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4月の2公演短評|齋藤俊夫

♪電力音楽演奏会2024 「鳩の物語~心温まる電力音楽童話の夜」
♪音の始源(はじまり)を求めて 電子音楽の個展「松平頼曉」

♪電力音楽演奏会2024 「鳩の物語~心温まる電力音楽童話の夜」→曲目、演奏
2024年4月20日 水道橋Ftarri

木下作品、自らが改造人間「キ◯ガイバト」となりながらも偽の正義の戦士キカイダー01に立ち向かう鳩の誠一の物語がヘッポコな電子音とともに語られる。甚だしくバカバカしいのだが鳩の一家の家族愛と誠一の正義の心に謎の説得力があり最後のハッピーエンドで世の中捨てたものではないなという気持ちにさせてくれる。……これは間違った鑑賞法ではないよな??
池田作品、可聴音量の弱さの限界に挑むかのような池田の撥弦楽器と木下の電子楽器、木下はチャンネルか何かを切り換える音の方が出力してる音よりはるかに大きく、筆者は木下は機械が故障したのを直そうとアレコレいじっているのかと最初は思ってしまった。多井だけ音量が大きめだがそれも途切れ途切れ。普段の電力音楽の轟音とは全く正反対の世界、悪くない体験であった。
多井作品、タクシーの運ちゃんと多井との会話という形式で映画サウンド・オブ・ミュージックで有名なトラップ一家と日本の歌手ペギー葉山との関係を語る講談。プログラムノートによると木下と池田の音楽は何らかの秩序に則っていたようだが筆者にはよくわからなかった。だがなんだか楽しかったので結果オーライ。
後半の集団即興は毎度荒ぶりまくる3人。一見テルミンのようで発音の構造が全く異なる池田のコンピューター電子楽器、足踏みミシンの回転装置にスピーカーを付けて高速回転させてのドップラー効果で情熱的かつ肉体的な花を添える多井、複雑極まりない機器の操作で電子音の連続的な音高構造にとどまらず、非連続的な音階(に聴こえる)を奏でて即興全体の音場を形成する木下、と、「ある程度までの偶然性・非恣意性と、ある程度までの予想可能・恣意性を兼ね備えた即興」といういつものラディカルな音楽に迷い無し。
外国人の男女の客がいたが、2人とも集団即興では耳をふさいで聴いていた。筆者もいつも耳栓を付けて聴いているのだが、外国からの人にはこの日本のアンダーグラウンドかつ先端的な音楽がどう聴こえたのか興味深い。良い日本土産になったなら筆者としてもとても嬉しい。

♪音の始源(はじまり)を求めて 電子音楽の個展「松平頼曉」→曲目、演奏
2024年4月27日 Artware hub KAKEHASHI MEMORIAL

音色・音響・作品の構造(コンポジション)が松平ならではの論理的カオスに則った4作品を最高の音響設備で聴く贅沢極まりない会。筆者が読んだカント『プロレゴメナ』(『純粋理性批判』は未読)に含まれるテーゼとして、「人間は完全にランダムな、秩序・法則を持たない世界には生きられず、人間の方から世界に秩序・法則を当てはめて生きることを得ている」というのがある(と筆者は読んだ)。松平頼暁の論理的カオスの音楽に当たる度に筆者が感受する刺激・快感は、彼の音楽のカオスによってこちらの世界の秩序が一度崩壊させられて、その後聴き続けることによって世界の秩序を脳が回復するという崩壊・回復のプロセスゆえなのではないだろうか。全く先が読めないのだが、音が耳に届き続けると音の縦横が構築されていくのを感じる。松平の、大規模な管弦楽曲でも通用するような構築主義的側面を今回筆者は聴き取ったが、これは妥当であろうか? ハマるとクセになる松平頼暁作品を筆者のように快楽的に聴くのも妥当であろうか? 実際楽しいのだから間違いではない!と思いたいが……。

(2024/5/15)

♪電力音楽演奏会2024 「鳩の物語~心温まる電力音楽童話の夜」

<曲目・演奏>
木下正道:『鳩の誠一の物語』
  童話執筆、朗読:木下正道
  エレクトロニクス:池田拓実、多井智紀
池田拓実『240308』
  エレクトロニクス:木下正道
  自作エレクトロニクス:多井智紀
  エレクトリック・ギター(増幅なし):池田拓実
多井智紀:『《ドレミ》についての発見 discovery about “Do-Re-Mi”』
  講談:多井智紀
  エレクトロニクス:木下正道、池田拓実
即興演奏
  エレクトロニクス:木下正道
  コンピュータ:池田拓実
  自作エレクトロニクス:多井智紀

♪音の始源(はじまり)を求めて 電子音楽の個展「松平頼曉」

<曲目>
(全て松平頼暁作曲)
『トランジェント’64』
テープのための『アッセンブリッジス』
EXPO’70 お祭り広場『おはようの音楽』 with Bulb Lighting by Takeshi Mukai
テープのための『アッセンブリッジス』 Concept by Hiroshi Siotani
(アンコール)『コンステレーション』