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2017年 第3回年間企画賞

Mercure des Artsは執筆陣による選考の結果、2017年(2016年11月1日〜2017年10月31日までの公演)の年間企画賞1〜3位を選出、ここに発表いたします。今回3位までといたしましたのは、年間200本を超える本誌レビュー公演から1公演のみを選出するのは難しいとの意見・判断によります。

【1位】
アーサー・サリヴァン コミック・オペラ『ミカド』(日本語上演/日本語・英語字幕付)
♪びわ湖ホール オペラへの招待
2017年8月5,6日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
♪平成29年度 新国立劇場 地域招聘オペラ公演 びわ湖ホール
2017年8月26,27日 新国立劇場 中劇場

【2位】
『忘れられた音楽〜禁じられた作曲家たち —「Cultural Exodus」証言としての音楽 —』<東京・春・音楽祭 ディスカヴァリー・シリーズvol.4>
2017年3月20日 上野学園 メモリアルホール

【3位】
コンポージアム2017 ハインツ・ホリガーの音楽『スカルダネッリ・ツィクルス』
2017年5月25日 東京オペラシティ コンサートホール

 

<選定にあたって>
【1位】
エキゾチシズムを超え、イエロー・フェイスなど人種問題としても物議を醸すことが多い『ミカド』で、ジャポニズム、オリエンタリズムを逆手にとった中村敬一演出の軽快痛快な舞台。吉本新喜劇と共演もしている日本センチュリー交響楽団の喜歌劇の間合いの良さとともに西洋の芸術文化を日本的に大衆化した「浅草オペラ」の挑戦をも彷彿とさせ、日本の喜歌劇の源流を感じさせた。同時にびわ湖と新国立劇場の東西2箇所における上演により、日本の東西の「笑い」の差異自体をも複眼的に意識化して見せた。
また歌手やアンサンブル・メンバーに、オペラ劇場としてのびわ湖ホールの底力が示され、東西にわたる好企画として多数の票が入った。
★参考レビュー
http://mercuredesarts.com/gilbert_sullivan_mikado-biwako/
http://mercuredesarts.com/sullivan_mikado_nntt-tohdoh/
★参考記事
http://mercuredesarts.com/back-stage_biwako-hall_opera_mikado/

【2位】
第20回国際音楽学会東京大会2017のシンポジウム<亡命の音楽>と連動した企画で、オーストリアからナチスに追われ過酷な運命を生きた作曲家の作品を取り上げたコンサート。「不条理な歴史から禁じられ、忘れられてしまった音楽を深い闇から光にさらす時、音楽は何を証言するのか」という問いは、過去〜現代〜未来に向けて、常に発せられねばならないものだろう。作品の発掘と再評価の意義とともに学術的な点でも優れた内容の企画と評価が高かった。
★参考レビュー
http://mercuredesarts.com/forgotten_music/
★参考記事
http://mercuredesarts.com/vienna-exil-arte-sano/

 

【3位】
ホリガーの最重要作・最高傑作でありながら、その演奏の難易度と長大さゆえか日本で演奏されることのなかった大作『スカルダネッリ・ツィクルス』の初演、作曲者自身の指揮のもと、彼の意図を正確に再現できる選りすぐりの演奏家が一同に会するというまたとないコンサートであった。作品・演奏の素晴らしさと同時に、コンポージアムの常としてチケット価格が非常に抑えられ(3000円)、一般的な音楽ファンを「この価格なら聴いてみよう」と取り込むことに成功。関係者の企画力と実現力に敬意を、との評価を得た。
★参考レビュー
http://mercuredesarts.com/compo2017-heinz-holliger/

 

 
(2017年12月15日)