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村松稔之 カウンターテナー リサイタル 2023|藤堂清 

村松稔之 カウンターテナー リサイタル 2023 〜永遠の愛〜
Toshiyuki Muramatsu Countertenor Recital 2023 – The Eternal Love –

2023年6月17日 東京文化会館 小ホール
2023/6/17 Tokyo Bunka Kaikan Recital Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)

<出演者>       → foreign language
村松稔之(カウンターテナー)
小林道夫(ピアノ)

<プログラム>
ジュゼッペ・ジョルダーニ:愛しいひとよ
ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ:もし貴方が私を愛してくれて
ジョヴァンニ・パイジェッロ:もはや私の心には感じない
ベネデット・マルチェルロ:私を燃え立たせるあの炎
ヨハネス・ブラームス:4つの歌曲 op.43
  1. 永遠の愛について
  2. 五月の夜
  3. 涙の谷へ角笛を吹く
  4. 領主フォン・ファルケンシュタインの歌
—————–(休憩)—————–
山田耕筰:歌曲集《AIYANの歌》(詞:北原白秋)
  Noskai/ かきつばた/ AIYANの歌/ 曼珠沙華 (ひがんばな)/ 気まぐれ
團伊玖磨:5つの断章(詞:北原白秋)
  1. 野辺/ 2. 舟唄/ 3. あかき木の実/ 4. 朝明/ 5.希望
————–(アンコール)————–
山田耕筰:からたちの花/ この道

 

新国立劇場の《ジュリオ・チェーザレ》ニレーノ役で注目を集めたカウンターテナーの村松稔之のリサイタル、この日のプログラムは、イタリア古典歌曲から4曲、ブラームスの作品43の4つの歌曲、山田耕筰の歌曲集《AIYANの歌》、團伊玖磨の《5つの断章》というもの。どれもカウンターテナーという声種を想定したものではない。いうならば、中声用、メゾ・ソプラノやバリトン用の声域を想定した楽譜によるものということか。
最初のブロック、古楽系のコンサートで歌われることが多いが、声楽のリサイタルで始めに取り上げられることもある。イタリア語がクリアで聴きやすく、スーッとからだに入ってくるよう。村松の声は、カウンターテナーとしては厚みがあり、響きが充実している。細かな動きも的確で安心して聴いていられる。
ブラームスの歌曲、〈永遠の愛について〉での男性と女性の歌い分けがもう少し明確であってほしいところがあったり、〈領主フォン・ファルケンシュタインの歌〉の速い部分での子音が不鮮明であったりはしたが、全体としては丁寧に歌われていた。
最近の若い歌手の歌で感心するのは、日本語がはっきりと聞き取れること。この日の村松もしっかりと歌っていた。もっとも、山田耕筰の歌曲集《AIYANの歌》には、〈曼珠沙華 (ひがんばな)〉の歌詞の「Gonshan」や〈気まぐれ〉で歌われる「Odan mo iya,Tinco Sa!」のような柳川方言もあり、そのままではわからない部分もあるのだが。さて、歌詞が聴いて分かることを前提として、その裏に、作詞家が、作曲家が、包みこんだ意味を歌い出すことまでを期待すると、なかなかむずかしいものがある。若い彼にとっては、素直に、歌詞に、旋律にしたがって歌うことが、今できる最善の方法なのだろう。
ピアノは大ベテランの小林道夫。彼がエルンスト・ヘフリガーやディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのリサイタルでピアノを担当していたのはもう半世紀も前のこと。その歌曲伴奏での深い経験を聴けるのも楽しみであったが、90歳という年齢を感じさせない打鍵の正確さ、スピード、そしてなにより歌手の息遣いにピタリと寄り添う様に感嘆した。村松は小林から多くのことを受け取ったに違いない。

(2023/7/15)

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<Players>
Toshiyuki Muramatsu (Countertenor)
Michio Kobayashi (Piano)

<Program>
T. Giordani : Caro mio ben
G. B. Pergolesi : Se tu m’ami
G.Paisiello : Nel cor più non mi sento
B. Marcello : Quella fiamma che m’accende
J. Brahms : 4 Lieder, op. 43
  Von ewiger Liebe
  Die Mainacht
  Ich schell mein Horn ins Jammertal
  Das Lied vom Herrn von Falkenstein
————-(Intermission)————-
Kōsaku Yamada : A Series of Songs “Song of AIYAN”, premed by Hakushū Kitahara
Ikuma Dan : 5 Fragments, premed by Hakushū Kitahara
—————-(Encore)—————-
Kōsaku Yamada : Karatachi no hana/ Kono michi