Back Stage|開館25周年―心震える瞬間をお客様と共有したい|高井はるか
開館25周年―心震える瞬間をお客様と共有したい
text by 高井はるか (Haruka Takai)
「彩の国さいたま芸術劇場」といえば、みなさまどんなイメージをお持ちでしょうか?
演劇やダンスのイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。当劇場には4つのホールがあり、その中でも音楽専門ホールである残響豊かな604席の「音楽ホール」は、リサイタルや室内楽にぴったり。これまで多くの著名な演奏家をお招きし、その響きについても評価をいただいて参りました。
2019年、当劇場は開館25周年を迎えます。初代芸術監督の故・諸井誠氏が音楽事業の礎を築き、「ピアニスト100」(後半50人は故・中村紘子氏が監修)やいまや世界的に活躍するバッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明さん、ピアニスト仲道郁代さんとの「ベートーヴェン・シリーズ」など、多くの国内アーティストとの協働による企画を開催してきました。
現在、「ピアニスト100」の後継事業としての、「ピアノ・エトワール・シリーズ」は、13年目を迎え、「ピアノの彩の国」の名物企画に育ってきました。新進気鋭のピアニストをたくさんの方々にご紹介したい! という気持ちで素晴らしい才能との出会いを楽しみながら、出演いただきたいアーティストを長期的に考えています。
今年度は、オランダやドイツで旋風を巻き起こしているルーカス&アルトゥール・ユッセン兄弟(日本ではピリスの「スーパーピアノレッスン」に登場した天才兄弟としても有名かもしれません)とイタリアの才媛 ベアトリーチェ・ラナさんが出演します。ユッセン兄弟は、天性のずば抜けた音楽性が魅力、4手連弾と2台ピアノによるプログラムでその素晴らしさは遺憾なく発揮されると思います。ラナさんは、明るさを湛えた歌心と才気煥発のピアニズムで魅了することでしょう。
また、過去出演者の中からお客様の「また聴きたい!」というお声にお応えする「アンコール!」では、2014年に登場した萩原麻未さんに出演をお願いしました。萩原さんも音楽ホールの響きをとても気に入ってくださっています。ラテン作品をとりいれた舞曲プログラムということで、再登場にとても期待しています。
ピアノのほか、古楽にも力をいれています。
今年度はすでに終了しましたが、バッハ・コレギウム・ジャパン公演は諸井芸術監督の時代から開催しており、今年で20年。近年は毎回満席になるほど好評をいただいています。
また、秋にはオランダ・バッハ協会管弦楽団をお迎えします。昨年、大抜擢を受けて音楽監督に就任された佐藤俊介さんとは、以前「佐藤俊介の現在(いま)」という3年間のシリーズでご一緒しました。コンテンポラリー・ダンスとのコラボレーションや、時代様式に則ったドイツ・ロマン派の室内楽(シューマン夫妻とメンデルスゾーン姉弟)、20世紀のヴァイオリン、クラリネット、ピアノ編成の作品を採り上げるなど様々なプログラムを展開しました。類い希なる才能とたくさんのアイデアをお持ちで、本当に素晴らしい方です! 彼が率いるオランダ・バッハ協会の初来日ということで、ぜひとも当劇場に出演いただきたいと思いました。バロック音楽の親密な雰囲気を感じるにはとても丁度良いサイズのホールなので、ぜひ息づかいまで感じてほしいと思っています。
そのほか、劇場所有のポジティフ・オルガン(ガルニエ社製)を使用してのコンサートも定期的に開催しています。「大塚直哉レクチャー・コンサート」では、昨年に引き続き、音楽の旧約聖書ともいわれるJ. S. バッハ《平均律クラヴィーア曲集第1巻》をオルガンとチェンバロで聴き比べるというチャレンジングな企画を。また、地域の方々やコンサート会場に入れない小さなお子様に気軽に聴いていただける入場無料のコンサート「光の庭プロムナード・コンサート」は年に7~8回行なっており、劇場内のフリー・スペースでオルガンと多彩な楽器のアンサンブルをお楽しみいただけます。5月の「ばらまつりスペシャル」、12月の「トワイライト・スペシャル」など、地域の方と協働して行なうスペシャルな回もあります。昨年100回を超え、毎回200名以上のお客さまにご来場いただくことができ、定着してきていることにとても嬉しさを感じています。
彩の国さいたま芸術劇場では、音楽のほかダンス・演劇などの公演も多く開催しており、様々な芸術に出会うことの出来る場所です。ですから、お客様にはぜひ横断的に楽しんでいただきたいと考えています。
素晴らしいものに出会ったときの心震える体験を。
お客様とそんな瞬間を共有できるように願っています。
高井はるか (彩の国さいたま芸術劇場/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 事業部)
(2019/5/15)
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公演情報
<2019年度 ピアノ・エトワール・シリーズ>
https://www.saf.or.jp/arthall/information/detail/852
★アンコール! Vol.8 萩原麻未 ピアノ・リサイタル
2019年6月16日(日)15:00開演
ショパン:《ワルツ集》より
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ピアソラ:アディオス・ノニーノ
モンポウ:《歌と踊り》より
ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集
★Vol.37 ルーカス&アルトゥール・ユッセン デュオリサイタル
2019年11月17日(日)15:00開演
モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 KV 448(375a)
ファジル・サイ:夜(4手)
ラヴェル:ラ・ヴァルス(2台ピアノ) ほか
★Vol.38 ベアトリーチェ・ラナ ピアノ・リサイタル
2020年3月8日(日)15:00開演
J. S. バッハ:イタリア協奏曲 BWV 971
シューマン:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 作品14
アルベニス:組曲《イベリア》第3集
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3楽章
<佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団>
2019年10月5日(土)14:00開演
J. S. バッハ: 管弦楽組曲第1番 ハ長調 BWV 1066
ピゼンデル: ダンスの性格の模倣
J. S. バッハ: ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV 1042
J. S. バッハ: ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV 1050 ほか
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/6376