Back Stage|聴くなら、今! 小泉音楽監督との4シーズン目を迎える名フィルの定期演奏会|小出 篤

聴くなら、今! 小泉音楽監督との4シーズン目を迎える名フィルの定期演奏会

text by 小出 篤 (Atsushi Koide)
Photos by 中川幸作(Kosaku Nakagawa)

2018年12月7日(金)<第463回定期演奏会>
愛知県芸術劇場コンサートホール

2016年4月、創立50周年という記念の年に、小泉和裕が3年間の契約で、名フィルの音楽監督に就任しました。それからはや3年が経ち、音楽監督の契約はさらに4年間延長され、この4月から小泉音楽監督の4シーズン目が開幕します。
名フィルは現在、定期演奏会(1967シーズン~)、しらかわシリーズ(2003シーズン~)、市民会館名曲シリーズ(2006シーズン~)、豊田市コンサートホール・シリーズ(2013シーズン~)、平日午後のオーケストラ(2017シーズン~)と、5つの主催公演シリーズを展開しています(このほかに、ウィンド・オーケストラや第九、クリスマスなど、毎シーズン開催しているスポット公演もあり)。どれも自信のラインナップなので、すべてお聴きいただきたいところですが、一押し企画といえば、やはり定期演奏会。「聴くなら、今!」と声を大にしたい理由を挙げてみます。

2018年12月19日(水)<クリスマス・スペシャル・コンサート2018>
愛知県芸術劇場コンサートホール

【その1】 ますます深まる指揮者との関係
定期演奏会は、シーズンに11回(22公演)開催していますが、そのうち4回は音楽監督が指揮することが、契約で決まっています。今年古稀(70歳)を迎える小泉和裕は、熱狂的な演奏で客席を沸かすタイプではないので、やや地味な存在に見られがちですが、その質実剛健な音楽作り、ひたすら音楽の本質に迫ろうとするストイックな姿勢で、楽員の敬意を一身に集めています(指揮者とオーケストラの関係は、世間で思われているほど友好的ではないので、実は意外と稀なケース)。これまでの3シーズンの積み重ねで、音楽監督自身も「オーケストラが良くなってきている」「自分のやりたいことが、すぐに伝わるようになってきた」と、たびたび手応えを語っています。
また、30代前半の若さながら、名フィル・デビューから10年、「指揮者」就任から8年が過ぎた川瀬賢太郎が、この4月から「正指揮者」に就きます。川瀬賢太郎は、シーズンに1回必ず定期演奏会に出演し、凝りに凝ったプログラムで、記憶に残る鮮烈な演奏を実現してくれています。
二人の指揮者との今後のさらなる関係の深まりに、とことんご期待ください!

【その2】 愛知県芸術劇場コンサートホールの音響
改修工事のため、2017年9月から翌年11月まで、定期演奏会の会場は日本特殊陶業市民会館フォレストホールへの変更を余儀なくされました。2019シーズンは3季ぶりに、シーズンすべての定期演奏会が愛知県芸術劇場コンサートホールで開催できることになります。何人もの海外アーティストから「自分の国に持って帰りたい」と絶賛され、小泉音楽監督に「ここが使えなくなると知っていたら、音楽監督就任を引き受けなかったかも・・・」と、事務方の背筋を寒くさせるセリフを言わしめたほどの優れた音響を誇るホールで、名フィルの入魂の演奏を、じっくりご堪能ください!

2018年12月8日(土)<第463回定期演奏会>
愛知県芸術劇場コンサートホール

【その3】 テーマ性の高いプログラミング
定期演奏会は、1996シーズン以来ずっと通季テーマを設けて、プログラムを組んでいます。小泉音楽監督との話し合いの結果決まった2019シーズンのテーマは、極めてシンプルに、「マスターピース」。偉大な作曲家たちが残した代表作をメインに置きつつ、知られざる傑作や同時代の秀作も、バランス良く取りそろえました。各回には、「未完の」「最後の」「危機の」「晩成の」「敬愛の」「最大の」「破天荒の」「舞踊の」「畢生の」「集大成の」「オマージュの」傑作というサブタイトルが付いています。音楽史に燦然と輝く選りすぐりの傑作を、たっぷりお楽しみください!

【その4】 ブレイク必至の新鋭たち
名フィルは、日本が誇る国際コンクールと提携を結び、その優勝者をいち早くソリストに招いています。5月には第4回東京国際ヴィオラコンクールを制したルオシャ・ファンが、7月には第10回浜松国際ピアノコンクールの覇者 ジャン・チャクムルがソリストとして出演します。ほかにも、日本デビューというわけではありませんが、カーチュン・ウォン(指揮)、クララ=ジュミ・カン、オーガスティン・ハーデリッヒ(ヴァイオリン)、パブロ・フェランデス(チェロ)といった新鋭が続々と登場します。世界が注目するブレイク間違いなしの若き天才たちに、しっかりご注目ください!

2018年12月7日(金)<第463回定期演奏会>
愛知県芸術劇場コンサートホール

【その5】 新しい音楽に出会えるコンポーザー・イン・レジデンス
名フィルでは、前常任指揮者 マーティン・ブラビンズからの提案で、2014シーズンから「コンポーザー・イン・レジデンス」を導入しています。これは、一人の日本人作曲家に3年の任期で計3作品を委嘱し、定期演奏会で初演を行うという制度です。初代に藤倉大が就任、現在は第2代を酒井健治が務め、第3代も間もなく決まりそうです。7月には藤倉大への3作目の委嘱作品『グローリアス・クラウズ』(任期中に取り上げられなかったため演奏を延期)、12月には酒井健治への3作目の委嘱作品(タイトル未定、カウンターテナーとオーケストラのための歌曲)を演奏します。実は当初、「現代音楽のためにわざわざお金を使って…」といった否定的な意見を寄せられることが多かったのですが、委嘱作品のクオリティの高さと特に藤倉大の活躍もあって、今では名フィルの特色の一つとして、多方面から高い評価をいただいています。時代の最先端を行く新しい音楽を、がっちり受け止めてください!
というわけで、2019シーズンの定期演奏会〈マスターピース〉シリーズを、心底すべてお聴きいただきたいと思っています。聴くなら、今! 1回でも多く、是非名フィルの定期演奏会を聴きにいらしてください!

小出 篤(名古屋フィルハーモニー交響楽団 事務局 演奏事業部 課長/企画制作担当)

 (2019/3/15)

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公演情報 2019/4〜2020/3シーズン