Menu

東京芸術劇場  オッフェンバック:《美しきエレーヌ》| 藤堂清

東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9 
オッフェンバック/喜歌劇《美しきエレーヌ》 
演奏会形式/全3幕/フランス語上演/日本語字幕付 
Tokyo Metropolitan Theatre Concert Opera vol.9 
Jacques Offenbach: La belle Hélène(in a concert style) 

2024年2月17日 東京芸術劇場コンサートホール 
2024/2/17 Tokyo Metropolitan Theatre Concert Hall 
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh) 
Photos by 三浦興一/写真提供:東京芸術劇場 

<スタッフ>         →Foreign Languages
指揮:辻 博之
台本・構成演出:佐藤美晴

<出演>
エレーヌ:砂川涼子
パリス:工藤和真
メネラオス:濱松孝行
アガメムノン:晴 雅彦
オレステス:藤木大地
カルカス:伊藤貴之
アキレ:岸野裕貴
アイアスI:反中洋介
アイアスII:堀越俊成
語り(日本語):土屋神葉

合唱:ザ・オペラ・クワイア
管弦楽:ザ・オペラ・バンド

 

なんと楽しいひとときだったことか。
音楽も、語りも、そして演技も。

オッフェンバックの喜歌劇《美しきエレーヌ》は、1864年12月17日にパリのヴァリエテ座で初演された。初演は大成功。パリだけでなく他の都市でも上演され、3カ月後の1865年3月17日にはウィーンのアン・デア・ウィーン劇場でドイツ語初演が行われている。今回の公演では、ジャン=クリストフ・ケックの批判校訂版のうち、ウィーン公演版が使用された。そのため、ウィーンのために新たに作曲された序曲、第3幕のエレーヌのアリア(ドイツ語歌唱)など、パリ初演版とは異なるナンバーが取り上げられた。
ストーリーは、『パリスの審判』でウェヌスに勝利を与えたパリスが、彼女の約束した「最も美しい女性」(=エレーヌ)を受け取りにきたところから始まる。エレーヌは愛のないメネラオスとの夫婦生活にうんざりしていたところで、パリスにひとめぼれ。ウェヌスの指令を受けた神官カルカスの差し金でメネラオスはクレタ島へ行くことに。夫の留守に二人は「夢の中で」甘い時間をすごすことに。しかし、そこにメネラオスが突然戻ってくる。皆に追い払われるパリス。計画がうまくいかなかったウェヌスは激怒、騒動を引き起こす。そこへ、ウェヌスの預言者が現れ、「エレーヌがシテール島へ巡礼すれば、ウェヌスの怒りは鎮まる」と告げる。その預言者がパリスであることが明かされ、二人は大喜びで出発する。

音楽と音楽の間は、ウェヌス(ヴィーナス)の息子エロス(=クピド)に扮した土屋が多彩な声色を使い、日本語の語りで見事につないでいった。歌手が語る必要がなく、ストーリーが分かりやすくまとめられていた。これは台本・構成演出の佐藤の手によるものだろう。
オペレッタの日本での上演、歌唱は原語、セリフは日本語という形態が多くなってきているが、歌手の語りに違和感を覚えることもある。今回のように語り役を設けてセリフを少なくする方法はよい方法ではないか。

歌手では、エレーヌを歌った砂川をまずあげたい。なめらかで柔らかな声がこの役にふさわしい。各幕に聴かせどころのアリアがある。第1幕の〈どうか愛をお与えください〉の真剣な思い、第2幕の貞操か愛かと悩みウェヌスへ訴えるアリア、第3幕の夢の中のことだから〈私は悪くない〉とメネラオスを突き放す歌。それぞれに表情たっぷりに歌われた。第2幕のパリスとの愛の二重唱も美しい。
パリスを歌った工藤の力強い声も聴きもの。第1幕で歌われる〈パリスの審判〉で自己紹介するが、その後も彼のモティーフとして使われる。
オレステスは通常はメゾ・ソプラノが歌うが、この日はカウンターテナーの藤木の登場。パンクなヘアスタイルで遊び人を表現。2曲のシャンソン、どちらもハチャメチャに弾けたもの、思わず体が動き出す。
第1幕後半の〈王たちのクープレ〉で、登場する王たちが自己紹介していくが、これが楽しい。メネラオスの「エレーヌの連れ合い」といった歌詞には、ニヤリとさせられる。
指揮の辻博之の弾みのある音楽作りはこの作品にふさわしいもの。合唱を交えたナンバーのメリハリのきいた演奏にはウキウキさせられた。ザ・オペラ・バンドが彼の指揮によく応えていた。

この曲の美しさ、楽しさをしっかりとみせてくれた。
オッフェンバックの他のオペレッタも、同様の趣向で上演してほしい。

(2024/3/15)

—————————–
<Staff>
Stage Director: SATO Miharu
Conductor: TSUJI Hiroyuki

<Cast>
Pâris: KUDO Kazuma
Ménélas: HAMAMATSU Takayuki
Hélène: SUNAKAWA Ryoko
Agamemnon: HARE Masahiko
Orestes: FUJIKI Daichi
Calchas: ITO Takayuki
Achilles: KISHINO Yuki
Ajax Premier: TANNAKA Yousuke
Ajax Deuxième: HORIKOSHI Toshinari
Narrator: TSUCHIYA Shinba

Chorus: The Opera Choir
Orchestra: The Opera Band