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新国立劇場 ロッシーニ:《チェネレントラ》|藤堂清 

ジョアキーノ・ロッシーニ:《チェネレントラ》
(日本語・英語字幕付き原語上演)
Gioachino ROSSINI : La Cenerentola
(Opera in 2 Acts in Original Language with Japanese & English supertitles) 

2021年10月13日 新国立劇場
2021/10/13 New National Theatre Tokyo
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi) 

<スタッフ>        →foreign language
  指 揮:城谷正博
  演 出:粟國 淳
  美術・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
  照 明:大島祐夫
  振 付:上田 遙
  舞台監督:髙橋尚史
  芸術監督:大野和士

<キャスト>
  ドン・ラミーロ:ルネ・バルベラ
  ダンディーニ:上江隼人
  ドン・マニフィコ:アレッサンドロ・コルベッリ
  アンジェリーナ:脇園 彩
  アリドーロ:ガブリエーレ・サゴーナ
  クロリンダ:高橋薫子
  ティーズベ:齊藤純子

  チェンバロ:根本卓也
  合唱指揮:三澤洋史
  合 唱:新国立劇場合唱団
  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

歌唱面のレベルが高く、おおいに楽しめる公演であった。

ロッシーニの歌い手として世界的にも評価の高い歌手が配役の中心となったのだから、当然といえば当然ではあるが。アンジェリーナの脇園彩、ドン・ラミーロのルネ・バルベラ、この二人の若手の声の輝き。ドン・マニフィコの大ベテラン、アレッサンドロ・コルベッリの舞台に立っているだけで「おかしみ」が感じ取れる存在感。ダンディーニの上江隼人もブッフォ的な役をよく歌い、演じた。
脇園は2年前には、ここ新国立劇場で《セヴィリアの理髪師》にロジーナで出演、ロッシーニ・メゾソプラノとしての適性を聴かせてくれた。この日の歌唱からはさらなる成長が聞き取れた。低音域から高音域までむらがなく、弱声から強声まで均質な響きが変化することなく、その上イタリア語が実に明瞭。最後の場面、シェーナ<苦しみと涙のうちに生まれ~もう火のそばで寂しく>では、アンジェリーナを聴く喜びを味わうことができた。
バルベラも新国立劇場の《セヴィリアの理髪師》でアルマヴィーヴァを歌っていた。今回もアリア<そう、誓って彼女を見つけ出す>でも、ハイCを含む高音域の安定感はすばらしく、盛大な拍手(歓声は禁止!)に応えアリアの後半はビスされた。
歌手はおしなべてロッシーニのオペラにふさわしいフォルムを持っていたのだが、オーケストラに関しては少し不満が残った。破綻があるわけではないのだが、軽やかさに欠けるところがあった。弱音で弾いてほしいところが十分に音量が抑えられない、テンポやリズムが自在に動いてほしいと思ってもガッチリと固まっている。
ロッシーニの時代にレチタティーヴォでチェンバロが使われていたわけはない。それはともかく、根本がいろいろ即興的に加えた曲や表情、楽しいものであった。

新国立劇場での《チェネレントラ》は、2009年6月のジャン・ピエール・ポネルの舞台による公演以来、独自の新演出はこれが初めて。
粟国の演出は、「チェネレントラ」という映画を作成するための主役選定という外枠をかぶせ、アンジェリーナがそれを射止めるという設定。オペラのストーリーと映画作りを絡ませながら進めていく。序曲の間の黙劇は映画の出演希望者のオーディション。何度はねられても諦めないドン・マニフィコ役とその娘たちのグループ、映画監督アリドーロの指示で通過する。
この映画のストーリー、どれほどオペラの筋と合致するだろうかと思ってみていたが、歌詞の細かいところでの不整合は多いものの、なんとかつじつまを合わせることができていた。第1幕の終盤、オペラでは酒蔵係に任命されたマニフィコの合唱付きのアリアなどは映画の世界での位置付けが難しかったようだ。
アレッサンドロ・チャンマルーギによる美術・衣装は、映画のセットを舞台上に作りこんだもの。今だったらCGでそれらしく見せることができるのではないかと思うが、映画監督を乗せたカメラクレーンからみれば映画のシーンとして撮れるのだろうと想像できる。照明の効果もあり場面が美しいことがなにより。
セットの裏で別の映画の撮影が行われている光景などもあり、そういった遊び心も二重の「チェネレントラ」を納得させるものであった。

この新たなプロダクション、継続的に利用し、再演を繰り返していただきたい。

関連評:新国立劇場 ロッシーニ:《チェネレントラ》|秋元陽平

(2021/11/15)

<Staff>
  Conductor: JOYA Masahiro
  Production: AGUNI Jun
  Set and Costume Design: Alessandro CIAMMARUGHI
  Lighting Design: OSHIMA Masao
  Choreographer: UEDA Haruka

<Cast>
  Don Ramiro: René BARBERA
  Dandini: KAMIE Hayato
  Don Magnifico: Alessandro CORBELLI
  Angelina: WAKIZONO Aya
  Alidoro: Gabriele SAGONA
  Clorinda: TAKAHASHI Nobuko
  Tisbe: SAITO Junko

  Chorus: New National Theatre Chorus
  Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra