Menu

Hakuju Hall 古楽ルネサンス2023第1回 タブラトゥーラ 江崎浩司メモリアルコンサート|大河内文恵

Hakuju Hall 古楽ルネサンス2023第1回 タブラトゥーラ 江崎浩司メモリアルコンサート
Hakuju Hall Kogaku- Renaissance 2023 TABLATURA Ezaki Koji memorial concert
2023年1月27日 Hakuju Hall                                                     
2023/1/ 27 Hakuju Hall

Reviewed by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)
写真提供:ダウランド アンド カンパニー

<出演> →foreign language
TABLATURA:
つのだたかし ウード/ラウタ
田崎瑞博 フィドル
近藤郁夫 パーカッション
山崎まさし ビウエラ

ゲスト:
波多野睦美 歌
横田朱乎 リコーダー
川村正明 ショーム
永谷陽子 ドゥルチアン

<曲目>
新しい自転車 つのだたかし
パルマス 田崎瑞博
カレリア 近藤郁夫
夜の蟹 田崎瑞博

スカジャン 江崎浩司
紅い花 江崎浩司
十月の歌 江崎浩司
トロキルス 江崎浩司

~休憩~

愛が呼んでいる J. ダウランド
スカボローフェア イギリス古謡
オード        田崎瑞博

ごわごわ  田崎瑞博
夜来る人  つのだたかし
コンポステラ つのだたかし

レセルカーダ  D. オルティス

~アンコール~
大サーカス
Paul’s Steeple(John Playford)より

 

何とも味わい深いコンサートである。クラシックのコンサートというのは概して客席の年齢層が高めなのだが、いつもにも増してシルバー世代が多かったのは、タブラトゥーラが結成39年を迎え、彼らとともに歩んできた同世代のファンが多いということであろう。なぜかこれまで機会がなくて初参加の筆者はドキドキしながら座っていたのだが、「今日初めてタブラトゥーラのコンサートに来た人~?」というつのだの問いかけに1/3くらい手が挙がって少しホッとした。

前半はタブラトゥーラのメンバーのオリジナル曲。アルバム「新しい自転車」の標題曲は短いパッセージの繰り返しと中間部から成る「つかみ」の曲。演奏後つのだのトークが入る。タブラトゥーラとしては3年ぶりのライブになること、その間に一番若いメンバーである江崎浩司を失ったこと、でもメソメソしないで楽しく明るくいきましょう!と。手拍子から始まりフラメンコを思わせる《パルマス》、北欧の雰囲気漂う《カレリア》の2曲を続けて、またトーク。《夜の蟹》はCrabをClubに読み替えると意味がわかるという洒落の効いた一曲。最後のソロの応酬で会場も盛り上がる。

続いて江崎の作品を4曲。イカレポンチとつのだが評した《スカジャン》はニューミュージックで育った世代には懐かしいサウンド。続く《紅い花》は映画「花よりもなほ」の挿入曲。明るいのにせつないリコーダーのメロディーを聴いていると、この映画は見ていないが、見ていたらきっとこの曲が聴こえていたところで涙が出るだろう。しっとりと《十月の歌》に続いて、前半の最後はハチドリを意味する《トロキルス》。ハチドリの羽搏きをあらわす急速な音型と中東を連想させるエキゾチックな音遣いが印象的。今日はゲストの横田朱乎がリコーダーを担当したが、生前の江崎の演奏はさぞやと生で聴く機会を逸したことが悔やまれる。

後半はタブラトゥーラとの共演の多い波多野睦美が登場して、ダウランドの《Come Again》をつのだのリュートとともに。近年カウンターテナーのレパートリーとしてもよく聞かれるようになった同曲。「To see, to hear, to touch, to kiss, to die」と畳みかけるところの表現がやはり秀逸。サイモン&ガーファンクルでも知られる《スカボローフェア》は波多野のアカペラで始まる。ゾクゾクするような歌声に思わず息をのむ。続く《オード》はシャカシャカ音と持続低音の上に、歌とその上に4度平行で音が重なる。ふと「平家物語」というアニメの音楽を思い出すような中世的な響きが心に残った。

一転、《ごわごわ》はエキゾチックかつリズミカルでノリの良い曲。《夜来る人》が始まってすぐ、「失礼しました!」と曲が止まる。ダルシマーを弾いていた近藤がこの曲でない調弦で弾き始めてしまったようで、調弦のやり直しをして再スタート。ダルシマーが入っているせいかハンガリーのオペラを見ているよう。下降する旋律を聴いていると失ったものを悼み悲しむメロディーに聞こえてくる。せつない旋律と和声に涙ぐみ、明るく楽しいこのコンサートの中でこの曲の間だけはレクイエムが流れていたなと思う。

星降るような《コンポステラ》を経て、最後の《レセルカーダ》へ。オルティスのこの曲はもっとゆっくり弾く演奏もあるが、タブラトゥーラは超快速。客席での手拍子も相俟って(この手拍子が7拍めに3連符が来るという独特なもので、仕組みを理解するのにしばし要した)、大盛り上がりで幕を閉じた。

このコンサート、ほぼ1曲ごとにトークが入るのが特徴で、そのトークもいわゆるクラシックのコンサートよりもポピュラー系のコンサートのように長めであるのは、それぞれの楽器の調弦に時間がかかるからというのが途中で明らかにされる。たしかに古楽器はモダンの楽器よりも狂いやすいので頻繁に調弦が必要になる。そこを逆手に取って、ゆる~い感じに進めていくのは観客フレンドリーでもある。彼らが活動を始めた39年前にそれがどうだったかは少し興味のあるところである。

プログラムの大半はオリジナル曲だが、1曲1曲何らかの様式にのっとって書かれており、バックグラウンドは多様であっても音楽的基礎をしっかりもった名手の集まりであることが伝わってくる。
といっても堅苦しいことは1つもなく、即興ありのノリノリの音楽は、近年若手や中堅を中心とした古楽グループで見られるようになった傾向を想起させる。新しい潮流だと思っていたことは、40年近く前から彼らがやってきたことだったのか。ゆる~く見せながらとんでもなく巧い彼らの音楽の沼にはまりそうな予感がする。

(2023/2/15)

—————————————
TABLATURA:
TSUNODA Takashi
TASAKI Mizuhiro
KONDOH Ikuo
YAMAZAKI Masashi)

Guest:
HATANO Mutsumi
YOKOTA Shuko
KAWAMURA Masaaki
EITANI Yoko

Program
My new bicycle               Tsunoda Takashi
Palmas                            Tasaki Mizuhiro
Karelia        Kondo Ikuo
Crabs in the Evenings     Tasaki Mizuhiro

Sukajan                Ezaki Koji
The red flower     Ezaki Koji
October song      Ezaki Koji
Trochilus    Ezaki Koji

–intermission–

Come Again sweet love doth now invite   John Dowland
Scarborough Fair   English ballad
Ode Tasaki Mizuhiro

Gowagowa Tasaki Mizuhiro
Night thoughts Tsunoda Takashi
Compostela    Tsunoda Takashi

Recercada segunda   Diego Ortiz

–encore—

Grand Circus from Paul’s Steeple(John Playford)