パーヴォ・ヤルヴィ NHK交響楽団 第1892回定期公演|藤堂清

パーヴォ・ヤルヴィ NHK交響楽団 第1892回定期公演(Cプログラム)

2018年9月22日 NHKホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ:ヨハンナ・ルサネン*
バリトン:ヴィッレ・ルサネン*
男声合唱:エストニア国立男声合唱団
合唱指揮:ミック・ウレオヤ
管弦楽:NHK交響楽団

<曲目>
シベリウス:《レンミンケイネンの歌》作品31-1
シベリウス:《サンデルス》作品28
シベリウス:交響詩《フィンランディア》作品26(男声合唱付き)
—————–(休憩)—————
シベリウス:《クレルヴォ》作品7*

 

ジャン・シベリウスの初期の大作《クレルヴォ》を後半に置いたプログラム。前半は、シベリウスの男声合唱と管弦楽のための作品3曲を演奏。指揮者パーヴォ・ヤルヴィの母国から、エストニア国立男声合唱団を招いて行われた。
《クレルヴォ》の演奏機会は多くないが、昨年11月にハンヌ・リントゥの指揮で、東京都交響楽団の定期演奏会で取り上げられたばかり。この大曲の実演を、1年間に2度体験することになった。

リントゥ=東京都交響楽団の演奏は、ダイナミクスの大きなもの。またフィンランド・ポリテク男声合唱団の精緻でかつ迫力のある合唱も見事であった。
ヤルヴィ=NHK交響楽団によるこの日の演奏では、ヴァイオリンや木管楽器といったメロディーラインがくっきりと浮き上がる。高音楽器と低音楽器のバランスという点では前者にウェイトが置かれ、つややかな響きとなる。
声の入らない第1,2楽章でのヤルヴィの推進力の強い音楽が全体の流れを決め、第3,5楽章で合唱を加えてもその勢いは変わることはなく、緊張感が途切れることはなかった。

エストニア国立男声合唱団は50人ほどのメンバー、リントゥのときの合唱団と較べると半分程度だろう。その差を考慮しても響きが薄い、また強声では少しにごりを感じる。それでも、独唱者のルサネン姉弟の充実した歌があり、ほぼ満足のいく声楽陣であった。
全体を通じて感じられたのは、ヤルヴィがシベリウスの若書きを丁寧に読み込み、整理していたこと。リントゥが作曲家の用いた様々な書法を強調するように演奏していたのとは対照的。彼らのシベリウスへの思い入れの差を感じたのは筆者だけではないだろう。

問題は前半。
《フィンランディア》以外の2曲はともに滅多に演奏されることがない。それだけにその実演を楽しみにしていたのだが、ここでの合唱は期待はずれ。テノールが高音で上がりきらない部分や、パートの音程がばらけるところがあるといった具合。オーケストラもそれに合わせるように不完全燃焼。
《フィンランディア》は管弦楽の部分が長く、そこではヤルヴィのコントロールが効き、安定した音楽を聴かせた。曲の後半に入る合唱も手慣れた感じで、最後を盛り上げた。

関連評:東京都交響楽団 シベリウス《クレルヴォ交響曲》|藤堂 清

(2018/10/15)