注目のコンサート|2019年11月
スコットランド生まれのオズボーン、個々のリサイタルのコンセプトの明確さが魅力の一つだの実力派が、今回はベートーヴェンの最後のピアノソナタ3作、第30番、第31番 、第32番 を聴かせる。古典からロマンへ、そして現代すらも見通せるこの作曲家独自の世界を彼ならではの視点で提示してくれることだろう。
11/1@トッパンホール
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1988/
♩11/1 ベルリン-東京 実験音楽ミーティング ビリアナ・ヴチコヴァ ヴァイオリンリサイタル
1988年に「明治ブルガリアヨーグルト」のTVCMに登場したのが日本デビューというビリアナ・ヴチコヴァ。しかしそのようなイメージとは程遠い、前衛・実験・ノイズ音楽の最先端を並べた実に切っ先鋭いリサイタルをひらく。今年の芥川也寸志作曲賞にノミネートされたのも記憶に新しい鈴木治行をはじめ、世界の鬼才揃いの作品群に彼女がどう挑むのか、見もの聴きものである。
11/1@ゲーテ・インスティトゥート東京ホール
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=54285
なお、10月31日から11月3日まで、ベルリン-東京 実験音楽ミーティングと題して、本コンサートの他に3つの即興演奏コンサート、2つのワークショップが開催される。
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/sta/tok/ver.cfm?fuseaction=events.detail&event_id=21648741&_fsi=14XCvd1j
秋のテッセラ「新しい耳」は第1夜大萩康司 <風の道>で小出稚子、金子仁美、A.アッセルボーン、角田隆太、平野一郎ら新旧作取り混ぜのプログラム。第2夜伊左治直個展<黒白城の宴>(高橋悠治、廻由美子、大坪純平、伊左治直)、第3夜高橋悠治の耳vol.12<ぼくは12歳>(波多野睦美、高橋悠治)&近藤譲作品が並ぶ。現代音楽はちょっと、など言わず、ゆるっと耳を拓いてみれば?
11/1~3@サロン・テッセラ
https://www.atarashii-mimi.com
♩11/2 模倣か独創か:パーセルとイタリアのマエストロたちのトリオ・ソナタ
17世紀ロンドンで活躍したパーセル、それがイタリアとどう関係が?彼のある出版譜の序文には「著名なイタリアのマエストロたちの全くの模倣を忠実に目指した」とある。これは本当に全くの模倣なのか?それとも独創性を持つものなのか?それを見極めに行きませんか?
11/2@近江楽堂
https://www.facebook.com/events/517857365690037/
読響ソロ・コントラバス奏者の石川滋、地道なソロリサイタルでの活動も長い。圧倒的に数の少ないこの楽器のための隠れた名品のほか、作曲家加藤昌則への委嘱新作も並ぶ気合の入ったプログラム。この楽器特有の奥深い世界、響きとメロディの深さをじっくり堪能できるに違いない。
11/2@ Hakuju Hall
http://www.concert.co.jp/concert/detail/2022/
今年で3回目の開催となる自由が丘クラシック音楽祭。今年のテーマは「退廃音楽」。第2次大戦中に強制収容所で命を落とした作曲家の作品、あるいはまた亡命した作曲家の作品を扱う。特に1日目に演奏機会の稀なものが披露される模様。サロンコンサートならではの親密な空間で、貴重な体験が得られそうだ。
11/2,3@ACTサロンentracte
https://www.jiyugaoka-cmf.com/
2度目の来日となるジャン・ロンドー。今回唯一のフランス・バロックプログラムがこの回。ラモー、フランソワ・クープランといったフランス・バロックとしては王道の作曲家が並ぶが、イタリア・バロックやバッハとどこがどう違うのか、私の耳が試されるとき。
11/3日@東京文化会館小ホール
http://www.allegromusic.co.jp/JeanRondeau2019.html
♩11/7 イエルーン・ベルワルツ∞坂田直樹with 横浜シンフォニエッタ
<Baroque to the Future >と銘打ち、バロックから現代・ジャズまでをレパートリーとするトランペット奏者ベルワルツと武満作曲賞、芥川作曲賞など受賞の気鋭パリ在住の坂田直樹が世界初演曲を披露する。テレマンからヒンデミットなど、多彩な響きが過去と未来をどのように描き出すか、期待したい。
11/7@王子ホール
http://okamura-co.com/concerts/btf2019/
大正から昭和初期にかけて、宝塚交響楽団の指揮者として活躍したヨーゼフ・ラスカの偉業に注目した興味深い演奏会が開かれる。ブルックナーと同郷のラスカはその作品の日本初演を行った事でも知られるが、今回はラスカ自身の作品の他、日本の女性音楽家の先駆けともなった幸田延の《ヴァイオリン・ソナタ》などを演奏。100年前の日本で西洋音楽がどのように聞かれたのか、この機会にぜひ耳を傾けたい。
11/7@ 宝塚ベガ・ホール
http://office-vega.net/event/20191107laska/
なお、本公演は下記においても開催される。
11/2@宗次ホール(名古屋)
11/5@王子ホール(東京)
♩11/9 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第329回定期演奏会
ヴォーン・ウィリアムズもプロコフィエフも良いが、なんと言っても「ラドン」のテーマも重要な部分で登場する、伊福部昭の傑作・舞踊曲『サロメ』に俄然注目せざるべからず。録音も複数あるが、山田一雄・新星日本交響楽団を除くと今一つの感は拭えない。藤岡幸夫が歴史に新しい一歩を残すかどうか、その歴史の目撃者となりたい。
11/9@東京オペラシティコンサートホール
https://www.cityphil.jp/concert/detail.php?id=92&y=2019&m=11
♩11/9,10 サー・アンドラーシュ・シフ&カペラ・アンドレア・バルカ ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全曲演奏会
昨年、シューベルトのピアノ・ソナタで人々を魅了したサー・アンドラーシュ・シフが仲間を率いて再び帰ってくる。「カペラ・アンドレア・バルカ」は世界中で活躍する音楽家がシフの呼びかけのもとに集まった室内オーケストラ。シフは彼らとともにベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を弾き振りする。シューベルトのほかベートーヴェンにおいても高い評価を得てきたシフだけに、これまで共に音楽を作り上げてきた仲間とのコンチェルト全曲演奏とあれば見逃すことはできない。また、9日はシフ自身によるアフター・トークもあるとのこと。
11/9,10@いずみホール
http://www.izumihall.jp/schedule/concert.html?cid=1856
鈴木理恵子監督のビヨンド・ザ・ボーダー音楽祭、今年のEXTENDEDスペシャル・コンサートは<超える・交わる・聴こえてくる>。3部構成でバッハ、ベートーヴェンらドイツ古典・ロマン派の名曲のほか、第3部「時空を超えて」はホーメイから西村朗、池辺晋一郎、藤枝守などバラエティに富んだ作品が並ぶ。国境、時代、ジャンル横断の音楽とアートを楽しみたい。
11/10@横浜みなとみらいホール 小ホール
https://mmh.yafjp.org/mmh/recommend/2019/11/post-301.php
♩11/11 クリスティアン・ティーレマン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・フィルハーモニー・ウィーク・イン・ジャパン2019、日本では6年ぶりとなるティーレマンが登壇。中でも注目すべきプログラムはブルックナーの交響曲第8番だろう。2010年にもミュンヘン・フィルとの来日公演で同曲を演奏しているティーレマンだが、いささか作為的な表情が目立ったその際の演奏に比べてより自然で、かつ深い呼吸に満ちた雄大な演奏が期待できるのではないか。
11/11@サントリーホール
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20191111_M_3.html
♩11/11,16 東京都交響楽団第890回定期演奏会Aシリーズ、第891回定期演奏会Cシリーズ
インバルが都響でショスタコーヴィチの大作に挑む。「弾き語られる<革命>、刻まれる永遠の記憶。」と題した定期演奏会AシリーズとCシリーズでは、それぞれショスタコーヴィチが血の日曜日事件を題材とした交響曲第11番《1905年》とロシア革命を題材とした第12番《1917年》が演奏される。この2作品は標題の内容にとどまらず、全楽章がアタッカで続くことや循環主題の使用、ロシア革命歌の引用など、様式的にも非常に類似している。この2つの交響曲を同時期の演奏会で取り上げるのは非常に興味深い試みだが、両作品から全く異なる固有の世界を描くことができるかが両公演の注目ポイントであろう。
11/11@東京文化会館
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3246
11/16@東京芸術劇場 コンサートホール
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3247
♩11/15、17 ベルカントオペラフェスティバル イン ジャパン 2019 A.スカルラッティ《貞節の勝利》
昨年から始まった、藤原歌劇団とヴァッレ・ディトリア(マルティーナ・フランカ)音楽祭 提携公演、ベルカントオペラフェスティバル、今年は公演を2回に増やして行われる。曲は、A.スカルラッティの《貞節の勝利》。ヴァッレ・ディトリアで2018年の上演されたときのメンバーと藤原歌劇団の歌手との共演。ジャコモ・フェッラウ&リーベロ・ステッルーティは2018年の上演の際の演出を担当。指揮のアントニオ・グレーコはヴァッレ・ディトリアでの指揮経験がある。1950年の古い録音しかないこのオペラを舞台で見ることができる機会は貴重だ。
11/15,17@テアトロ・ジーリオ・ショウワ
https://www.jof.or.jp/performance/nrml/1911_BOF_Trionfo.html
邦楽器(黒田鈴尊の尺八)と電子音響を組み合わせたユニット「1÷0」とアニメーション作家とヴァイオリン、ハープ、テイバー&パイプリコーダーのユニット「弾丸」がタッグを組んで古今東西の楽器と技術による最先端の視聴覚体験を実現すべく挑む。美しい風景を「まるでCGのようだ」などと言うこともある現代において最先端をどう切り拓くのか。期待したい。
11/17@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://tocon-lab.com/event/20191117
♩11/19 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
当初はダニエーレ・ガッティとの来日公演を予定していたコンセルトヘボウ管だが、ガッティは降板、代わってパーヴォ・ヤルヴィが帯同。言うまでもなくパーヴォの指揮は日本(殊に東京)の聴衆には既に馴染み深いが、コンセルトヘボウとの組み合わせ、となると日本ではそう聴けるものではあるまい(これが最初で最後になるかも知れない)。特にショスタコーヴィチの第10交響曲は聴き逃せまい。
11/19@サントリーホール
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20191119_M_3.html
コメント:小泉和裕が音楽監督に就任してから5シーズン目を迎えた名フィル。今回の東京公演では多くのクラシックファンに愛される名曲が披露される。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のソリストを務めるのは2016年にグラミー賞“最優秀クラシック・インストゥルメンタル・ソロ賞”を受賞したオーガスティン・ハーデリッヒ。歿後150年のベルリオーズの「幻想」にも熱演を期待したい。
11/19@東京オペラシティコンサートホール
https://www.nagoya-phil.or.jp/2019/0107105505.html
♩11/21,22 ズービン・メータ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
メータに率いられてベルリン・フィル2年ぶりの来日(新音楽監督のペトレンコとはいつ来るのだろうか、という思いは残るが)。メータ、と言えば昨年のバイエルン放送響との来日公演でとみに深みを増したその音楽に感銘を受けた方も多かろう。今回の来日でまず注目すべきはブルックナーの交響曲第8番。同じく同月来日のウィーン・フィルもティーレマンの指揮で同曲を取り上げる。微に入り細を穿つティーレマンか、滋味と包容力に富むメータか。どちらが上、というものでは当然ないが、両方聴いて比較したくなるのが人情。
11/21,22@サントリーホール
https://www.fujitv.co.jp/events/berlin-phil/index.html
♩11/21~24 東京二期会オペラ劇場、NISSAY OPERA 2019提携
オッフェンバック オペレッタ《天国と地獄(地獄のオルフェ)》
ジャック・オッフェンバック生誕200年の記念の年、東京二期会では《天国と地獄(地獄のオルフェ)》をとりあげる。指揮が大植英次、演出が鵜山 仁という体制、日本語上演。日生劇場の規模はこういったオペレッタには最適だろう。フレンチ・カンカンは知っているという聴衆も多いだろうが、その他の部分もオッフェンバックの天才が分かる作品。音楽面だけでなく、笑いのとれる公演を期待したい。
11/21~24@日生劇場
http://www.nikikai.net/lineup/orphee2019/index.html
♩11/23 東京交響楽団東京オペラシティシリーズ第112回 指揮:ジョナサン・ノット
リゲティのディアトニックな流線が美しい『メロディーエン』に始まり、R.シュトラウスの「まるでモーツァルトのような」新古典主義のオーボエ協奏曲、そして最後はモーツァルトの古典主義を越えた巨大な『ジュピター』、という、全く考えたことがなかったが、たしかにこれらは繋がりうる、とわかる選曲をまたノットが組んでくれた。音楽という時間芸術における「色彩」の魅力を堪能したい。
11/23@東京オペラシティコンサートホール
http://tokyosymphony.jp/pc/concerts/detail?p_id=CNKgciqUXIk%3D&month=11
勤労感謝の日に開催されるとあり、このコンサートでは安達が選曲したヴィオラの「癒し」の名曲が演奏されるとのこと。とはいえそれは、通常のリラクゼーションの枠に収まるような作品ではなさそうだ。ヴィオラのあたたかい音色に包まれて、様々な思いに浸るひとときを過ごしたい。
11/23@美竹清花さろん
https://mitakesayaka.com/events/11-23-18-00.html
コントラバスとヴィブラフォン…これはジャズか?いや、現代音楽のライヴである。水野修孝から會田瑞樹の自作自演まで世界初演が並んだ(末吉保雄のみ故人)プログラムから聴こえるのは、尖って刺さるよりは軽やかに滑らかにころがる音楽。いや、しかしこの2人のライヴで予想の範囲内ということがありえるだろうか?楽しみなこと極まりない。
11/24@公園通りクラシックス
https://sw-ke.facebook.com/events/公園通りクラシックス/佐藤洋嗣コントラバス會田瑞樹ヴィブラフォンduolive2019/322673278651293/
♩11/26 クリスティーナ・ランツハマー ソプラノ・リサイタル
ミュンヘン生まれ、42歳のソプラノ、今回が日本での初リサイタルとなる。ピアノはゲロルド・フーバー。曲目は、パーセル(ブリテン編曲)、コープランドの《エミリ・ディキンスンの12の詩による歌曲集》から8つの歌曲、ドイツ・バロックの作曲家J.P.クリーガーの歌劇からのアリア、シューマンの《リーダークライス op.39》と幅広いもの。歌曲の録音が多いランツハマーの本領を知る機会となるだろう。
11/26@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20191126k1900.html
新即物主義の影響を多分に受けているヤノフスキの芸風は放送オケに合う。ケルン放送交響楽団(現在はケルンWDR交響楽団が名称だが、ケルン放送交響楽団の方が通りがよいので来日公演では敢えて後者にしているのだろう)とのベートーヴェンでは一切の妥協なくオケを辛口に締め上げるヤノフスキの辣腕ぶりがとことん堪能できるのではないか。
11/26@サントリーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=759
♩11/27 ジャン=ギアン・ケラス&アレクサンドル・タロー
美音・超絶技巧で鳴らす名手2人のブラームス。既にブラームスのチェロ・ソナタを録音しているこのコンビだが、その演奏はいわゆるドイツ的な重厚さとは無縁ながら、ブラームスの勘所をしっかりと押さえた素晴らしいものとなっていた。実演での丁々発止の掛け合いに期待。
11/27@王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2019/20191127.html
♩11/27 三浦文彰 モーツァルト:バイオリン・ソナタプロジェクト Vol.1
ハノーファー国際コンクールで史上最年少16歳での優勝以来、引く手数多の活躍を続ける俊英三浦文彰vnがヤマハホール<珠玉のリサイタル&室内楽>に登場、「モーツァルト:バイオリン・ソナタプロジェクト」を開始する。今回はそのvol.1。選ばれたのは第18番、第17番、第25番、第32番。引っ張りだこのステージで多面性を見せる三浦だが、正面からモーツァルトと対峙でどんな「今」を聴かせるか。Pfは三浦舞夏。
11/27@ヤマハホール
https://www.yamahaginza.com/hall/event/003940/
♩11/28 サントリーホール作曲家の個展II 細川俊夫&望月京
2人の作曲家による「作曲家の個展II」も今年で第4回。音楽の深奥へと向かっている細川俊夫と、今まさに作曲家としての完成形を成しつつある望月京が選ばれた。2人の音楽に共通するのは1音1音ごとに張り詰める空気、そしてそれが連なりコンポジションされることによって時空間が変容していくことである。しかして性格の全く異なる2人の音楽がホールにどのように響くのかとくと傾聴したい。
11/28@サントリーホール
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20191128_M_3.html
♩11/29 読売日本交響楽団第593回定期演奏会 指揮トマシュ・ネトピル&読響
フルシャと並ぶチェコの若手(中堅?)指揮者として活躍中のトマシュ・ネトピル。寡聞にして来日歴は存じ上げぬが、少なくとも読響には初客演。いきなりスークのアスラエル交響曲という難物(傑作!)を持って来てチェコの指揮者としての矜持を示す。前半はリゲティの無伴奏チェロ・ソナタ→同じくリゲティのチェロ協奏曲という挑発的なプログラム、チェロはケラス。これも楽しみ。
11/29@サントリーホール
https://yomikyo.or.jp/concert/2019/08/593-1.php