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Back Stage|「やまがたオペラフェスティバル」~やまぎん県民ホールの今|山田和輝

「やまがたオペラフェスティバル」~やまぎん県民ホールの今

Text by 山田和輝(Kazuki Yamada)

2020年3月28日、山形の新たな県立ホールとして翌29日にグランドオープンを控えていた、やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)では、小曽根真×山形交響楽団による開館記念コンサートのリハーサルを行っていました。そこへ県の担当課から届いた衝撃的な知らせは、今でも忘れることができません。それは、翌日に控えたオープンを延期するという決定で、コロナウイルスの全国的な感染状況を受けてのことでした。

やまぎん県民ホール大ホール

東北屈指の収容人数を誇る2,001席の大ホールを有する当館は、2019年に閉館した旧県民会館に代わる施設として、山形駅徒歩1分という好立地に建設され、これまで県内では鑑賞することが難しかった大規模な舞台公演を実施できるホールとして期待が寄せられていました。複数のオープニング事業を予定していたため、チケットを手に開催を心待ちにされていた方も大勢いらっしゃったことと思います。そのような中での開館延期は、新たな船出を迎えるホールにとってあまりに大き過ぎる打撃となりましたが、一方で、当時、各地のホールや実演家団体がそうであったように、私たちもいま自分たちに何ができるのかを考え、前を向きながら試行錯誤を繰り返していたように記憶しています。

山形交響楽団(C)Kazuhiko Suzuki

予定から2か月遅れて2020年5月に開館した後は、徹底した感染対策のもとに多様な事業を展開できるようになりましたが、その中でも開館年から毎年実施しているのがオペラ公演です。当館がオペラをとり上げる理由は、上演が可能な設備が整ったホールであるという点はもちろんのこと、地域に密着した活動を長年続け、地元から愛されている山形交響楽団さんと共に館を運営しているという点があげられます。これら2つの強みを生かした公演がオペラというわけです。過去に開催した『トゥーランドット』と『魔笛』はいずれも完売となったことから、ここ山形における本格的なオペラ公演に対する期待を感じています。

●2020年10月31日 グランドオペラ共同制作『トゥーランドット』

●2021年10月9日 二期会オペラ モーツァルト『魔笛』

やまがたオペラフェスティバル

そして今年度は規模を拡大し、12月から翌年2月にかけて上演する3つのオペラ公演を核とした「やまがたオペラフェスティバル」を開催します。前述のような事情で、山形ではオペラの鑑賞経験があるという方は少なく、敷居が高いと感じる方が多いのも事実です。そこで本公演への導入として、多彩な関連イベントを企画しました。どこかで耳にしたことのあるようなオペラの序曲やアリアをガラコンサート形式でお届けする公演や、オペラの知識や鑑賞経験がなくても気軽に楽しめる講座、さらには敷地内にあるレストランとコラボレーションしたオペラ作曲家にまつわるメニューの提供等、様々な角度からオペラに触れていただくことができます。

●やまがたオペラフェスティバル

フェスティバルの開幕を飾る「オープニングスペシャルコンサート」が11月8日に終了しましたので、アンケートに寄せられたお客様の声を一部ご紹介します。

「オペラを初めて聴きましたが、こんなに素晴らしいとは思っていませんでした(50代)」
「初めて生でオペラの曲を聴いて、こんなにも引き込まれるものなんだと感じました(10代)」
「初めてのオペラ体験がこのコンサートで良かったです。楽しかったぁ(30代)」
「小学生の子どもと聴かせていただきました。オペラやオーケストラのある街・山形に住めて幸せです(40代)」
「ヨーロッパや東京に行かなくてもオペラが楽しめる山形は素晴らしい(50代)」
「山形でもオペラが聴けるようになり喜んでいます(70代)」

食の宝庫でもある山形

最後に、今回のオペラ公演でも予定している地元の旅行代理店との取り組みをご紹介します。突然ですが、皆さんは山形と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。さくらんぼしか浮かばないという方に強くお伝えしたいのは、実は観光資源あふれる県であるということ。山形は県内全35市町村すべてに温泉が湧き、どこへ行っても温泉を楽しむことができる、まさに温泉大国です。その他、美味しい水でつくられるお米や日本酒、ワイン、そして、さくらんぼやラフランス、だだちゃ豆等の農作物、さらに、山形牛や米沢牛のブランド牛等、食の宝庫でもあります。

魅力的な観光コンテンツの数々

また、松尾芭蕉の俳句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」で知られる山寺や、パワースポットとしても人気の高い出羽三山神社、冬には蔵王の樹氷等、魅力的なコンテンツは数え切れないほどです。当館では以前より、県内外から公演に足を運んでくださる方に、山形の観光もあわせて楽しんでいただきたいという想いから、地元山形、そしてお隣の仙台にある旅行代理店と連携し、公演鑑賞付きの日帰りバスツアーや宿泊プランを提供しています。公演をきっかけに県内外から多くの方にお越しいただき、山形の魅力を知っていただくことで、街全体を元気にできたら、私たちはそう願っています。皆様のお越しをお待ちしています。

山田和輝(やまぎん県民ホール 事業マネージャー)

(2022/12/15)