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二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演 ヘンデル:《セルセ》|藤堂清

東京二期会オペラ劇場 《二期会創立70周年記念公演》
二期会ニューウェーブ・オペラ劇場
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:《セルセ》(新制作)
オペラ全3幕 日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
GEORG FRIEDRICH HÄNDEL:SERSE
Nikikai New Wave Opera Theatre / Presented by Tokyo Nikikai Opera Foundation, Co-presented by Meguro Foundation of Art and Culture
(Opera in three acts, Sung in the original (Italian) language with Japanese supertitles)

2021年5月23日 めぐろパーシモンホール 大ホール
2021/5/23 Meguro Persimmon Hall (Tokyo, Japan)
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)撮影:5月20日(ゲネプロ、別キャスト)

<スタッフ>        →foreign language
指揮:鈴木秀美
演出:中村 蓉
装置:松生紘子
衣裳:田村香織
照明:喜多村 貴
演出助手:根岸 幸

舞台監督:幸泉浩司
公演監督:大島幾雄

<キャスト>
セルセ:澤原行正
アルサメーネ:本多 都
アマストレ:長田惟子
アリオダーテ:田中夕也
ロミルダ:塚本正美
アタランタ:新宅かなで
エルヴィーロ:堺 裕馬
ダンサー:中村 理、北川 結、池上たっくん、久保田 舞、田花 遥、山田 暁
合唱:二期会合唱団
管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ(NBO)

 

若い!
若いって、いいな!
少しのことは「若い」が包み込んでくれる。

二期会ニューウェーブ・オペラ劇場は、3年に一度行われる若手歌手による公演。鈴木秀美の指揮・指導によりバロック・オペラを上演してきている。2015年の《ジュリオ・チェーザレ》、2018年の《アルチーナ》に続き、今年もヘンデル、オペラ《セルセ》を取り上げた。

物語はペルシャ王セルセとその周辺の男女の愛憎劇。
セルセ、アルサメーネの兄弟、アルサメーネと恋仲のロミルダとその妹アタランタ、謎の人アマストレといった主な役柄。セルセのロミルダへの横恋慕、アタランタのアルサメーネへの想いと裏工作が絡み、各人の気持ちがバラバラになりかかるが、セルセの婚約者アマストレが名乗り出たことでもとの組み合わせに収まる。
だがバロック・オペラは、王侯や政治家の権力争いを反映した「時事問題エンターテインメント」といわれる。表面的なストーリーとは別に、それを読み解くのが聴き手の楽しみ。
セルセをドイツ・ハノーヴァーから迎えられたプロテスタント系統のジョージⅡ世、アルサメーネをカトリック系のジェイムズⅡ世の孫チャールズと当てはめ、この二人がロミルダ(=英国)を争う。アタランタ(=フランス)の介入もうまくいかず、セルセにアマストレ(=ハノーヴァー)へ戻れというのが、このオペラの裏の意味という。

中村蓉、30代前半だから若い。ダンサーとしての経歴は10年以上あるが、オペラ演出は今回が初めて。
各場面にダンサーを登場させ存分に踊らせる。また彼らはストーリー展開を助ける役割も果たす。歌手にも、ダンサーと同期する動きをさせたり、ときには同じ振りしながら歌う場面もある。彼らが若いからできることだろう。
冒頭で歌われるアリア <緑の木陰がこれほどいとしく(オンブラ・マイ・フ)> は、ダンサーたちの作るタワーで木を表し、そのもとでセルセが歌う。最後の場面でも、彼以外の全員で作るタワーの周りをめぐりながら、この歌でオペラを締めくくる。
舞台は高い壁に仕切られた空間が基本。そこへ階段や姉妹の部屋、アルサメーネの従者エルヴィーロが情報収集に利用するバー(ジョージの名を冠した)などが脇から出てきて、舞台転換。構造は簡単だが、変化は大きく効果的。
一方で、歌詞でうたわれている状況を、その場面に本来登場しない人物に舞台上で演じさせることも多く、そこまで説明しなくてもよいだろうと感じられた。この点は音楽面の扱いと関係する可能性が考えられる。

ヘンデルのオペラは長い。《セルセ》もカットなしに上演すれば、演奏時間だけでほぼ3時間。本来の3幕構成とすると、休憩も入れ3時間30分から4時間にもなる。
今回の演奏では、第2幕を前半と後半に分け、前者を第1幕と、後者を第3幕とつなげて2幕構成としている。カットは第1,2幕の後半に多いが、登場人物の役割やストーリーには大きな影響はない。とは言え、いくつかのアリアのカットは現代のヘンデル上演では行われることはないだろう。次回以降どういったポリシーで進めるのか明確にしていくことが必要と考える。

鈴木秀美の指揮のもと、ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウは精妙な音楽を奏でた。それもそのはず、メンバー表をみると、ヴァイオリンの戸田薫、チェロの山本徹、オーボエの三宮正満、テオルボの佐藤亜紀子といった日本の古楽界を代表する奏者の名前が並んでいる。彼らが集まりバロック・オペラを演奏する機会が増えていくことを期待したい。

歌に、ダンスにと舞台を走り回った、若い歌手の方々の今後の成長も楽しみにしたい。

関連評:二期会ニューウェーブ・オペラ劇場 セルセ<新制作>|大河内文恵

(2021/6/15)

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<STAFF>
Conductor:Hidemi SUZUKI
Stage Director:Yo NAKAMURA
Set Designer:Hiroko MATSUO
Costume Designer:Kaori TAMURA
Lighting Designer:Takashi KITAMURA
Assistant Stage Director:Sachi NEGISHI
Stage Manager:Hiroshi KOIZUMI
Production Director:Ikuo OSHIMA
<CAST>
Serse:Takamasa SAWAHARA
Arsamene:Miyako HONDA
Amastre:Yuiko OSADA
Ariodate:Yuya TANAKA
Romilda:Masami TSUKAMOTO
Atalanta:Kanade SHINTAKU
Elviro:Yuma SAKAI
Dancers:Masashi NAKAMURA, Yu KITAGAWA, IKEGAMI Takkun, Mai KUBOTA, Haruka TABANA, Sato YAMADA
Chorus:Nikikai Chorus Group
Orchestra:New Wave Baroque Orchestra, Tokyo

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二期会合唱団:
 ソプラノ:石野真帆、北門華音、佐藤初音、重田栞
 アルト:河野ちはる、小林香奈、佐野円香、山田茉央
 テノール:竹内公一、森田有生、前橋隼也、山本雄太
 バス:岸本大、佐原壮也、吉原裕作、後藤駿也

ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ
コンサートマスター:戸田薫
ヴァイオリン:池田梨枝子、有山志音、遠藤結子、門倉佑希子、小島成顕
       重松綾乃、宮崎桃子、宮澤紫、山本佳輝、渡邊優
ヴィオラ:春木英恵、小川萌、田中香帆
チェロ:山本徹、稲垣真奈、大田原聖、山田慧
オーボエ:三宮正満、北康乃、倉澤唯子、笹平幸那
トロンボーン:齋藤秀範
ファゴット:北山乃香
通奏低音:
 チェロ:山本徹
 テオルボ:佐藤亜紀子
 チェンバロ:上尾直毅、福間彩