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東京・春・音楽祭  R.シュトラウス:《エレクトラ》op.58|藤堂清

東京・春・音楽祭 
R.シュトラウス:《エレクトラ》op.58(全1幕)(演奏会形式/字幕付)
Spring Festival in Tokyo 
R. Strauss: Elektra (Concert Style/With Subtitles) 

2024年4月18日 東京文化会館大ホール 
2024/4/18 Tokyo Bunka Kaikan Main Hall 
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh) 
Photos by 池上直哉/写真提供:東京・春・音楽祭2024 

<出演>        →foreign language
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
第1の侍女(メゾ・ソプラノ):中島郁子
第2の侍女(メゾ・ソプラノ):小泉詠子
第3の侍女(メゾ・ソプラノ):清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女(ソプラノ):竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女(ソプラノ):木下美穂子
侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者(バス・バリトン):加藤宏隆
若い従者(テノール):糸賀修平
召使:新国立劇場合唱団
 前川依子、岩本麻里
 小酒部晶子、野田千恵子
 立川かずさ、村山 舞
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平

 

東京・春・音楽祭、前日17日の《アイーダ》に続き、この日の《エレクトラ》も充実した公演。
こちらはオーケストラの前のスペースに歌手が立ち、少ないながら演技も付けるといった形での演奏会形式。ほとんどの歌手が暗譜で歌う。何故かルネ・パーペ一人だけは楽譜を見ながらの歌唱(彼はこの役、何度も舞台で歌っているのだが・・・)。
このオペラ、舞台上演は2005年3月の東京のオペラの森(東京・春・音楽祭の前身)でが最後だが、昨年5月に東京交響楽団が演奏会形式で公演(http://mercuredesarts.com/2023/06/14/richard-strauss-elektra-tohdoh/)を行っている。演技付きのものであったし、演奏も比較して聴くことになる。東京交響楽団の公演を「前者」と呼ばせていただこう。

幕開けの侍女たちの場面、実力のある日本の歌手を集めたキャスト、演奏の迫力も精度もなかなかなもの。ここのアンサンブル、合わせるのはむずかしいのだが、立派なもの。
《エレクトラ》はタイトルロールのエレクトラが出ずっぱりのオペラ、彼女を中心に展開していく。この日のエレクトラのエレーナ・パンクラトヴァ、東京交響楽団のときに歌ったクリスティーン・ガーキーのような圧倒的な声量はないが、咆哮するオーケストラにうまく乗って声を響かせる。その柔軟な歌唱や正確な音程はガーキーからは聴き得なかったもの。オーケストラの演奏(というかセバスティアン・ヴァイグレの指揮というべきか)が、前者のノットが常に煽り立てるように爆演を繰り広げたのに対し、必要なダイナミクスは保ちながらもメリハリを効かせたもので、パンクラトヴァの歌唱に合っていたといえる。
特に二重唱での相手により変化をつけた彼女の歌は、場面ごとに異なる表情を見事に描き出した。クリテムネストラがエレクトラの予知能力を頼り相談に訪れるが、エレクトラはクリテムネストラ自身を生贄にすることが問題解決の手段だと示唆する。ここでの藤村実穂子のしっかりとした声と言葉は、パンクラトヴァのそれとガッチリ組み合い、二人の対決を形作った。前者でのガーキーとハンナ・シュヴァルツの二重唱が声の大きさのバランスが悪かったのに較べると、聴き応えがあった。藤村のパンクラトヴァをにらみつけるような演技には、演奏会形式を越え舞台上演を思わせるところがみえた。オレストのルネ・パーペとの二重唱では、パーペの深い声で語るような歌にベテランの味を感じる。彼の一言一言がドラマを形作る。クリソテミスのアリソン・オークスは立派な声、パンクラトヴァを圧するところもあった。クリソテミスという役柄としてはどうなのだろう。
歌手としては、ガーキーの一人舞台になった前者より、今回の高いレベルでそろった上演に魅力を感じる。

オーケストラに関しては今回の方が合奏上のあらは目立ったが、歌に合わせた柔軟な表情や繊細な響きは魅力的。大きな音ばかりがこのオペラの特徴ではないというヴァイグレの言葉が聞こえてくるようであった。読売日本交響楽団の実力は十分に感じられた。

《エレクトラ》という国内では演奏頻度の低いオペラ、二年続けて高いレベルの公演を楽しむことができた。

(2024/5/15)

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<Cast>
Conductor:Sebastian Weigle
Elektra(Soprano):Elena Pankratova
Klytämnestra(Mezzo-Soprano):Mihoko Fujimura
Chrysothemis(Soprano):Allison Oakes
Aegisth(Tenor):Stephan Rügamer
Orest(Bass):René Pape
First maid(Mezzo-Soprano):Ikuko Nakajima
Second maid(Mezzo-Soprano):Eiko Koizumi
Third maid(Mezzo-Soprano):Kasumi Shimizu
Fourth maid/Klytämnestra’s trainbearer(Soprano):Michiko Takeda
Fifth maid/Klytämnestra’s confidante(Soprano):Mihoko Kinoshita
Overseer(Soprano):Rumi Kitahara
Orest’s Guardian/Old Servant(Bass-baritone):Hirotaka Kato
Young Servant(Tenor):Shuhei Itoga
Servants:New National Theatre Chorus
 Yoriko Maekawa, Mari Iwamoto
 Akiko Osakabe, Chieko Noda
 Kazusa Tachikawa, Mai Murayama
Orchestra:Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
Chorus:New National Theatre Chorus
Chorus Master:Kyohei Tomihira