森谷真理&大西宇宙 Viva Verdi! III 後期|藤堂清
森谷真理(ソプラノ)&大西宇宙(バリトン)
Viva Verdi! III 後期
Mari Moriya & Takaoki Onishi Viva Verdi III
2023年6月9日 トッパンホール
2023/6/9 Toppan Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 大窪道治/写真提供:トッパンホール
<演奏> → foreign language
森谷真理(ソプラノ) (1)
大西宇宙(バリトン) (2)
河原忠之(ピアノ)
<プログラム>
ヴェルディ:《運命の力》より
〈私はペレーダ〉(2)
〈神よ、平和を与えたまえ〉(1)
〈この中に私の運命がある〉(2)
ヴェルディ:《アイーダ》より
〈おお、わが故郷〉(1)
〈ああ、お父様!〉(1)(2)
———————休憩———————
ヴェルディ:《オテッロ》より
〈イアーゴのクレド ―無慈悲な神の命ずるままに〉(2)
〈泣きぬれて野のはてにひとり(柳の歌)~アヴェ・マリア〉(1)
ヴェルディ:《ファルスタッフ》より
〈これは夢か?まことか?〉(2)
ヴェルディ:《ドン・カルロ》より
〈わが最後の日が来た〉(2)
〈世のむなしさを知る神〉(1)
——————アンコール——————
ヴェルディ:《オテッロ》より
〈さあ乾杯だ〉(2)
シャルパンティエ《ルイーズ》より
〈その日から〉(1)
2022年5月に行われた「Viva Verdi! II 中期」に続く、このシリーズの最終回。前回と同じ二人による演奏であるが、後期の5演目の中にはソプラノとバリトンの二重唱は少なく、アリアを歌い継ぐ形となった。
まずは《運命の力》からの3曲。
河原の弾く序曲の冒頭から続けて歌われたドン・カルロのバッラータ〈私はペレーダ〉、大西の弾むリズムが心地よい。
森谷の歌い出しはレオノーラの歌う大曲〈神よ、平和を与えたまえ〉。前半の今の境遇を嘆き死をのぞむ部分の伸びやかな歌い口、後半、侵入者に気付き’Maledizione!’と叫ぶ、対比の見事さ。
続いてカルロのアリア〈この中に私の運命がある〉。大けがを負った友人から預かった封書を開けるかどうか逡巡する気持ち、レオノーラの肖像画を見つけ、彼が追っていたドン・アルヴァロと知り、父の仇を討てると喜びを爆発させる、その歌い分けがすばらしい。
《アイーダ》からは第3幕のアイーダとアモナズロの場面、アイーダのアリアから続けて歌われる。森谷の祖国をおもう歌のしっとりとした味わい。続く父娘の対話、ラダメスからエジプト軍の情報を聞きだせと迫るアモナズロ、しぶるアイーダに激昂する彼の迫力、許しを請う彼女を追い詰める。この日唯一の二重唱であったが、一気に会場全体がヒートアップした。
後半は《オテッロ》から始まる。大西の〈イアーゴのクレド ―無慈悲な神の命ずるままに〉と森谷のデズデーモナの〈泣きぬれて野のはてにひとり(柳の歌)~アヴェ・マリア〉。大西のニヒリスティックな信条吐露、声の色を変えながらまた強いアクセントをまじえながら表情を作っていく。河原のピアノのダイナミクスもあり、オペラの舞台を聴いているような印象。森谷の〈柳の歌〉から〈アヴェ・マリア〉は長大な聴かせどころ。決して大きな声を張り上げるわけではなく、弱声のニュアンスを大切にした歌。
ヴェルディ最後のオペラ《ファルスタッフ》からは大西の歌うフォードのアリア。今の彼にピッタリの歌と思える。低音から高音までむらなく響く声、ダイナミクスの幅、そしてリズムの変化。
プログラムの最後は《ドン・カルロ》から。ポーザのアリアの前半と後半、撃たれる前後での歌い分けが見事。またエリザベッタの大アリアをそのスケールにふさわしく歌い上げた森谷もすばらしい。
アンコールはそれぞれ1曲。大西の歌うイヤーゴの〈乾杯の歌〉。カッシオを酔わせてしまおうとする彼のたくらみが分かる歌。森谷はヴェルディから離れて比較的軽めの歌。
二人の熱気あふれる演奏で、会場は大盛り上がり。ヴェルディはこれで終わりだが、別の形で続けていってもらいたいと思う。
(2023/7/15)
———————————————————————–
<Performers>
Mari Moriya, Sop (1)
Takaoki Onishi, Bar (2)
Tadayuki Kawahara, pf
<Program>
Verdi:”La forza del destino”
‘Son Pereda, son ricco d’onore’ (2)
‘Pace, pace mio Dio’ (1)
‘Urna fatale del mio destino’ (2)
Verdi:”Aida”
‘O patria mia’ (1)
‘Ciel mio padre!’ (1)(2)
————Intermission————
Verdi:”Otello”
‘Credo in un Dio crudel che m’ha creato’ (2)
‘Piangea cantando ~ Ave Maria’ (1)
Verdi:”Falstaff”
‘È sogno? o realtà?’ (2)
Verdi:”Don Carlo”
‘Per me giunto è il di supremo’ (2)
‘Tu che le vanita conoscesti del mondo’ (1)
—————Encore—————
Verdi:”Otello”
‘Inaffia l’ugola! Trinca, tracanna!’ (2)
Charpentier:”Louise”
‘Depuis le jour’ (1)