注目のコンサート|2019年12月
♩11/30,12/1 チャイコフスキー:《スペードの女王》
♩12/2 チャイコフスキー:《マゼッパ》
ワレリー・ゲルギエフ=マリインスキー歌劇場
「チャイコフスキー・フェスティヴァル2019」
マリインスキー歌劇場芸術総監督、首席指揮者であるワレリー・ゲルギエフが手兵を率いて来日、2つのオペラと歌劇場管弦楽団による4回のコンサートを行う。タイトルのとおり、すべてチャイコフスキーの作品によるもの。コンサートでは交響曲6曲、ピアノ協奏曲3曲、ヴァイオリン協奏曲、ロココの主題による変奏曲と主要なオーケストラのレパートリーを網羅する。オペラは《スペードの女王》を舞台上演、《マゼッパ》は演奏会形式で行われる。この歌劇場の主要なレパートリーを若手を中心としたキャストで楽しませてくれるだろう。とくに《マゼッパ》は上演される機会が少ない演目だけに聴きのがせない。
11/30,12/1@東京文化会館(スペードの女王)
12/2@サントリーホール(マゼッパ)
http://www.japanarts.co.jp/tf2019/opera/
♩12/1 北とぴあ国際音楽祭 ヘンデル 歌劇《リナルド》
(セミステージ形式・1711年版・字幕付)
北とぴあ国際音楽祭では、ほぼ毎年バロック期を中心としたオペラの演奏を続けてきている。今年はヘンデルの名作《リナルド》。寺神戸亮の指揮のもと、レ・ボレアードがオリジナル楽器を使用して演奏する。クリント・ファン・デア・リンデのリナルド、フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリのアルミレーナといった海外からの招聘組に、国内の古楽の歌い手が加わる布陣。セミ・ステージ形式の上演だが、舞台の前方、後方のスペースで演技を行うほか照明などの変化も加えられることだろう。演出は佐藤美晴。
11/29,12/1@北とぴあさくらホール
https://kitabunka.or.jp/event/3063/
♩12/1 藤沢市民オペラ ロッシーニ 歌劇《湖上の美人》
(演奏会形式・字幕付・日本初演)<藤沢市民オペラ2018-2020シーズン>
藤沢市では、2015年に芸術監督として指揮者園田隆一郎をむかえ、3年を1サイクルとするオペラ公演を行っている。藤沢市民オペラは1970年代から継続的に活動してきており、福永陽一郎、若杉弘といった指導者のもと、よく知られた作品だけでなく、ロッシーニ《ウィリアム・テル》、ワーグナー《リエンツィ》の日本初演を行っている。2019年は演奏会形式でロッシーニの《湖上の美人》を取り上げる。指揮は園田隆一郎、藤沢市民交響楽団、藤沢市合唱連盟の演奏。歌手の顔ぶれは、森谷真理、中島郁子、山本康寛、小堀勇介、妻屋秀和といった具合に伸び盛りの若手が中心とし、ベテランの実力者を配したもの。熱い歌の饗宴が聴けるだろう。このオペラも日本初演という。
12/1@藤沢市民会館
https://f-mirai.jp/archives/53104
♩12/2 コンテンポラリー・デュオ 村田厚生&中村和枝 vol.6
村田厚生(Tb.)と中村和枝(Pf.)による現代音楽ユニットのリサイタルも今回で6回目。現代音楽作品のレパートリーの確立を目指すというこのリサイタルシリーズ、今回のプログラムには旧ソ連の作曲家であるエディソン・デニソフ以外、存命の邦人作曲家の作品が並んでいる。委嘱新作初演は徳永崇、成本理香によるもので2作品。トロンボーンとピアノによる音響空間の探究に期待したい。
12/2@杉並公会堂小ホール
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=54042&
♩12/4 大村博美(ソプラノ) & アルベルト・ヴェロネージ(ピアノ)
世界各地のオペラハウスで活躍中の大村博美が、イタリアの指揮者・ピアニストのアルベルト・ヴェロネージとともに行うリサイタル。リストの《ペトラルカの3つのソネット》を中心に、トスティ、プッチーニ、デュパルク、アーン、R.シュトラウスと、イタリア語、フランス語、ドイツ語の歌曲を集めた多彩な構成。さらに得意なオペラから、《ファウスト》、《トスカ》、《アンドレア・シェニエ》のアリアを歌う。二期会のオペラ公演《蝶々夫人》で充実した歌を聴かせてくれたばかりだが、リサイタルではより細やかな音楽作りを見せてくれることだろう。
12/4@トッパンホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201912041900.html
新国立劇場、藤原歌劇団のオペラ公演の多くに出演し、高い評価を受けてきている砂川涼子、初めてのCDリリースを記念し、リサイタルを行う。《トゥーランドット》のリュー、《ラ・ボエーム》のミミ、《カルメン》のミカエラといった得意のアリアのほか、ヴィヴァルディのオペラやロッシーニの《ヴェネチアの競艇》、日本歌曲など多彩なプログラム。彼女のこれからの活動の方向性を示す可能性があるだろう。指揮者の園田隆一郎がピアノを担当するが、こちらの曲の表情付けの見事さにも注目。
12/5@紀尾井ホール
http://amati-tokyo.com/performance/20110510.html
♩12/5 Now may we syngyn 中世イギリスのキャロル
クリスマスに歌われるキャロル。その起源を辿っていくと中世にたどりつく。中世/ルネサンス音楽ユニットTrouBour(トルブール)の演奏は商業主義や雑念にまみれたクリスマスに愛想を尽かした人もきっと心に沁みるはず。
12/5@近江楽堂
https://tiget.net/events/62743
二十絃箏の可能性を追求し続けてきた吉村七重のコンサート、今回は5月の「KOTO COLLECTION TODAY」に続いて、三木稔と木下正道作品で工藤あかねとデュオを組む。佐藤聰明、中村ありす、久田典子というそれぞれ異なった個性の持ち主による二十絃箏独奏曲も魅力的だ。古今の別なき音楽の世界にひたりたい。
12/5@霞が関ナレッジスクエア
http://www.pluto.dti.ne.jp/~tomo9/nanae/concert.htm
♩12/6 井上道義&読売日本交響楽団 マーラー交響曲第3番
昨年10月の『千人の交響曲』に次いで、今年12月には同じく井上道義&読響コンビで交響曲第3番の演奏が実現。『千人~』においてはこの大所帯の何曲を見事に統制した井上の手腕が光ったが、今回もまた整然とした中にもこの指揮者らしい没入が聴かれるのではないか。大いに期待してよい。池田香織のアルトも聴きどころ。
12/6@東京芸術劇場
https://www.geigeki.jp/performance/concert188/
ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール 19歳で優勝、ミュンヘン国際音楽コンクール日本人初優勝、現在ベルリン芸術大学在学の大型新人の本格デビューである。トビュッシー、プーランク、ブラームスとフランスとドイツものを並べたプログラム。国、時代を超えた一つの音楽としての物語を、とのことだがそのストーリーテラーぶりが期待される。Pf薗田奈緒子。
12/6@紀尾井ホール
http://amati-tokyo.com/performance/20110509.html
♩12/6 日本フィルハーモニー交響楽団 第716回東京定期演奏会
今年3月に初登場のアレクサンダー・リープライヒ、今回はルトスワフスキとR.シュトラウスという近現代のプログラムでの登場。とりわけポーランド国立放送交響楽団芸術監督兼首席指揮者でもある彼が振るルストワフスキ『オーケストラのための書』に大いに期待したい。
12/6@サントリーホール
https://www.japanphil.or.jp/concert/23655
♩12/6 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 みなとみらいシリーズ 第354回
川瀬賢太郎による「変容」のプログラム。ツィマーマンの古今名曲をコラージュ、再創造した『ユビュ王の晩餐のための音楽』をメインに、前菜は引用先『ニュルンベルグのマイスタージンガー/第1幕への前奏曲』を鳴らし、後半はこちらも引用のストコフスキー編曲版『展覧会の絵』と凝ったもの。相当面白い「変容」が目撃できそう!
12/6,7@横浜みなとみらいホール
https://www.kanaphil.or.jp/concert/590/
♩12/6、7 Crossings ~ Tokyo × Seoul, Dance × Music
日韓の若手作曲家4名、それぞれの新作4作品が披露される。それらはすべて「ヴァイオリン、クラリネット、ピアノ、エレクトロノクス、そしてダンサーの為の」作品であるという。視覚と聴覚各々の情報が同一次元の素材として扱われる。若き才能による、表現媒体を乗り越えた自由な表現が堪能できるだろう。
12/6,7@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://www.crossings.jp/
♩12/7 小倉貴久子の「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」第40回
2012年3月からスタートした小倉貴久子の「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」、今回が最終回となる。この部屋に、モーツァルトと関わりのある作曲家等をひとりずつゲストとして迎え、モーツァルトとゲスト作曲家のクラヴィーアのソロ作品や、他の演奏家とともに室内楽、連弾、歌曲などをとりあげてきた。その最後、40回目のゲストは、来年生誕250年をむかえるL.v.ベートーヴェン。ピリオド楽器使用室内オーケストラの参加を得て、二人のクラヴィーア・コンチェルトを中心としたプログラムでこのシリーズのフィナーレを祝う。
12/7@第一生命ホール
https://www.mdf-ks.com/concerts/2019-12-7/
今や日本を代表するオペラ歌手の一人となった中村恵理が、出身地の兵庫県川西市で4年ぶりにソロ・リサイタルを行う。演目はもちろん、オペラ・アリアが中心で、牧村邦彦指揮、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団との共演だ。来年4月にはフィラデルフィア・オペラで《蝶々夫人》のタイトル・ロールを務めることも決まっているが、もちろん本リサイタルでも〈ある晴れた日に〉が歌われる。世界が認めるプリマドンナの有名アリアの数々を堪能できる絶好の機会となりそうだ。
12/7@川西市キセラホール
http://kisela-kp.jp/event/604/
アイスランド生まれの新鋭、オラフソンは超絶的な技巧を駆使するのみならず非常に独創性のある演奏で注目されてきたが、今年に入り数多くの賞を受賞。先日は英グラモフォンで「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」の栄誉を受けたばかりだ。今回の来日では、話題を集めたバッハではなく、ラモーとドビュッシーの他、ムソルグスキーの《展覧会の絵》を取り上げる。新たな世界で彼の才気がどのように煥発するのか、ぜひ聴いておきたい。
12/7@ザ・フェニックスホール
https://phoenixhall.jp/performance/2019/12/07/11641/
また大阪の他、下記の都市でも開催予定。
12/4(東京)紀尾井ホール
12/6(名古屋)電気文化会館
12/13 (札幌)札幌コンサートホールkitara小ホール
https://avex.jp/classics/vikingur2019/
♩12/9 東京シンフォニエッタ第46回定期演奏会 現代の感性――邦人作曲家の国際性
「邦人作曲家の国際性」という副題の付された今回の定期演奏会。鍵を握るのは、邦人作曲家により審査される入野賞を受賞したマリソル・ヒメネスだろうか。これに対し、薮田、稲森、新実の作品は、どのような国際性をもつものとして聞こえてくるだろう。また、稲森、新実、ヒメネスの作品はすでにラジオで放送されているという。スタジオ収録と今回の舞台初演とでどのような違いがでるか、ぜひ会場に足を運んで聴いてみたい。
12/9@トッパンホール
http://www.tokyo-concerts.co.jp/concerts/20191209/
♩12/9 ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ 2019年来日公演
実力派、日下紗矢子がコンサートマスターを務めるベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ。指揮者なし、バロックから現代まで多彩な編成での攻めのプログラムが魅力だが、今回の目玉はグリーグと「弦楽四重奏曲 弦楽合奏版/日下紗矢子編」だろう。ソロイスティックかつダイナミックなアンサンブルで北欧世界を広げてくれよう。
12/9@東京文化会館小ホール
https://www.melosarts.jp/melos-arts/concert/KonzerthausKammerorchester2019
その他の公演
12/6@フィリアホール
12/08@福岡/宗像ユリックス ハーモニーホール
12/14@兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
12/15@群馬/昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)大ホール
♩12/11 大石将紀 サクソフォンx邦楽器x現代音楽プロジェクト#2
現代音楽界、現代サクソフォン界に新たな風を吹かせている大石将紀のサクソフォンx邦楽器x現代音楽プロジェクト第2弾は和太鼓と箏とのトリオ。大御所池辺晋一郎、充実の杉山洋一に加え小出稚子やジュリアン・マロセナ(1980年生)といった中堅・若手に委嘱をする挑戦心。なんと入野義朗の1969年のサクソフォンと箏のための作品まであるという。これは是非とも聴きたい。
12/11@品川区立五反田文化センター音楽ホール
http://okamura-co.com/concerts/oishipjt2/
2012年第8回ソウル国際音楽コンクール日本人初優勝、若手アンサンブルでその姿をよく見かけ、その豊かな音楽性が注目され、今後の伸びしろが期待される毛利文香。これ見よがしのないセンスある演奏が魅力の一つで、ドビュッシー、メシアン、フォーレとフランスものを並べる。そのセンスの良さが味わえる1時間となろう。Pf原嶋唯。
12/11@Hakuju Hall
https://www.hakujuhall.jp/syusai/209.html
いずみホールが3年にわたって展開するプロジェクト、「古楽最前線!躍動するバロック2019」の第3回は、フランス宮廷の舞踊と歌劇がテーマ。2部で構成され、前半はリュリの舞踊音楽とバロックダンス、後半はラモーのオペラ・バレ《ピグマリオン》と、フランス・バロック期の二大作曲家の舞踊音楽を堪能するもの。これだけでも滅多に見られない貴重な演目だが、実はそれだけではない。《ピグマリオン》ではコンテンポラリーダンスも加わり、古典と現代舞踊の共演を試みる。新たな生命を与えられて現代に蘇るバロックの華。見逃すわけにはいくまい。
12/14@いずみホール
http://www.izumihall.jp/schedule/concert.html?cid=1852
今夏のリコーダー音楽祭で息の合ったリコーダーを聴かせたラニエレ・ブラジェッティと田中せい子に彼らの師匠ブッケとハウヴェを加えた四重奏団。リコーダーってバロックの曲をやるんでしょ?などという先入観を吹き飛ばす桁外れのプログラム構成。リコーダーを聴いたことのない人も、これは聴くしかない。
12/15@東京文化会館小ホール
https://amarone-arts.com/post-48/
♩12/16 東京都交響楽団第894回 定期演奏会Bシリーズ
第5番、『巨人』に続くアラン・ギルバート&都響のマーラーは第6番『悲劇的』。大胆なドライヴによる濃厚な表情を湛えた第5番でアランは都響のポテンシャルを最大限に引き出し稀有な名演奏を聴かせ、そして『巨人』ではクービク新校訂版のスコアを用いていかにも清新な演奏を展開。この2曲で大きな達成を果たしたアラン&都響であるから、第6番も期待するなと言う方が無理であろう。
12/16@サントリーホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3252&my=2019&mm=12
♩12/18 東京現音計画#13プロデューサーズセレクション1:国塩哲紀
現代音楽の精鋭集団、東京現音計画が今回組んだプロデューサー:国塩哲紀の選曲はズバリ「吹奏楽曲で知られる作曲家の室内楽曲」である。ブライアント、ドアティ、中橋、フサ、「吹奏楽界」ではメジャーであっても「現代音楽界」ではマイナーなのがこの業界(?)の不思議なところだが、だからこそこの出会いを喜びたい。ライリーと平石博一というミニマル・ミュージックの本流の新版・新曲も楽しみである。
12/18@ヤマハ銀座スタジオ
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=54920
Hakujuサロン・コンサートvol.4に登場の「アンサンブル天下統一」はオケに室内楽に多彩な活動を繰り広げている弦3人、長原幸太vn、鈴木康浩va、中木健二vcが2014年結成のトリオ。中木の出身が徳川ゆかりの地、加えて岡崎シビックセンターのレジデントアンサンブルゆえの命名とか。オペラの魅力を弦トリオで、とは大胆、ビゼー「カルメン」モーツァルト「魔笛」の編曲版などでいざ勝負!
12/19@Hakuju Hall
https://www.hakujuhall.jp/syusai/210.html
♩12/28 ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 ベートーヴェン第9
言うまでもなく12月は多くの「第9」が演奏されるけれども、その中でも最高の注目度と期待度のコンサートがこのノットと東響のものだろう。プログラミングから実際の演奏から、彼らは決してルーティンに陥らない。その都度新たな刺激=発見が見出せるのだ。この「第9」においても間違いなく「目から鱗」の演奏を披露してくれよう。
12/28@サントリーホール
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=3MTxoOj%2BEz4%3D