ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1 レオナルド・ダ・ヴィンチ時代の音楽|藤堂清
ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1
レオナルド・ダ・ヴィンチ時代の音楽
Leonardo da Vinci Festival in Kawaguchi Vol. 1
La Musica al tempo di Leonardo da Vinci
2019年8月17日 川口総合文化センター・リリア音楽ホール
2019/8/17 Kawaguchi LILIA Music Hall
Reviewed by 藤堂清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 平井洋
Photo by 朴令鈴
<出演者> →foreign language
(声楽)
合唱:ラ・ヴォーチェ・オルフィカ
ソプラノ:中山美紀、小暮容子
アルト:細岡ゆき
テノール:前田ヒロミツ
バス:酒井崇
(器楽)アントネッロ
コルネット:細川大介
サクバット:和田健太郎
ドルツィアン/リコーダー/クルムホルン:古橋潤一
リコーダー/クルムホルン:細岡ゆき
ヴィオラ・ダ・ガンバ:石川かおり
ルネサンス・ハープ:西山まりえ
オルガン:矢野薫
指揮:濱田芳通
<曲目> (*…器楽曲)
グリエル・モエブレオ・ダ・ペサロ:アモローソ(*)
ギョーム・デュファイ:キリエ~ミサ・アヴェ・レジナ・チェロールム
作者不詳:バッカスの勝ちなのだ
作者不詳:心からイェス様に祈ります
ハインリヒ・イザーク:私のこうべに水を垂れた人
ジョスカン・デ・プレ(?):グローリア~フーガによるミサ
フランキーノ・ガッフーリオ:クレド~謝肉祭のミサ
——————(休憩)——————–
ジョスカン・デ・プレ:平和の接吻で挨拶をしましょう
ヨハネス・オケゲム:他の誰かを愛することは
ジョスカン・デ・プレ:サンクトゥス~ミサ《他の誰かを愛することは》/あなたは奇跡を生む唯一の神です
ロワゼ・コンペール:デオ・グラツィアスの代わりに~ガレアッツォ公のミサ
ロワゼ・コンペール:俺たちゃ聖バビュアン派の修道士(*)
バルトロメオ・トロンボンチーノ:おお、聖なる饗宴よ
バルトロメオ・トロンボンチーノ&マルケット・カーラ:聖マリアよ、私たちの代わりに祈ってください
クローダン・ド・セルミジ:花咲くときを生きる限り(*)
クローダン・ド・セルミジ:私は悲しみにあふれ
クレマン・ジャヌカン:わが苦しみは大きからず
クレマン・ジャヌカン:アニュス・デイ~戦争のミサ
ジョスカン・デ・プレ:森のニンフたち(ヨハネス・オケゲムの死を悼む挽歌)
——————(休憩)——————–
ジョスカン・デ・プレ:愛さずにはいられない
「ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1」の最後のコンサート、「レオナルド・ダ・ヴィンチ時代の音楽」と題し、レオナルドが生きた時代、土地で書かれ、演奏されていた曲を集めて行われた。
異なる作曲家のミサ楽章を並べ、プログラム全体でミサ曲となるように構成している。また、楽章間にモテット、シャンソンなどを配置し、世俗音楽も含む盛期ルネサンス時代の音楽の様相を提示した。
ミサ曲は、ギョーム・デュファイの《ミサ・アヴェ・レジナ・チェロールム》の〈キリエ〉から始まる。ジョスカン・デ・プレの《フーガによるミサ》から〈グローリア〉(偽作説あり)、フランキーノ・ガッフーリオの《謝肉祭のミサ》から〈クレド〉という前半。
後半はヨハネス・オケゲムの同名の曲に基づくジョスカンのミサ《他の誰かを愛することは》から〈サンクトゥス〉、そしてモテット《あなたは奇跡を生む唯一の神です》がベネディクトゥス~オザンサの歌詞の代わりに歌われる。つづくロワゼ・コンペールの《ガレアッツォ公のミサ》より〈デオ・グラツィアスの代わりに〉も本来の歌詞を変更して歌われるもの。また、本来は〈アニュス・デイ〉の後のくるものだが、音楽的なつながりを考え、この位置に入れたとのこと。その〈アニュス・デイ〉はクレマン・ジャヌカンの《戦争のミサ》から。プログラム最後のジョスカンの《森のニンフたち》は、オケゲムの死を悼む曲で一部にレクイエムのイントロイトゥスの旋律が用いられている。
これらの楽章間に演奏された曲、フィレンツェの謝肉祭で歌われた《バッカスの勝ちなのだ》、トロンボンチーノの《おお、聖なる饗宴よ》、ジャヌカンの《わが苦しみは大きからず》などは、典礼とは異なる自由な表情を見せる。
これらの曲の作曲時期は1470年から1540年の間であろう。ミラノやフィレンツェの宮廷音楽家として活躍していた人もいる。具体的な記述はないがレオナルドと同時期に同じ町にいた可能性はあるだろう。実際、フランキーノ・ガッフーリオは1484年から38年間ミラノ大聖堂の楽長を務めており、レオナルドのミラノでの活動時期、1482年~1499年と重なる。1490年ミラノ公の結婚の祝典の指揮をレオナルドが任されたが、その時の音楽を作曲したのがガッフーリオであったという。
今回取り上げられた作品を聴くと、作曲家ごとに多声部の作り方にバラエティがあることが分かる。ギョーム・デュファイ、ヨハネス・オケゲムといった一世代前の作曲家の音楽、ジョスカン・デ・プレ、フランキーノ・ガッフーリオ、ロワゼ・コンペールといったレオナルドとほぼ同世代の作曲家のものと較べると、音の流れにゴツゴツ感がある。500年という時をへだててると見えてくる、時代ごとの特性といったものはあるのかもしれない。そんなことも考えた。
この日の演奏、アントネッロの7名の奏者による器楽パート、そしてラ・ヴォーチェ・オルフィカの合唱と5人のソリストの声楽パート、どちらも充実したものであった。
一見すると単純な楽譜から、弾みのある音楽、リズム、音色、を弾き出していた。
もちろん、指揮者の濱田芳通の強い思いと指導力によるところが大きいのだが、メンバーのがんばりも大変なもの。アルトソロの細岡ゆきなどは、合唱にも加わるし、リコーダーやクルムホルンを吹くところもあるなど活躍。
ダ・ヴィンチ音楽祭、オペラ《オルフェオ物語》を中核に、この日のレオナルドの時代の音楽、さまざまな古楽団体の競演、さらに現代の視点からみたルネサンス音楽といった切り口で行われ、大きなインパクトがあったと思う。
第2回はどのような企画でおどろかせてくれるのだろう。楽しみにしたい。
(2019/9/15)
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<Performer>
(Vocal)
Chorus(La Voce Orfica)
Soprano(Nakayama.Miki , Kogure,Yoko)
Alt (Hosooka,Yuki )
Tenor(Maeda,Hiromitsu)
Bass(Sakai,Takasi)
(Orchestra)Anthonello
Cornetto (Hosokawa,Daiske)
Sackbut (Wada,Kenichiro)
Dulzian, Recorder, Crumhorn (Furuhashi,Junichiro )
Recorder,Crumhorn (Hosooka,Yuki)
Viola da Gamba (Ishikawa,Kaori)
Renaissance Harp (Nishiyama,Marie)
Organ (Yano,Kaoru)
Conductor (Hamada,Yoshimichi)
<Program> (*…Instrumental Piece)
Guglielmo Ebreo da Pesaro: Amoroso [*]
Guillaume Dufay: Kyrie ex Missa Ave regina caelorum
Anonymous: Trionfo di Bacco
Anonymous: Jesù, Jesù, Jesù
Heinrich Isaac: Quis dabit capiti meo aquam?
Josquin des Prez (?): Gloria ex Missa Ad fugam
Franchino Gaffurio: Credo ex Missa de Carneval
————— intermission————–
Josquin des Prez: Baisés moy
Johannes Ockeghem: D’ung aultre amer
Josquin des Prez: Sanctus ex Missa D’ung aultre amer / Tu solus qui facis mirabilia
Loyset Compère: Loco Deo gratias ex Missa Galeazescha
Loyset Compère: Nous sommes de l’ordre de Saint Babouin [*]
Bartolomeo Tromboncino: O sacrum convivium
Bartolomeo Tromboncino & Marchetto Cara: Sancta Maria ora pro nobis
Claudin de Sermisy: Tant que vivray [*]
Claudin de Sermisy: Il me suffit
Clément Janequin: Ma peine n’est pas grande
Clément Janequin: Agnus Dei ex Missa la Bataille
Josquin des Prez: Nymphes des bois (La déploration sur la mort de Johannes Ockeghem)
—————— encore——————-
Josquin des Prez: Je ne me puis tenir