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森野美咲ソプラノ・リサイタル|藤堂清 

森野美咲ソプラノ・リサイタル 
Misaki Morino Soprano Recital  

2023年7月30日 東京文化会館 小ホール 
2023/7/30 Tokyo Bunka Kaikan Recital Hall 
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh) 
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi) 

<出演者>       → foreign language
森野美咲(ソプラノ)
木口雄人(ピアノ)

<プログラム>
J.ブラームス:若き日の歌I “私の恋は緑”Op.63 No.5
F. リスト:“それは何かきっと素晴らしいこと”S.314
J.ブラームス:“セレナーデ”Op.106 No.1
F.シューベルト:クラウディーネのアリエッタ
   “恋はあらゆる道の上に”D239
F.シューベルト:“喜びの中の悲しみ”D260
F.リスト:“喜びと悲しみに満ち”S.280/2
“私の歌は毒入り”S.289
F.シューベルト:“泉のほとりの少年”D300
F. リスト:“ローレライ”S.273/2
——————-(休憩)——————-
G. リゲティ:(E. ハワース編) 歌劇《マカーブルの秘密》から
   “ゲポポのアリア”
G. ガーシュウィン:“私の愛する人”ピアノソロ
K. ワイル:ミュージカル《ニッカボッカ・ホリデー》 から
   “どこにもいないあなた”
G. ガーシュウィン:“シュトラウスに寄せて”
J.シュトラウス:喜歌劇《インディゴと40人の盗賊》から“ウィーンではこう歌う!”
—————-(アンコール)—————-
R.シューマン:《子供の情景》より“トロイメライ”Op.15-7 ピアノソロ
森田花央里:《はじまり》より“祈りのうた”(詩:森野美咲)
C.アイヴス/木口雄人、森野美咲 編:“メモリーズ A”
   ~DIVA達へのオマージュ 2023 ~

 

前半はドイツ歌曲。
歌曲のリサイタルでは作曲家ごとにまとめて演奏されることが多いが、森野は、ブラームス、リスト、ブラームス、あるいは、シューベルト、リスト、シューベルトというように、異なる作曲家の作品を並べたプログラミング。作品の表情が大きく変化することにより、聴き手に一曲ごとに集中を求める効果はあった。リストの“それは何かきっと素晴らしいこと”、“私の歌は毒入り”といった曲が、シューベルト、ブラームス等のドイツ歌曲の系譜とは少し異なる空気を湛えていて、興味深く聴いた。前半の最後におかれた“ローレライ”はよく知られたハインリヒ・ハイネの詩による歌曲。森野はこの曲のダイナミックな側面を見事に表現した。
彼女は、安定したピッチ、美しいドイツ語で歌っていく。それだけでも評価できるが、それぞれの曲の表情を的確に歌い出しており、歌曲歌いとしての今後に期待を持たせてくれた。

休憩後の後半、二人はそれぞれ別の客席入口から入ってくる。森野は目にもあざやかな黄緑色のポップな衣装、木口もカジュアルな服装で新聞を持って。リゲティの歌劇《マカーブルの秘密》から“ゲポポのアリア”を歌うための変装。リサイタルの中で、ずいぶん思い切ったことをやるものだ。
このアリア、いろいろな言葉、暗号がちりばめられているが意味やつながりは不明。だが、高音域でのコロガシから絶叫に近い声など技巧の限りをつくすもの。最後はバタンと倒れて、舞台は暗転、といった具合。ともあれ彼女の歌唱能力を最大限に示すものであった。プログラムの中で一番の聴かせどころ。
ピアニストは速やかに着替えてきて、ピアノ・ソロで彼女の着替えの時間を稼ぎ、ワイルの“どこにもいないあなた”へ。「だけどそれはあなたじゃなかった。あなたはどこにもいなかった。」と歌う、そのしっとりした味わいは、その前のリゲティとは対照的。
ガーシュイン兄弟の合作“シュトラウスに寄せて”でウィーンへのあこがれを歌った後、J.シュトラウスの“ウィーンではこう歌う!”で締めるというなかなかしゃれたプログラム。

アンコールは森野自身が作詞した曲集、森田花央里の《はじまり》より“祈りのうた”をしっとりと。最後は彼女のアンコールの定番、アイヴスの“メモリーズ A”に続けて“~DIVA達へのオマージュ 2023 ~”。《ラ・ボエーム》からムゼッタのワルツ、《ラ・トラヴィアタ》から、などソプラノのアリアの部分を歌い継いでいく。会場は大きく盛り上がって終演。

ずいぶん欲張ったプログラムであったと思うが、森野の幅広い能力を見事に示していたと思う。
最後になったが、木口のピアノの的確なサポート、多彩な表情もすばらしかった。

関連評: B→C[242]森野美咲ソプラノリサイタル|藤堂清

(2023/8/15)

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<player>
Misaki Morino (Soprano)
Yuto Kiguchi (Piano)

<Program>
J. Brahms: Junge Lieder I
   „Meine Liebe ist grün” Op.63 No.5 (F. Schumann)
F. Liszt: „Es mus ein Wunderbares sein” S.314 (O.v. Redwitz)
J. Brahms: „Ständchen” Op.106 No.1 (F. Kugler)
F. Schubert: Ariette der Claudine
   „Liebe schwärmt auf allen Wegen.” D239 (Goethe)
F. Schubert: „Wonne der Wehmut” D260 (Goethe)
F. Liszt: „Freudvoll und Leidvoll” S.280/2 (Goethe)
   „Vergiftet sind meine Lieder” S289 (Heine)
F. Schubert: „Der Jüngling an der Quelle” D300 (J.G.v. Salis)
F. Liszt: „Die Loreley” S.273/2 (Heine)
—————-(Intermission)—————-
G. Ligeti: Opera [Le Grand Macabre]
   „Aria of Gepopo” (G. Skelton)
G. Gershwin: Piano Solo „The Man I Love”
K. Weill: Musical [Knickerbocker Holiday] „It Never was you” (M.Anderson)
G. Gershwin: „By Strauss” (I. Gershwin)
J. Strauss: Operetta [Indigo und die vierzig Räuber] „Ja so singt man nur in Wien!” (R. Genée)
——————-(Encore)——————-
R. Schumann: Piano Solo „Träumerei”
K. Morita: Hajimari „Inori no uta” (Misaki Morino)
C.Ives (arr. Kiguchi&Morino): „Memories A” ~Hommage à DIVA 2023~