ルーシー・ホルシュ&トーマス・ダンフォード デュオ・コンサート|藤堂清
ルーシー・ホルシュ(リコーダー)&トーマス・ダンフォード(リュート)
デュオ・コンサート — 対話 —
Lucie Horsch – Thomas Dunford, Duo Concert — Dialogue —
2022年9月8日 浜離宮朝日ホール
2022/9/8 Hamarikyu-Asahi Hall
Reviewed by 藤堂清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by Akira ANZAI/写真提供:アマローネアーツ
〈演奏〉 →foreign language
ルーシー・ホルシュ(リコーダー)
トーマス・ダンフォード(リュート)
〈プログラム〉
ファン・エイク:「笛の楽園」よりプレリュード(リコーダー ソロ)
カステッロ:ソナタ第2番
J.S.バッハ(ホルシュ編):組曲 ニ短調 BWV997
Prelude – Sarabande – Gigue – Double
ダウランド :「夢」(リュート ソロ)
「流れよわが涙」
テレマン:ソナタハ長調(TWV41:C5)
Adagio/Allegro – Larghetto – Vivace
ダルツァ:スペイン風カラータ(リュート ソロ)
ヴィヴァルディ:フラウティーノ協奏曲 RV 443より第2,3楽章
—————(Intermission)—————
シェドヴィル/ヴィヴァルディ:ソナタ 忠実な羊飼い第6番 ト短調
Vivace – Fuga da Capella – Largo – Allegro ma non presto
F.クープラン:恋のうぐいす
ドビュッシー:シランクス(リコーダーソロ)
フィリドール:ソナタ ニ短調
Lentement – Fugue – Courante – Les Notes égales et detaches – Fugue
マレ:人間の声(リュートソロ)
スペインのフォリア
——————(Encore)——————
F.クープラン:恋のうぐいす~ブラックバード(ビートルズ)
フランチェスカ・カッチーニ:愛がどんなものか知りたい者がいれば〜イエスタデイ(ビートルズ)
リコーダーのルーシー・ホルシュ23歳、リュートのトーマス・ダンフォード34歳、二人の若手によるコンサート。
ホルシュはアムステルダム出身、5歳でリコーダーを始め、12歳からスヴェーリンク音楽院で学ぶ。17歳でデッカ・クラシックと専属契約を結ぶなど“天才少女”として注目を集めてきた。ダンフォードはパリ出身、9歳でリュートを始め、パリ国立音楽院で学ぶ。すでにソリストとして世界各国で活躍するほか、レザール・フロリサンなど多くの古楽団体と共演している。ともにそれぞれの楽器の奏者としてトップクラスの技量の持ち主。
曲目はバロックが中心だが、それだけではなく、ドビュッシーのシランクスをリコーダーで演奏。また、J.S.バッハの組曲のリコーダー編曲版を取り上げたりもしている。アンコールでは、バロックの曲からごく自然にビートルズに流れ込み、リュートの伴奏で二人の歌声をも聴かせた。
前半は数曲ずつ続けて演奏された。それぞれリコーダー、リュートのソロから始まり、ごく自然に二重奏へと移っていく。曲目の構成も初期バロックと後期バロックという組み合わせ。
まず、ファン・エイクの〈笛の楽園〉でホルシュがさわやかな音を聴かせる。続いて調弦するようなダンフォードのつま弾きに導かれ、カステッロへと入っていく。このブロック最後のJ.S.バッハの〈組曲 ニ短調 BWV997〉からのプレリュードと舞曲は、リュート用の作品をホルシュが編曲し、演奏しているもの。彼女のテクニックを存分に示す。ダンフォードの温かみのあるリュートがそれをしっかりと支える。
次のブロックはダウランドの哀愁に満ちたリュートソロから始まる。続いて〈流れよわが涙〉をリコーダーとともに演奏。リコーダーやリュートの弱音が美しい。テレマンでの明るい曲想と細かなパッセージの表情が見事。
前半の最後では、ダルツァの〈スペイン風カラータ〉からごく自然にヴィヴァルディへと続いていく。
このように異なる時代の音楽を結び付けて演奏する方法、一般的なクラシックのコンサートで行われることはあまりないだろう。それが、もともとそのように書かれていたかのように聞こえることにおどろかされた。
後半は一曲ごとに拍手を受けた。
ドビュッシーの〈シランクス〉の半音階をリコーダーで吹いていく技術、物憂げな表情、ホルシュがこの楽器と一体となっていることが感じられる。
アンコールは二つ。
F.クープランの〈恋のうぐいす〉をリコーダーで、そこからビートルズの〈ブラックバード〉へと移っていき、二重唱で聴かせた。ついで、フランチェスカ・カッチーニの〈愛がどんなものか知りたい者がいれば〉をホルシュの歌で、そのまま〈イエスタデイ〉の重唱へと。二人ともしっかりした歌声であった。
彼らにとっては、音楽の区分とか時代といったものはそれだけでは意味をもたないのだろう。二人が互いに音楽的なやりとりをしながら、その場で曲が作られているかのように即興性に満ちた演奏を繰り広げる、そのための素材という位置づけなのかもしれない。
コンサートのサブタイトル「対話」にふさわしく、演奏者二人の吹き弾く音が絡み合っていく、そのかれらの音の弾みや躍動感にウキウキした気持ちになった。
(2022/10/15)
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<Players>
Lucie Horsch (Recorder)
Thomas Dunford (Lute)
<Program>
J. van Eyck : Preludium (recorder solo)
Dario Castello : Sonata seconda
Johann Sebastian Bach (arr. L. Horsch) : Suite in d minor, BWV 997
Prelude – Sarabande – Gigue – Double
John Dowland : A Dream (lute solo)
John Dowland : Flow, my tears
G. P. Telemann : Sonata in C major TWV 41:C5
Adagio/Allegro – Larghetto – Vivace
J. A. Dalza : Calata a la Spagnola (lute solo)
A. Vivaldi : Flautino Concerto RV 443 Largo – Allegro molto
—————–(Intermission)—————–
N. Chédeville / A.Vivaldi : Sonata op.13 no.6 ‟Il Pastor Fido” in g minor
Vivace – Fuga da Capella – Largo – Allegro ma non presto
François Couperin : Le Rossignol en Amour
Claude Debussy : Syrinx (recorder solo)
Anne Danican Philidor : Sonata in d minor
Lentement – Fugue – Courante – Les Notes égales et detaches – Fugue
Marin Marais : Les voix humaines (lute solo)
Marin Marais : Couplets de Folies (arr. Lucie Horsch & Thomas Dunford)
——————–(Encore)——————–
François Couperin : Le Rossignol en Amour ~~ Blackbird (Beatles)
Francesca Caccini : Chi desia di saper ~~ Yesterday (Beatles)