Menu

アンサンブル・パルテノぺ バロック声楽LIVEシリーズ Vol.1 |藤堂清

アンサンブル・パルテノぺ バロック声楽LIVEシリーズ Vol.1
バルバラ・ストロッツィの恋人、またはヴェネツィアの恋人
“Amanti di Barbara”, ovvero “Amanti veneziani”
~秘密のひと…嘘つき!悔い改めよ~
~ segreto, bugiardo, ravveduto ~

2021年10月20日 近江楽堂
2021/10/20 Oumi Gakudo
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 金井隆之

<出演>        →foreign language
≪アンサンブル・パルテノペ≫
        懸田貴嗣(バロック・チェロ)
        西山まりえ(バロック・ハープ)
ゲスト:高橋美千子(ソプラノ)
        濱元智行(パーカッション)
<プログラム>
B. ストロッツィ:恋をするヘラクレイトス(《カンタータとアリア、二重唱曲集》作品2 より)
B. ストロッツィ:嘘つきな恋人(《カンタータとアリア、二重唱曲集》作品2 より)
A.ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ ト短調RV42より 第1楽章 Preludio Largo
B. ストロッツィ:悔い改めた恋人(《アリエッタ集》作品6 より)
T. メールラ:カンツォーネⅡ
G.バッサーニ:《6つのチェロ・ソナタ》より第3番 第3楽章 Grave
B. ストロッツィ:私の涙(《カンタータとアリエッタ集》作品7 より)
A.ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ ト短調RV42より 第3楽章 Sarabanda Largo
B. ストロッツィ:秘する恋人(《カンタータとアリア、二重唱曲集》作品2 より)
(アンコール)
C.モンテヴェルディ:ニンファの嘆き より

 

高橋の歌は、人の心のうちに触手を伸ばしてくる。それだけでなく人を捉えて離さない粘着力がある。作曲家の想いを伝える、そのために音を紡いでいるという以上に強く聴衆一人一人に迫る。

バロック・チェロの懸田貴嗣とバロック・ハープの西山まりえの二人によるアンサンブル・パルテノペ、その「バロック声楽LIVEシリーズVol.1」として行われた公演。フランスを中心に活躍しているソプラノの高橋美千子と、パーカッションの濱元智行をゲストに迎えた 4人でのコンサート。アンサンブルの核となる懸田と西山は共演機会も多く、バッソ・コンティヌオとしての実績は大である。
この日のテーマはバーバラ・ストロッツィ。彼女については生誕400年記念コンサート評を参照されたい。

高橋の歌うストロッツィのソロ声楽曲 、選ばれた5曲のうち3曲は1651年出版の作品2から、あとは作品6(1657年)と作品7(1659年)から各1曲。歌詞の細かなところまで神経が行き届いた歌唱。<L’Eraclito amoroso>での “che m’ucchida e sotterrimi” の不気味な低音。<L’amante bugiardo>の “sospir” を最初は無声音に近いほど抑えて歌うが、くりかえしではしっかり響きを加えるといった歌い分け。 “se parli o taci” の聴き手に投げつけるかのような表現。一言一言が、その意味を考えさせる。
楽譜に細かな表現指示があるわけではない。テンポを揺らしたりといった表情付けは高橋自身によるものであろう。その歌い口の微妙な変化は、すでに述べた歌詞の扱いと相まって、部分部分も、全体としても、強い印象を与える。

声楽曲の間にチェロとハープによる器楽曲、ヴィヴァルディ、バッサーニ、メールラというヴェネツィアで活動した作曲家の作品が演奏された。ストロッツィとの接点の有無は不明だが、「ヴェネツィアの恋人」のくくりにあたるという考えだろう。懸田と西山の息のあった演奏が聴けた。それぞれ1楽章ずつというのは残念だが。
多くの曲にパーカッションが加わることで、テンポやリズムに変化や味わいが生まれており、今回の演奏者の構成は成功だった。

ストロッツィの作品の中でもソロの曲は彼女自身が歌ったものだろう。今回取り上げられた5曲もほんの一部、まだまだ埋もれている宝があるにちがいない。高橋のようなとがった表現があれば、今生きる我々にとっても新たな興味や喜びを与えてくれることだろう。

(2021/11/15)

<Player>
Ensemble Partenope:
  Takatsugu Kaketa(Baroque Cello)
  Marie Nishiyama(Baroque Harp)
Gest:
  Michiko Takahashi(Soprano)
  Tomoyuki Hamamoto(Percussion)

<Program>
B. Strozzi:L’Eraclito amoroso
B. Strozzi:L’amante bugiardo
A. Vivaldi:Cello Sonata RV.42 in G minor 1.mov Preludio-Largo
B. Strozzi:”Cantata” Amante ravveduto
T. Merula:Canzone II
G. Bassani:Cello Sonata III in a minor 3.mov Grave
B. Strozzi:”Lamento” Lagrime mie
A. Vivaldi:Cello Sonata RV.42 in G minor 3.mov Salabanda-Largo
B. Strozzi:L’amante segreto
(Encore)
C. Monteverdi:Lamento della ninfa