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注目の1枚 |ブラームス:ドイツ・レクイエム|藤原聡

4115081864ブラームス:ドイツ・レクイエム

text by 藤原聡 (Satoshi Fujiwara)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
指揮:マリス・ヤンソンス
ゲニア・キューマイアー(ソプラノ)
ジェラルド・フィンリー(バス)
オランダ放送合唱団(合唱指揮:ミヒャエル・グレーザー)

録音:2012年9月20日~21日、アムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴ
レーベル:RCO LIVE
商品番号:RCO15003
輸入盤オープン価格

 

ヤンソンスとコンセルトヘボウのブラームス『ドイツ・レクイエム』。この指揮者の初録音レパートリーで、意外にもコンセルトヘボウの同曲もほとんどない気がする。演奏は極上である。ヤンソンスという指揮者は、基本的にオーソドックスな造形の中に時に大胆な表情付けを行なったり独自のアレンジをも行なったりと、なかなか一筋縄では行かない指揮者である。前者のオーソドックスさが前面に出た場合には、基本的には抜群に耳が良くて「棒が振れる」指揮者であるだけに全く文句の付けようがない出来栄えにはなるのだけれど、それを超える「根源的な迫力」に欠ける恨みもあった。それがここではどうだ。オーソドックスさという点ではいつものヤンソンスではあるが、深い表情や心情のこもった歌、コクのある音色と言う点でただの「オーソドックス、優等生ヤンソンス」の域を超えている。第1曲<悲しんでいる人々は幸いである>での繊細なニュアンスの妙、この曲の音響的なクライマックスである第2曲<人はみな草のごとく>、第3曲<主よ、わが終りとわが日の数の>、そして第6曲<この地上に永遠の都はない>での表面的でない滋味のある迫力。作曲者の心情がすばらしく伝わって来る、という意味において『ドイツ・レクイエム』の録音中でも注目すべき名演と言っても過言ではないと思う。また声楽陣も極上で、キューマイアーの母性に満ちた清楚な歌唱、フィンリーの歌詞の意味をしっかりと噛み締めた深みある歌唱も屈指のもの。合唱は名門、オランダ放送合唱団なので悪いはずがない(合唱指揮にミヒャエル・グレーザーの名前がクレジット。ミュンヘン―バイエルン放送合唱団―から呼び寄せたのだろう)。この曲を愛する方はぜひ聴いてみて欲しい。