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東京都交響楽団 第985回 定期演奏会Aシリーズ|藤原聡

東京都交響楽団 第985回 定期演奏会Aシリーズ
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra 985th subscription concert A series

2023年10月30日(月)東京文化会館
2023/10/30 Tokyo Bunka Kaikan
Reviewed by 藤原聡 (Satoshi Fujiwara)
Photos by 堀田力丸/写真提供:東京都交響楽団

(曲目)        →foreign language
シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 op.82
シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104
シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 op.105

(演奏)
指揮:オスモ・ヴァンスカ
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉

 

コロナ禍により都響への客演が2度もキャンセルとなったオスモ・ヴァンスカが3度目の正直、やっとこのオケの指揮台に立った。ラハティ響との実演と録音、そこからさらに深化したミネソタ響との録音、そして読響への客演を通じてヴァンスカのシベリウスに魅了されてきた筆者としては逃すわけには行かないコンサートである。たった1度のみのコンサートとは誠にもったいない気はするが、それはそれとして。

以前より痩身となった御年70歳のヴァンスカ、実に颯爽とステージに登場。身のこなしは完全に壮年期のそれだが、演奏もまた非常に引き締まったものだ。第5の冒頭は都響らしからぬ管楽器の乱れなども散見されたが、ヴァンスカの演奏が優れているのは、各部分のテンポやダイナミクスの対比、構成の妙という点であろう。特に終楽章のMisteriosoでの極 限まで音量を絞ったpppからLargamente assaiに至る設計の巧さは息を呑むほどだ。これがあるからコーダの6連打がこの上ない効果を放つ。この辺りを明確に描き分けないと全体に漫然として唐突感のある演奏となりかねないリスクを孕むのが第5であるが、ヴァンスカはそこを見事にクリアしていた。バランスの点でオケがヴァンスカの細かい要求を完全にクリアしていたとは言い難い箇所もあったが、初客演でよくぞここまで、との思いの方が遥かに優る。

休憩を挟んでの第6及び第7では、十分に優れていた第5をさらに上回る名演奏が展開された。響きの密度はさらに高く、第5で気にならないと言えば嘘になるパート間の 受け渡しにおける隙間風はほぼ解消。解釈としては、第6においては吉松隆が指摘した本曲と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の類似を思わせるような抒情寄りのものというよりはより剛直な音造りが前面に出ており、それゆえにいささか難解とも思えるこの曲の全体の見通しが実にクリアに「見える」。第7では速めのテンポの中で要所における和声的変化、楽想のコントラストがこれ以上はない位に的確に把握されていて驚嘆。なるほどこちらも感傷的でも情緒的でもないハードな演奏だが、この演奏の説得力の前には他の演奏が弱々しいものと聴こえる可能性なしとしない。ヴァンスカは凄いが、初客演でその相当に細かかっ たであろう要求を音化した都響の実力にも感嘆する。

できるだけ近いうちにヴァンスカの再招聘を!

(2023/11/15)


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〈Player〉
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
Osmo VÄNSKÄ, Conductor
Tatsuya YABE, Concertmaster

〈Program〉
Sibelius:Symphony No.5 in E-flat major,op.82
Sibelius:Symphony No.6 in D minor,op.104
Sibelius:Symphony No.7 in C major,op.105