/
♩10/12 九州交響楽団第416回定期演奏会
今回ヴィーンにゆかりの深い作曲家の三曲が取り上げられるが、これらはいずれも天への羽ばたきを響かせる。日に日に息苦しさを増す地上に生きる者たちの切なる願いを込めながら、打ち続く災厄の犠牲になった者たちへの魂の平安のために鳴り響くのだろうか。ヴィーンでヴァルター・バリリらの薫陶を受けた後、アメリカでの研鑽を経てドイツの歌劇場などで活躍するキンボー・イシイによる作品の背景を踏まえた、同時に清新なヨハン・シュトラウス、ベルク、マーラーの解釈を聴きたい。現在目覚ましい活躍を続けている青木尚佳が、ベルクのヴァイオリン協奏曲の独奏を務めるのも期待を高める。砂川涼子がマーラーの交響曲で「天上の生活」を歌うのも楽しみなところ。
10/12@アクロス福岡シンフォニーホール
http://kyukyo.or.jp/cms/14541
♩10/13,14,15 東京二期会オペラ劇場 《ドン・カルロ》
レオナルド・シーニの指揮、ロッテ・デ・ベアの演出による新制作、シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演。シーニは2021年の二期会《ファルスタッフ》で高い評価を受けた。このオペラの演奏実績もあり、大いに期待される。ロッテ・デ・ベアは2022年9月からウィーン・フォルクスオーパーの芸術監督。ペーター・コンヴィチュニーのもとで研鑽を積んだ彼女の演出、楽しみにしたい。なお、東京公演の前に、横須賀、札幌で3公演が行われる。
10/13~15@東京文化会館大ホール
http://www.nikikai.net/lineup/don_carlo2023/index.html
2012年からもう10年以上続けられている安野太郎の「ゾンビ音楽」が、数寄者の集う愛知県芸術劇場小ホールに登場である。「ゾンビ」と言うと何か怖いものを想像されるかもしれないが、この動画を見てもらえばわかる通り、一見ひどくチープだが、人間と音楽と技術について深い考察を誘うものである。何はともあれ実体験すべき怪物音楽機械を一目見ねば。
10/14,昼の部14:00開演,夜の部18:30開演@愛知県芸術劇場小ホール
10/15,13時開演@愛知県芸術劇場小ホール
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000985.html
常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレが指揮するコンサート、ハンス・アイスラーの《ドイツ交響曲 作品50》の日本初演が注目。アイスラーが1930年代のアメリカ亡命時から書き始め、10年以上かけて完成させた大作。4人の独唱者、2人のナレーター、合唱、大規模なオーケストラという構成。ファシズム批判が主題で、ナチへの怒り、抑圧されたものの悲しみを歌いあげる。録音はいくつか出ているが、世界的にみても実演は多くない。貴重な機会といえよう。
10/17@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2022/12/632-1.php
♩10/18、20、21、22、23、24、26 クラウス・マケラ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
27歳にして既に天才の名をほしいままにしているクラウス・マケラが2020年より首席指揮者を務めるオスロ・フィルと待望の来日。辻井伸行との共演や『英雄の生涯』ももちろん興味深いが、既にレコーディングも行い驚異的な名演奏を聴かせたシベリウスの交響曲にとどめを刺す。これはスペシャルなものとなるに違いない。
10/18@【東京】東京芸術劇場コンサートホール
10/20@【静岡】アクトシティ浜松 大ホール
10/21@【名古屋】愛知県芸術劇場コンサートホール
10/22@【大阪】フェスティバルホール
10/23@【東京】サントリーホール
10/24@【東京】サントリーホール
10/26@【熊本】熊本県立劇場コンサートホール
https://avex.jp/classics/opo2023/
♩10/19 Hakuju Hall 20周年記念カウンターテナーの饗宴
Hakuju Hall20周年記念の大型企画。日本のカウンターテナーの草分けとも言える米良、中堅世代の代表格の藤木、若手のトップランナーの1人村松による夢の一夜。村松は昨年フィギュアスケートの宇野選手がフリープログラムで使用した曲を歌うことでも注目される。
10/19@Hakuju Hall
https://hakujuhall.jp/concerts/event/3612
♩10/22,24 五島記念文化賞 オペラ新人賞研修成果発表 大西宇宙 バリトン・リサイタル
大西宇宙が、五島記念文化賞オペラ新人賞研修成果発表の一環として行うリサイタル、ピアノに彼のジュリアード音楽院時代の恩師であるブライアン・ジーガーを招聘。イベールの《ドン・キショットの4つの歌》、ヴォーン・ウィリアムズの《旅の歌》 (全9曲)など、旅や放浪にちなむ歌曲にオペラ・アリアを交えた多彩なプログラムは、大西の今を、そしてこれからを見せてくれるだろう。個人的には、《ドン・カルロス》(フランス語版)のアリアが聴けるのがうれしい。
10/22@滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 小ホール
10/24@東京文化会館小ホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2028/
♩10/25 ジャン・ロンドー〜ゴルトベルク変奏曲〜
♩10/28 ジャン・ロンドー チェンバロ・リサイタル
「スコット・ロスの再来」なる麗句には反発したくなる面もあるにせよ、あながち外れてもいまい。あのパッショネイトさと尽きせぬインスピレーションはまさにジャン・ロンドーの演奏にも当てはまるからだ。3年ぶりの今回の来日ツアーでは2つのプログラムが用意されたが、ここに挙げた2つのリサイタルでは共に『ゴルトベルク変奏曲』が披露される。
10/25@王子ホール
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2023/20231025.html
10/28@三鷹市芸術文化センター 風のホール
https://mitaka-sportsandculture.or.jp/geibun/wind/event/20231028/
♩10/26 パーセル・プロジェクト2023 チャールズII世のためのオード
パーセル・プロジェクトは、カウンターテナーの青木洋也が中核となりパーセルの声楽作品を歌うために集まったグループにより、ほぼ年一回行われてきている。年ごとにテーマを設け、パーセルの幅広い活動を紹介してきている。今年のチャールズII世のためのオード、4曲も研究した成果を聴かせてくれるだろう。
10/26@東京オペラシティ リサイタルホール
https://www.officearches.com/concert/2023-10-26/
♩10/28 C³vol.1 古典と現代音楽の《関(かん)》
びわ湖を巡る形で行われている「びわ湖・アーティスツ・みんぐる」の一環として、滋賀の街道沿いで開催される音楽プロジェクト「C³(シーキューブ)」、まずは亀井庸週州・松岡麻衣子、安田貴裕・竹本聖子のルリトラノオ弦楽四重奏団が、酒井健治世界初演を目玉としてケージ、ラヴェル、リゲティ、ヴィトマン作品に挑戦する。一癖も二癖もある面々と作品によってびわ湖にどのような風が吹くのか興味津々だ。なお、9月24日に旧東海道沿いでプレコンサートが開催される。
10/28@フィガロホール
https://biwako-arts.or.jp/rd/about/32971.html
(プレコンサート)
9/24、11:30~12:15@古民家カフェSORA
同上、14:00~16:00@フィガロホール
同上、17:30~18:15@和田神社
https://biwako-mingle.art/event/music/235/
押しも押されもせぬ巨匠、サヴァールの来日。ビウエラ&バロックギターのシャビエル・ディアス=ラトレ、スペイン式バロックハープのアンドルー・ローレンス=キング、打楽器のダビド・マヨラルとともにルネサンス~バロックの世界を縦横無尽に駆け抜ける。
10/28@神奈川県立音楽堂
https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/savall2023
♩10/28 群馬交響楽団 第592回定期演奏会
♩10/29 群馬交響楽団 東京定期演奏会
2024年末を以て指揮活動を引退すると公言している井上道義は周知の通りショスタコーヴィチの交響曲に並々ならぬ情熱を注いでおり、その演奏に内包される情念の深さはまさに唯一無二のもので他の指揮者には真似が出来ぬ。その井上と群馬交響楽団によるこの度の地元・高崎での定期演奏会及び東京定期演奏会では交響曲第4番が披露される。「道義×群響、最後の共演!」なる文言がチラシに踊っているが、その意味においても聴き逃がせぬコンサートとしか言えまい。
10/28@高崎芸術劇場 大劇場
http://www.gunkyo.com/concert-list/第592回定期演奏会/
10/29@すみだトリフォニーホール
http://www.gunkyo.com/concert-list/東京公演(すみだトリフォニーホール)-2/
昨年惜しくも逝去された一柳慧の追悼コンサートが催される。室内楽集の選曲で一柳、池辺晋一郎、野平一郎らの作品が演奏されるのは至極当然と見られるが、意外なのは一柳が若かりし頃長く留まったアメリカではなく、北欧フィンランドの作曲家が選ばれていることである。亡き後に知られざる顔を見せてくれるのか、期待大である。
10/30@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://www.tokyo-concerts.co.jp/concerts/50745/
♩10/30 東京都交響楽団 第985回定期演奏会Aシリーズ
3度目の正直。コロナ禍により過去2回の都響への客演予定が潰えたヴァンスカ、ようやくの登壇(さすがに今回は実現するだろう)。プログラムはシベリウスの交響曲第5番〜第7番。これ以上付け加える紹介文があろうか。必聴。
10/30@東京文化会館
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3669