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佐藤祐介 ピアノ・リサイタル|佐伯ふみ

佐藤佐藤祐介 ピアノ・リサイタル
新ピアニスト宣言 Vol.4

2016年1月22日 サントリーホール ブルーローズ
Reviewed by 佐伯ふみ(Fumi Saeki)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
佐藤祐介(ピアノ)

<曲目>
パッヘルベル:『アポロンの六弦琴』より「アリアと変奏」第1番 ニ短調 T.211
鈴木治行:Hither And Thither for piano[委嘱新作/世界初演]
ドゥセク:ソナタ第24番 嬰ヘ短調「ルイ・フェルディナント王子の死に捧げる悲歌」Op.61
青柿将大:Stamping passacaglia – Anamorphosis II for piano[委嘱新作/世界初演]
ショパン:3つのマズルカ Op.56
北爪道夫:パラレル ピアノのための[委嘱新作/世界初演]

語るように、呟くように 自然体で時空を行き来

11歳で作曲を、12歳からピアノを始めたといい、15歳から早くも国内外のコンクールに挑戦、2012年、22歳で第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”にて優勝。金髪にスタイリッシュな出で立ちで、バロック音楽も現代音楽も分け隔てなく一夜のプログラムにのせ、違和感なく聴かせてしまう。このプログラムでサントリー小ホールの客席が埋まり、若い女性客も多い華やいだ雰囲気。なるほど<新・ピアニスト宣言>の名にふさわしい、型破りの異才である。

冒頭のパッヘルベルで佐藤の音楽の特色がすでによく現れていた。気負いなく、語るように、呟くように、さながら長い独白(モノローグ)のような。時に瞑想の方向に傾くこともあるが(ドゥセクの第1楽章など)、面白いのは、決して自分ひとりの内面に閉じこもるたちではなく、つねに対話が――聴き手との――感じられることである。人なつっこい。相手をうるさがらせたり不快にしないよう、繊細に配慮しながら、語りかけてくる。そんな音楽。

プログラムは「現代音楽」が3曲に「歴史的な」音楽が3曲、交互に配されている。17世紀末のパッヘルベル、19世紀初頭のドゥセク、19世紀半ばのショパン。パッヘルベルもドゥセクも曲そのものが面白く、佐藤とも肌の合いそうな音楽。一方、ショパンは少し異質。筆者にはすこし物足りなさが残った。一見あっさりとした曲想だが、一筋縄ではいかない、仄暗い激情が隠された音楽。その奥深い屈折と表出の激しさがもう少し……。

「現代もの」はすべて委嘱新作の世界初演である。いずれも作曲家の個性がよく表れていて、佐藤のピアノも肩肘はらず、あくまで自然体。
鈴木治行の作品は、途中から突然、耳になじんだ調性的・ロマンティックなフレーズ断片が頻出するようになるが、常に何かに遮られる。もどかしさよりも、調性フレーズがいかに陳腐か、一方でいかに美しいかを感じさせて、面白い。
青柿将大(あおがき・まさひろ)は藝大大学院修士課程在学中の若手。ダンパー・ペダルを踏んだ状態で足を踏みならす冒頭では、驚くほどピアノの共鳴音が大きく、新鮮な音響に胸が高鳴る。途中からプリペアドとなり、音楽の表情がさらりと変わる。工夫を凝らした、なかなかの才気を感じさせる作品だが、少し、長さを感じた。終わってふと、短く3つに区切った組曲にしたら締まるかも……などという考えが頭に浮かんだが、さて。
最後の北爪道夫の作品は、ベテランの風格を感じさせる、気宇壮大で、かっちりとした構成。聴きながら、ピアノの響きというのはなんと美しく雄弁なのだろうと感嘆する。この音楽は、自然体ではなく、少し「肩肘はる」必要のある音楽。佐藤もそれは心得ていて、ここでは彼のピアノも内面よりも外へと向かい、華麗な技巧を誇示するように締めくくっていた。

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