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〈エスポワール シリーズ 12〉嘉目真木子(ソプラノ)|藤堂清 

〈エスポワール シリーズ 12〉嘉目真木子(ソプラノ) Vol.3 ―ドイツ・リート
[Espoir Series 12] Makiko Yoshime(Sop) Vol.3 -Deutsche Lieder

2023年2月18日 トッパンホール
2023/2/18 Toppan Hall
Reviewed by 藤堂清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 藤本史昭/写真提供:トッパンホール

<出演者>        →foreign language
嘉目真木子(ソプラノ)
北村朋幹(ピアノ)

<プログラム>
マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲
シェーンベルク:2つの歌 Op.14
シェーンベルク:浜辺で
ヒンデミット:アンゲルス・シレジウスの詩による4つの歌曲
——————(休憩)——————
ツェムリンスキー:歌曲集 Op.2 第2集
ベルク:7つの初期の歌曲
R.シュトラウス:4つの歌曲 Op.27

 

嘉目真木子のソプラノ、北村朋幹のピアノによるデュオ・リサイタル、〈エスポワール シリーズ 12〉の3回シリーズ最終回はドイツ・リートの夕べ。この日のプログラムとして彼らが選んだものはすべて20世紀前半の作品。シューベルト、シューマン、ブラームスといった19世紀の成熟期の歌曲には目をくれず、いわば爛熟期のもののみを取り上げた。
注目すべきは、すべての作曲家の作品を、歌曲集としてまとめられている形で演奏していること。マーラーは5曲続けて演奏される機会は多いし、ベルクも7曲をひとまとめに扱うのが自然。だが、R.シュトラウスの4曲は、それぞれ有名であるが個別に歌われることがほとんどで、歌曲集としての演奏はめずらしい。また、ヒンデミット、ツェムリンスキーの作品はプログラムに入れられることも少ないだろう。

第2回のレビューでも書いたが、今回も北村の楽曲の構成に対する繊細な感性に惹きつけられた。

マーラーの第1曲〈ぼくは吸った優しい香り〉の冒頭の細やかなピアノのきらめき、オーケストラ版での音色をも凌駕するような多彩な響きを聴かせる。その北村のピアノに導かれ、のせられるように嘉目の声が入ってくる。彼女は歌詞に応じて表情をするどく変化させるというよりは、全体の大きな流れを歌い出していく。第3曲〈美を求めて愛するのなら〉のように節により微妙に音形が変化する曲の場合、ピアノが構築する枠組みで歌を作っていき、声の部分の変化はその和声に合わせるようにしている。それが嘉目と北村の音楽作りと合致する。

今回歌われたシェーンベルクの歌曲は、彼の歌曲の代表作、連作歌曲集《架空庭園の書》に先立って書かれた作品。低音域から高音域への急な飛翔や逆の動きもあり、またピアノ・パートも込み入ったものとなっている。ここでも北村のピアノが耳を捉える。ピアノが主体で、声部はオブリガートのように聴こえる。第1曲の〈ばくはひれ伏してはならない〉の歌詞が、筆者にとり掴みづらかったのが原因かもしれないが・・・。

前半の最後におかれたヒンデミットの《アンゲルス・シレジウスの詩による4つの歌曲》、こちらの曲もガッチリと精密に書かれたピアノが主体で、歌詞に沿った歌という曲ではなく、またその宗教的な内容も相当に偏ったものとなっている。

後半のベルクの《7つの初期の歌曲》、この曲のオーケストラ版を思い浮かべるような色彩感あふれるピアノと、聴きなれた曲ということもあるだろうか、歌詞が自然に聴こえてくる。デュオとしての完成度が高く感じられた。

R.シュトラウスの《4つの歌曲 Op.27》の4曲は、リサイタルで歌われたり、アンコールに取り上げられたりする曲。よく知られている曲だけに、ついつい個別の表現に耳が向いてしまう。最後の〈明日〉が終わったところで、歌曲集として歌った理由は何だったのだろうと考えてしまった。ピアノとの連携もよく、ていねいな歌ではあったのだが。

リート・デュオとしては、ピアノの北村が引っ張っているという印象が強いが、これだけのプログラムを準備し歌った嘉目の頑張りにも拍手を送りたい。
トッパンホールのエスポワール・シリーズ初めての声楽家としての役割は果たせたのではないだろうか。
今後も北村とのデュオが継続されることを期待したい。

(2023/3/15)

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Performers
Makiko Yoshime, Sop
Tomoki Kitamura, Pf

Program
Mahler:5 Lieder after Rückert
Schönberg:2 Lieder Op.14 / Am Strande
Hindemith:4 Lieder after Angelus Silesius
Zemlinsky:Lieder Op.2 Book2
Berg:Sieben frühe Lieder
R.Strauss:4 Lieder Op.27