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注目のコンサート|2019年2月

♩2/1 ベルチャ弦楽四重奏団

現代最高の弦楽四重奏団であるベルチャ弦楽四重奏団だが、彼らの真価は録音ではいささか分かりにくいかも知れない。鋭利で繊細、細やかなニュアンスと明滅する各パートの妙なる絡み合いなどは実演で聴くとその凄さがより明確に感知出来る。2010年に今回と同じく紀尾井ホールで行なわれたコンサート、それは大変なものであって『ラズモフスキー第1番』で炸裂した表現力は並大抵のものではない。実演未体験の方は万難を排して紀尾井ホールに駆け付けられたい。弦楽四重奏団ファンならなおさら。

2/1@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20190201k1900.html

 

 

♩2/1 若林かをり フルーティッシモ!plus

ペロティヌス(1220年頃)からC.P.E.バッハ(J.S.バッハの息子)を経て、J.S.バッハのオルガン作品トッカータとフーガ ニ短調のフルート独奏版、そしてシャリーノ、ライヒ、ノーノという全く異なった現代音楽が並ぶ。若林一人の演奏を有馬純寿と共に多重録音したものと同時生演奏するライヒ、若林・有馬・ヴォクスマーナによるノーノ作品の全曲版日本初演など、全曲聴きどころばかりの恐るべき演奏会となろう。

2/1@すみだトリフォニーホール小ホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2018-04-002539.html

 

 

♩2/7 小林海都 ピアノ・リサイタル

2013年第11回東京音楽コンクールピアノ部門第2位、上野学園高校音楽科ののちエリザベート王妃音楽学校でマリア・ジョアン・ピレシュに師事、現在バーゼル音楽院で研鑽を積む新鋭。ハイドン、スクリャービン、ストラヴィンスキー、シューベルトというプログラムで本格的ソロ・リサイタルに挑む。

2/7@すみだトリフォニー 小ホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2018-09-002771.html

 

 

 

♩2/10、11、13 クルレンツィス&ムジカエテルナ

ヨーロッパでセンセーションを巻き起こしたテオドール・クルレンツィス率いるムジカエテルナの初来日公演。アテネに生まれ、ギリシャ哲学が自分の音楽の底に流れていると語る彼、その特異な魅力をオール・チャイコフスキープログラムで披露する。日本でのキックオフイベントで流された映像に、どこぞの新興宗教の教祖を思ったが、「天才か、悪魔か」のキャッチコピーを自分の耳目で確かめたい。

2/10@オーチャードホール
2/11@すみだトリフォニーホール
2/13@サントリーホール
http://www.musicaeterna2019.jp/

 

♩2/10 ホセ・マセダ作曲『カセット100』

フィリピンの現代作曲家ホセ・マセダ(1917-2004)のマルチメディア・パフォーマンス作品を経験不問の100人(募集は終了)が集って上演する。録音再生機器を手に皆で回遊することによって、民衆の精神・信仰・儀式世界を現代に介入させるという試みを是非目撃したい。

2/10@KAAT神奈川芸術劇場アトリウム(18:30/19:30の2回公演、各回30分)
https://www.tpam.or.jp/program/2019/?program=cassettes-100
(下記2/11コンサートも参照)

 

 

 

♩2/11 ホセ・マセダ:5台のピアノのための音楽、2台のピアノと4本の管楽器

ホセ・マセダの音楽自体あらたまって演奏されることがあまりない。それが西欧音楽の象徴たるピアノという楽器を用いたものであるにせよ、マセダ作品はある種のアマチュアリズムとブリコラージュ的な手仕事の融合という側面が強く、コンサートホールという制度には必ずしも合致しないような音楽だからだ。この度のTPAM(国際舞台芸術ミーティングin横浜2019)では、マセダの音楽及びその人と縁の深いジョセフィーノ・チノ・トレド、高橋アキ、高橋悠治他10人の演奏家によりマセダが初めてピアノのために書いた『5台のピアノのための音楽』(1993年)、そして『2台のピアノと4本の管楽器』(1996年)が演奏される。これはレアなチャンスだ!。恩田晃プロデュース。

2/11@KAAT神奈川芸術劇場ホール
https://www.tpam.or.jp/program/2019/?program=music-for-five-pianos-two-pianos-and-four-winds

 

♩2/13 ヴァレア・サバドゥス&コンチェルト・ケルン

若手カウンターテナーのトップ歌手のひとり、サバドゥスが古楽オーケストラ、コンチェルト・ケルンと共に来日する。言わずと知れたヴィヴァルディ、ヘンデルに加え、ダッラーバコ、ジャコメッリ、カルダーラ、ポルポラと言った、日本ではあまり知られていない作曲家によってバロック・オペラの黄金期を再現するこれまでにない会となろう。

2/13@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20190213k1900.html
http://www.allegromusic.co.jp/ValerSabus&ConcertoKoln2019.html

 

 

♩2/13、19 アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会

本邦でもベートーヴェンやモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏、シューベルトのデュオ作品など数々の名演を重ねてきたイブラギモヴァとティベルギアンが、待望のブラームスの全曲に挑む。知的な造形感とエモーションとのバランスをどう取るかが難しいブラームス作品でこのデュオの本領が存分に発揮されるであろうことは想像に難くない。名曲を聴く喜びの再発見に満ちた一夜となろう。

2/13@王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2018/20190213.html
2/19@横浜みなとみらいホール
http://www.yaf.or.jp/mmh/recommend/2019/02/20-5.php

 

♩2/14 オルケストル・アヴァン=ギャルド第1回公演

日本ではまだ珍しい、全メンバー日本人でのピリオド楽器によるオーケストラの第1回演奏会。室内楽ではなく、オーケストラでのこのような演奏、しかも第一回の今回はベートーヴェンの初期の作品を聴ける貴重な機会である。アヴァン=ギャルド、つまり前衛という団体名にふさわしい演奏を期待したい。

2/14@トッパンホール
https://www.orchestreavantgarde.com/

 

 

 

♩2/15 マンハイム楽派のスターたち

18世紀に一世を風靡した、ほぼハイドンと同世代であるマンハイム楽派の作品は、音楽史的には「古典派」を形作り、その後のモーツァルトに多大な影響を与えた重要な存在であるのだが、日本での実演の機会はめったにない。その室内楽作品がまとまって聴けるこの演奏会を逃してはならない。

2月15日@近江楽堂
http://www.lafonteverde.com/index.php?option=com_ohanah&view=event&id=482&Itemid=537

 

 

 

♩2/15、17、20 東京フィルハーモニー交響楽団 第916回サントリー定期シリーズ

2月の東フィル定期では、チョン・ミョンフンが得意とするマーラーの中から「第9番」が取り上げられる。この作品に「死」を見るか否かは論議を呼んでいるが、近年のチョンの音楽は、壮年時代の直截な力感こそ後退しているが、それに変わって内面性が著しく深化している。この点からすれば、今回の「マラ9」には多大なる期待を寄せる他あるまい。

2/15@サントリーホール
http://tpo.or.jp/concert/20190215-01.php
2/17@Bunkamuraオーチャードホール
http://www.tpo.or.jp/concert/20190217-01.php
2/20@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.tpo.or.jp/concert/20190220-01.php

 

♩2/16 アンサンブル九条山コンサートVol. 7 セレクションズ

アンサンブル九条山は、アンスティチュ・フランセ日本が運営するヴィラ九条山(京都市)内に、当時レジデント・コンポーザーを務めていたサニカンドロによって2010年に設立された現代音楽アンサンブル。奏者は国内外で活躍する現代音楽のスペシャリスト達。以来、レジデントの新作やフランス現代音楽作品を中心に創造的なプログラムを展開してきた。今回はブーレーズの他、ショリス、エルヴェ、ミュライユといったフランス現代作曲家作品からのセレクション。フランス音楽の現在を知るにはまたとない機会となりそうだ。

2/16@ザ・フェニックスホール
http://phoenixhall.jp/performance/2019/02/16/7876/

 

♩2/17、20,23,24 新国立劇場 西村朗「紫苑物語」

大野和士の新国立劇場芸術監督就任にあたり、いくつかのコンセプトが発表された。「日本人作曲家による新作オペラ上演」もその一つであり、第1弾として西村朗作曲による「紫苑物語」が初演される。石川淳の原作に基づき佐々木幹郎が台本を作成、演出は笈田ヨシというキャスト。シェフを務める東京都交響楽団と共に、芸術監督の大野が就任後初めてピットで指揮することも含め、注目すべき点の多いオペラ初演となる。

2/17, 20, 23, 24 @新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/asters/

 

 

♩2/19 弊隆太朗 コントラバス・リサイタル

東京藝大からヴュルツブルク音大留学、現在シュトゥットガルト放送交響楽団団員、ドイツ内外で活躍のコントラバス奏者の3年ぶりの東京公演。昨秋ミュンヘン国際コンクールでトリオ優勝時のピアニスト秋元孝介、ドイツからフルート、ヴィオラ奏者を迎えハイドンからシュールホフまでコントラバスの魅力をアピール。

2/19@Hakuju Hall
https://www.bflat-mp.com/4220.html

 

 

 

♩2/19 安達真理 ヴィオラ・リサイタル

B→C209回に登場する安達真理は桐朋音大からウィーン国立音大室内楽科を経て室内楽・ソロで活動、現在エストニア祝祭管弦楽団メンバーのヴィオリスト。ピアノに中野翔太、エレクトロニクスに宮下和也を迎え、バッハから現代までを。ベリオ、リゲティ、ペルトらに藤倉大、坂東祐大(世界初演)を含むプログラム。要注目だ。

2/19@オペラシティ リサイタルホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=8779

 

 

 

♩2/20、21 NHK交響楽団 第1908回 定期公演 Bプログラム

多彩なレパートリーでN響と充実した活動を続けるパーヴォ・ヤルヴィ。2月のB定期ではオール・ストラヴィンスキー・プロ(18年5月に続き第2弾となる)を取り上げる。作曲家の代名詞といえる「春の祭典」こそメインに置かれているものの、近年発掘初演された「葬送の歌」を含む初期3作で渡米以降に書かれた「ロシア風スケルツォ」を挟むという興味深い構成。作曲家の多面性を味わうにはこれ以上ないプログラムだろう。

2/20, 21@サントリーホール
http://www.nhkso.or.jp/concert/concert_detail.php?id=815

 

♩2/22、23,24 東京二期会公演 黛敏郎《金閣寺》

三島由紀夫の原作をクラウス・H・ヘンネベルクが台本化、黛敏郎が作曲した作品、原語であるドイツ語で上演、日本語と英語の字幕が付けられる。演出は宮本亜門が担当、2018年にフランス国立ラン歌劇場で初演された舞台である。主役の溝口は宮本益光と与那城敬、柏木に樋口達哉と山本耕平と中堅、若手を配している。指揮のマキシム・パスカルは、フランス生まれの33歳、ミラノ・スカラ座などで活躍する俊英、日本でオペラを振るのは初めてで、多いに期待される。

2/22,23,24@東京文化会館大ホール
http://www.nikikai.net/lineup/kinkakuji2019/index.html

 

 

♩2/23 エルディーティ弦楽四重奏団

結成から30年近いエルディーティ、ベートーヴェン後期を中心としたシリーズを終え、今回は中期とモーツァルト後期を取り上げる。間にイベールをはさみアクセントとした。若手の台頭が著しい今日、ヴェテランの滋味豊かな四重奏世界をじっくり味わえる一時となろう。

2/23@第一生命ホール
http://www.triton-arts.net/ja/concert/2019/02/23/2635/

 

 

 

 

♩2/23 アンサンブル・ノマド 第65回定期演奏会 超えるVol.3 バッハを越えて

アンサンブル・ノマドが「宗教音楽」を特集する。宗教の根源たる人間の祈り=音楽の普遍的な姿を人種・国籍・文化・時代・ジャンルを越えて感受したい。手練のノマドメンバーはもちろんのこと、世界中から集まったゲストたちによってあらゆる境界を「超える」音楽の力を確認したい。

2/23@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.ensemble-nomad.com/コンサート/定期演奏会/第65回定期演奏会/

 

 

 

♩2/23 異才たちのピアニズム6 セルゲイ・カスプロフ

異才たちのピアニズムシリーズ第6回は1979年モスクワ出身のセルゲイ・カスパロフ。プログラムはバロック時代のジャン=バティスト・レイエに、ラヴェルとムソルグスキー。ピリオド楽器に精通しつつも、敢えてピアノでの演奏を選んだ彼の目指すものとは何か。とくと見届けたい。

2月23日@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201902231500.html

 

 

 

♩2/24 日下紗矢子&ビヨルン・レーマン

長年トッパンホールのステージに上がってきた日下紗矢子による「ヴァイオリンの地平」シリーズ第4回(最終回)。今回のリサイタルは「近現代」とのテーマが掲げられ、そのプログラムはウェーベルン、バルトーク、シュニトケ、そして最後にジョン・アダムズと国を変え時代が下って行く、誠に興味深く刺激的なものだ。中でもクレーメルの録音でそれなりに知られているシュニトケの『ソナタ風』、そして同じくジョセフォヴィッツの録音もあるアダムズの『ロードムービー』は実演で滅多に遭遇できない作品(面白い!)。日下の仕事に注目している聴き手は勿論、ヴァイオリンに興味ある方は必聴。

2/24@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201902241500.html

 

♩2/28 越境する周縁者たち

デンマークのステン=アナーセン、東京に生まれ、韓国に移ったリー・チョンヘ、ポルトガルのルイス・アントゥネス・ペナ、そして日本の渡辺俊哉の作品により、あらゆるものを越境せんとする演奏会が開かれる。国籍もさることながら、渡辺作品以外全てが電子的操作の加わったものであることも興味深い。中心・本流・正統などではない「周縁」の者達だけが奏で得る音楽に耳を傾けたい。

2/28@両国門天ホール
http://www.monten.jp/20190228
https://www.gakuyamada.com/events/ekkyosurushuenshatachi

 

 

♩2/28 大阪交響楽団第226回定期演奏会

本楽団ミュージック・アドバイザーの外山雄三のタクトによる定期公演。今回の注目はもちろん、作曲家としても名高い外山自身の5番目となる交響曲の世界初演だ。2012年に80歳を記念して委嘱された《前奏曲》を第1楽章とし、その後第2楽章、第3楽章と書き進められてきた。いよいよその全貌が今公演で明らかに。そのほか、モーツァルトの《歌劇「後宮からの逃走」序曲》、外山が得意とするベートーヴェンの交響曲第1番など、外山ワールドを堪能できる一夜となりそうだ。

2/28@ザ・シンフォニーホール
http://sym.jp/publics/index/430/

 

 

♩2/28、3/2 ジャン=ジャック・カントロフ ヴァイオリン・リサイタル

ヴァイオリン演奏を封印して指揮に専念する、とカントロフが宣言したのが2012年。しかし2017年春には約5年振りにその「封印」を解き、ヴァイオリニスト・カントロフが復活した。その復帰後初の来日公演となる今回ツアーではラヴェルやフォーレのフランス作品も演奏されるが、この白寿ホールではブラームスのソナタ3曲が取り上げられる。このヴァイオリニストのフランス作品がいいのは言うまでもないが、プラネスと録音もしているブラームスも同様に見事なものだった。コジマ録音でのレコーディングを聴けば即座に分かるカントロフとの名デュオぶりを聴かせる上田晴子のサポートを得て、濃密な音楽体験が期待できること必至。

2/28@Hakuju Hall
http://www.ints.co.jp/jean-jacques-kantorow2019/index.htm
3/2@ CROSS HALL
https://crosshall.jp/2019年3月2日-土-ジャンジャック・カントロフ-ヴァ/