注目のコンサート|2017年11月
♩11/3 クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス2017
現代音楽シーンに世界的な旋風を巻き起こしているクリスチャン・ヤルヴィ、今回は父ネーメ・ヤルヴィに捧げた自作日本初演に加え、バッハからケージ、そしてテクノミュージックも手がける気鋭のピアニスト・作曲家、フランチェスコ・トリスターノの自作日本初演、ヴァーグナーの現代的編曲と、「音楽実験」と銘打つにふさわしいプログラムである。是非その実験を見届けたい。
11/3@すみだトリフォニーホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2016-11-001240.html
2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子、2015年の室内楽ブロジェクト第1回に続き、今回は同世代の横溝耕、山上薫、髙橋洋太、佐藤卓史とともにマーラー、ブラームス、シューベルトを聴かせる。貸与されているストラディヴァリでのアンサンブルの妙味をたっぷり味わいたい。
11/3@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.aspen.jp/ticket/index.html#
2015年に好評だったステージの再演。その時のキャストが再結集し、紀尾井シンフォニエッタ東京から改称した紀尾井室内管弦楽団がバックをつとめる。前回カットされた魅力的なアリアをいくつか復活させ追加とのこと。河原忠之の指揮・チェンバロ、演出は粟國淳。
秋の昼下がり、雅なセミステージを楽しみたい。
11/3,5@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20171103k1500.html
ウィーンフィルのコンサートマスター、ウェルナー・ヒンクが第1ヴァイオリンで1964に創設されたウィーン弦楽四重奏団によるハイドン「鳥」、モーツァルト「ピアノ四重奏曲」(pf遠山慶子)、シューベルト「死と乙女」。ヒンクと遠山はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ選集のCDで2009年度毎日芸術賞を受賞しているが、その香り高いデュオが聴ける貴重な一夜。
11/7@紀尾井ホール
http://www.camerata.co.jp/concerts_events/detail.php?id=223
名門ボストン響の音楽監督となって3年を過ぎたネルソンス、ライピツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任など、華々しい活躍ぶりを見せている。ボストンとのコンビではショスタコーヴィチの交響曲全集でグラミー賞2年連続受賞など相性抜群。今回の来日公演ではチャイコフスキー、ショスタコーヴィチのほか、多彩なプログラムで聴かせる。サントリーホールではマスタークラス、公開リハーサル、青少年向け公演もある。
11/7~9@サントリーホール
http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/BSO2017/
♩11/8 東京都交響楽団 第842回定期演奏会 Aシリーズ
2017年フィンランド独立100年記念として、フィンランド出身のハンヌ・リントゥの指揮のもと、シベリウス初期の名曲「クレルヴォ交響曲」(1974年渡邉暁雄指揮都響が日本初演)が演奏される。フィンランドの民族叙事詩カレワラを題材とした本作に、リントゥの信頼も厚いフィンランド・ポリテク男声合唱団と2人の歌手が集う。必聴のコンサートといえよう。
11/8@東京文化会館大ホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3065&year=2017&month=11
アンリ・バルダは1941年エジプト・カイロ生まれのユダヤ系フランス人。カイロではエドワード・サイードと同門とのこと。パリ、 NYで学び、19世紀の大演奏家たちの流れをくむピアニストたちから直接教えを受けた19世紀的ヴィルティオーゾの生き残り、知る人ぞ知る神秘のピアニストと言われる。バッハとシューベルトにその真髄を聴きたい。
11/8@東京文化会館小ホール
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1480/
アメリカを中心に世界的に活躍しているマリンバ奏者、名倉誠が70年台生まれの作曲家の委嘱3作品(1作は世界初演)、自身の編曲によるバッハ作品を演奏する。枕草子を題材とした、ヴィブラフォンと朗読とフルートによる作品など、意欲的な演目に期待したい。
11/9@東京文化会館小ホール
http://http://t-onkyo.co.jp/?ticket=名倉誠人マリンバ・リサイタル2017
♩11/9、11、12 NISSAY OPERA 2017 オペラ《ルサルカ》
ドヴォルザークのオペラ《ルサルカ》、指揮者に山田和樹をむかえ、宮城聰の演出による舞台、チェコ語での原語上演。山田の日本での二つ目のオペラ、その成果を期待したい。ヨーロッパの水の精伝説に基づく幻想的な物語を宮城がどのようにみせてくれるかも楽しみ。
11/9,11,12@日生劇場
http://www.nissaytheatre.or.jp/schedule/rusalka/
♩11/17 NHK交響楽団 プロコフィエフ:イワン雷帝(オラトリオ版)
プロコフィエフがセルゲイ・エイゼンシュテインの映画音楽として作曲したものを、彼の死後スタセヴィチがオラトリオに編曲したもの。合唱、語り手、独唱、オーケストラで、全20曲からなる。数々のいわくつきのこの作品をN響がどう演奏するのか聴きもの。
片岡愛之助の語りも楽しみの1つだ。
11/17@NHKホール
http://www.nhkso.or.jp/concert/concert_detail.php?id=691
第32回を迎えるオーケストラ・プロジェクト、今回のスローガンは「『響生』 ~生命の音、時空を超えて~」。初演新作4作を杉山洋一指揮、東京交響楽団で披露。石島正博、平井正志は独奏者を伴わない3管編成によるオーケストラ曲、国枝春恵、鈴木理恵子は邦楽器を核とした協奏曲で、その創作活動における新しいパラダイムを提言する。
11/17@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.orch-proj.net
♩11/17、18 日本フィルハーモニー交響楽団 第695回定期演奏会
フィンランド出身で日フィル首席指揮者ピエタリ・インキネンが、シベリウス以後最大の作曲家であり2016年死去した自国の巨匠ラウタヴァーラの遺作「In the Beginning」をアジア初演する。一方、日フィルとのブルックナーは、第7番、第8番と続いたが、今回は第5番を取り上げる。ラウタヴァーラの自然と“Old style”のブルックナーを堪能したい。
11/17,18@サントリーホール
http://www.japanphil.or.jp/concert/21732
♩11/19、23、26 メシアン 歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」
メシアン没後25周年記念企画として本邦全曲初演(演奏会形式)が行われることになった「アッシジ聖フランチェスコ」。20世紀後半を代表するオペラでありながらこれまで実現していなかった全曲初演である。指揮はメシアンのスペシャリストとして知られる読売交響楽団・常任指揮者のシルヴァン・カンブルラン。
関西ではびわ湖ホールが読響との共同主催で開催する。びわ湖では9月に音楽学者船山隆、10月にカルンブランを迎え、全2回の講座も開かれる。関西音楽界の中でも大きな話題となることは間違いない。
11/19,26@サントリーホール
http://yomikyo.or.jp/concert/2016/12/572.php
11/23@びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/2016/12/27/-25.html
♩11/20、21 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 来日公演
日本ではオペラの指揮で何度か来日しているものの、コンサート公演ではあまり馴染みがない指揮者ダニエレ・ガッディ。イタリア人らしいカンタービレは折り紙付きだが、コンセルトヘボウと共にどんな演奏を聴かせてくれるか、期待が高まる。東京公演はベートーヴェン、ブラームスとハイドン、マーラーの2夜。他に京都、川崎、長崎、大阪公演も。
11/20,21@サントリーホール
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=587/
今年の2月に来日してティル・フェルナーと『冬の旅』の名唱を聴かせてくれたマーク・パドモア、ポール・ルイスとのコンビで早くも11月に再来日。王子ホールでパドモア&ポール・ルイス、と言えば2014年12月に行われたシューベルトの3大歌曲集の絶唱が全く忘れ難い。今回2夜に渡って同ホールで開催されるコンサートはハイドンからヴォルフに至るドイツ・リートの流れを時代を追って概観して行くかのような多彩なプログラミング。取り上げられる作曲家は先述した2人の他にモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームス。この名コンビ及びドイツ・リートを愛するファンは絶対に聴き逃せぬ2夜だ。
11/22,24@王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2017/20171122-24.html
ドイツでは大晦日恒例の公演となっている作品。かつて、「ムジークテアター」を提唱した演出家ヴァルター・フェルゼンシュタインは、この作品をベルリン・コーミッシェ・オーパーのこけら落とし公演とした(1947年)。そのベルリン・コーミッシェ・オーパーとの提携公演で、演出のアンドレアス・ホモキがこの作品をどのように観せるか、期待したい。
11/22~26@日生劇場
http://www.nikikai.net/lineup/diefledermaus2017/index.html
生誕450年となるモンテヴェルディ、今年はさまざまな団体が彼の作品を取り上げてきた。その最後をかざるコンサートの一つ、鈴木優人の指揮するバッハ・コレギウム・ジャパンが、彼の最後のオペラ《ポッペアの戴冠》を上演する。内外のバロックをレパートリーとする歌手を集めたキャストで、モンテヴェルディの傑作の全貌を伝えてくれることだろう。
11/23@東京オペラシティ コンサートホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=573
11/25@神奈川県立音楽堂
http://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=34768
♩11/24 バルトルド・クイケン バロック・フルート ソロ・リサイタル
バルトルド・クイケン、十数年ぶりの貴重なソロ・リサイタル。そして、2013年に閉館したイシハラホールが、新たなオーナーのもと、本格的な活動を再開する。その第一歩となる公演として注目したい。プログラムも変化に富み、作曲された当時の楽器のコピー3種を使い分けての演奏。演奏者による曲目解説のプレトークあり。
11/24@イシハラホール
https://www.facebook.com/events/233920283776698/
< Virtuosity 〜バロックから近代まで>と銘打った岡田博美のリサイタル。バッハ、ベートーヴェンのほか、リストの超絶技巧もあるが、目を惹くのは S・リャプノフ「レスギンカ」、A・マラフスキー「ミニアチュア」。定評ある岡田の怜悧なピアニズム、洗練のプログラムでVirtuosityのなんたるかを目撃しよう。
11/25@文化会館小ホール
http://www.camerata.co.jp/concerts_events/detail.php?id=222
スイスのチューリヒ出身、ウィーン国立歌劇場の音楽監督(2020年より)に指名されたフィリップ・ジョルダン率いるウィーン交響楽団。ジョルダンは現在ウィーン響と、ベートーヴェン交響曲全曲演奏を実施中のほか、バイロイトやメットなどへも登壇、“指揮界の貴公子”として国際的な活躍を見せている。ベートーヴェン「運命」とマーラー「巨人」にその実力のほどを味わいたい。
11/26@横浜みなとみらいホール
http://www.yaf.or.jp/mmh/recommend/2017/11/post-246.php
♩11/27 関西弦楽四重奏団 ベートーヴェン弦楽四重奏曲 全曲ツィクルス 第1回
関西弦楽四重奏団は、関西ゆかりの演奏者で2014年に結成されたアンサンブル。活動暦は短いながらもすでに高い評価を受けている。その彼らが結成当初から活動の主軸として挙げていたベートーヴェンの弦楽四重奏曲、その全曲ツィクルスがいよいよ始まることになった。第1回となる本公演では、1番、10番、12番を取り上げる。
11/27@ザ・フェニックスホール
http://www.kojimacm.com/digest/171127/171127.html
♩11/28 サラ・ケイヒル ピアノ・リサイタル「植物文様を弾く」
透明感のある独特な音楽世界を構築している藤枝守の連作「植物文様」からピアノ作品を、アメリカの現代ピアニスト、サラ・ケイヒルが演奏する。全く飾り立てる所のない藤枝作品と繊細な響きのファツィオリ製ピアノとの相性は最適であろう。静謐で新しい出会いを待ち望みたい。
11/28@豊洲文化センター
https://www.musicachiara.com/blank-5
♩11/28 エリソ・ヴィルサラーゼ&アトリウム弦楽四重奏団
ロシアの名ピアニスト、ヴィルサラーゼはすみだトリフォニーのグレイト・ピアニスト・シリーズで協奏曲を3曲聴かせるが、こちらは室内楽。2000年、サンクトペテルブルクで学んだ4人が結成したアトリウム弦楽四重奏団は2007年ボルドー国際弦楽四重奏コンクール優勝の実力派。その気鋭の四重奏団との世界初共演で、モーツァルト、ショスタコーヴィチ、シューマン。なんともワクワクする一夜である。
11/28@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20171128k1900.html
♩11/29 新日本フィルハーモニー交響楽団 ♯581 ジェイド <サントリーホール・シリーズ>
デニス・ラッセル・デイヴィスが、軽妙洒脱なフランス6人組、戦間期の世相を反映したかのような悲愴なプーランク、悲劇と喜劇がないまぜになった複雑な感情のプロコフィエフという、それぞれ一筋縄ではいかない作品群に挑む。20世紀前半のモダニズムを21世紀の今をかえりみる貴重な演奏会となろう。
11/29@サントリーホール
https://www.njp.or.jp/archives/4761