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Back Stage|「新たな一歩を踏み出す。紀尾井ホール室内管弦楽団、始動。」|遠藤初音

「新たな一歩を踏み出す。紀尾井ホール室内管弦楽団、始動。」

text by 遠藤初音(Hatsune Endo)

紀尾井ホールのレジデントオーケストラ、紀尾井シンフォニエッタ東京は、2017年4月、紀尾井ホール室内管弦楽団と名前を改め首席指揮者にライナー・ホーネック氏を迎え、新たな一歩が始まります。

<紀尾井シンフォニエッタ東京の歩み>
1995年4月、紀尾井シンフォニエッタ東京は、紀尾井ホール開館と同時に発足しました。ホールの建設の当初からの、箱(ホール)に相応しい中身(演奏)を自分たちの手で創ろう、800席の規模に相応しい室内オーケストラを持とうという構想を実現させての結成です。
当時、BBCウェールズ交響楽団(イギリス)首席指揮者として活躍していた尾高忠明氏(現桂冠名誉指揮者)を首席指揮者に迎え、メンバーについては尾高さんと相談しながら、大学を卒業したばかりの優れた若手演奏家一人一人に声をかけて集めました。今や日本のクラシック界を牽引するトッププレーヤーばかりです。

紀尾井シンフォニエッタ東京第89回定期演奏会 
©三好英輔

こうして始まった紀尾井シンフォニエッタ東京ですが、結成から7年目の2002年に最初の転機が訪れました。新日鉄文化財団(当初)の運営から独立し、NPO法人として活動することでオーケストラの運営そのものに楽団メンバーも参画できるように体制を変更したのです。定期演奏会のプログラムをどうするか、客演指揮者は誰にするか、ソリストは?チケットを売るには?といった運営面にも楽団メンバー自らが関与することで、「負担も増えたが、当事者としての意識が高まり、自分たちのオーケストラをよくしていこうという機運が生まれた」(楽団メンバーの言)という効果を生むことができました。
このように演奏面、運営面での新たな試みを続けながら紀尾井シンフォニエッタ東京は2015年に結成20周年を迎えました。105回を数える定期演奏会をはじめ、北海道や岩手、山形、大阪、愛知、北九州などの日本各地、ドレスデン、ニューヨーク、ボストン、ソウルなど海外でも演奏する機会に恵まれ、その名を世界にも届けることができたと自負しています。
20周年を迎え、今後は演奏の質にさらに磨きをかけて、世界的な室内オーケストラを目指していくため、再び形を変え飛躍していこうと私たちは決断しました。

紀尾井ホール室内管弦楽団ロゴ

紀尾井ホール室内管弦楽団ロゴ

<さらなる高みを目指して。首席指揮者にライナー・ホーネック氏を迎えて>
まず、新たな楽団名は「紀尾井ホール室内管弦楽団」ですが、その名に「紀尾井ホール」を冠したのには理由があります。室内オーケストラの演奏に理想的で、「室内楽の殿堂」としてすでに名高く、場所そのものが大きな求心力をもった「紀尾井ホール」。ここを本拠として演奏活動している楽団であることを日本の内外に明確にお伝えしたいからです。
そして最も大きなポイントは、音楽的な求心力としてライナー・ホーネック氏(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター)を首席指揮者として迎えることです(任期3年間)。
かねてより楽団メンバーから「現状に満足したくない」「さらにレベルアップを目指したい」という声が上がっており、これは「音楽的に牽引する音楽監督的な方を迎えること」で叶えられるという共通認識を持っていました。そして、これまで紀尾井シンフォニエッタ東京と何度も共演し、お互いの信頼関係がすでに築かれていたライナー・ホーネック氏をこのたび首席指揮者として迎え、いよいよ新春から新たな音作りを開始します。

ライナー・ホーネック ©Kioi Hall,Tokyo

ライナー・ホーネック 
©Kioi Hall,Tokyo

ホーネック氏に話を伺うと「最初話があったときは、嬉しいと同時に躊躇した。プログラム、演奏、メンバーすべてに責任を持つことになるのだから。でも、紀尾井シンフォニエッタ東京とは何度も共演してよく知っている。だから今後をとても楽しみにしている!」と力強い答えが返ってきました。
結成時からのメンバーで楽団のリーダー的存在の河原泰則さん(コントラバス)は、紀尾井シンフォニエッタ東京として最後となった2016年6月の定期演奏会終了後に、楽団メンバーに向かってこう語りかけてくれました。
「ホーネックさんと3年間、一緒に演奏できる機会を得られたのは幸せなこと。だから彼から吸収できるものは全部吸収しつくして、室内オーケストラとしてより一層成長しよう。(ホーネック氏との共演でたびたび味わうことができた)魔法がかかったようなあの特別な瞬間・時間をまた生み出そう。」

2017年4月から、定期演奏会(年間5回、10公演)が始まります。ホーネック氏、楽団メンバーとアイデアを交換し合い、バラエティに富んだプログラムをご用意しています。音楽的な「求心力」ライナー・ホーネック氏の元に集い、新体制となった「紀尾井ホール室内管弦楽団」の新たな歩みにぜひご期待ください。

遠藤初音(紀尾井ホール 広報)
公演情報
2017年度 紀尾井ホール室内管弦楽団 定期演奏会(全5回)
第106回 4月21日(金)19時/22日(土)14時
第107回 6月30日(金)19時/7月1日(土)14時
第108回 9月22日(金)19時/23日(土)14時
第109回 11月24日(金)19時/25日(土)14時
第110回 2018年2月9日(金)19時/10日(土)14時
URL:http://www.kioi-hall.or.jp/kco