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Pick Up (2023/1/15)|東京文化会館オペラ《ショパン》|林喜代種 

東京文化会館オペラ《ショパン》(ゲネプロ、12/16)
Tokyo Bunkakaikan OPERA, Chopin 

Text & photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi) 

東京文化会館「シアター・デビュー・プログラム」のオペラ「ショパン」。演出は岩田達宗。

これはショパンの生涯を描いた伝記ではありません、とプログラムにある。ショパンの偉大な名曲の数々を背景にその生涯を貫く魂の遍歴を描く夢幻劇であると。
全4幕構成で、夜想曲からマズルカ、エチュード、協奏曲など全編ショパンの曲約80曲が松本和将のピアノを中心に篠原悠那のヴァイオリン、上村文乃のチェロ、園田隆一郎の指揮で演奏された。作曲はジャコモ・オレーフィチェであるがほんの一小節だけであとはショパンの曲をつなぎ合わせている。日本では過去に2回しか上演されていないという。ショパンは山本康寛で無国籍の作曲家、ショパン以外は架空の登場人物。ステッラ役は佐藤美枝子で天上の女性、幼くして亡くなったショパンの妹などの象徴、迫田美帆のフローラは現実の世界でショパンと愛し合った女性たちの象徴、エリオ役の寺田功治はショパンの生涯の友、修道士の田中大輝はショパンへ生きることへの情熱を説き、無国籍のショパンの哀しい宗教観を際立たせる、グラーツィアは高野果音(児童・黙役)、藤原歌劇団合唱部。
あらすじは、20歳のショパンはロシアの侵攻によって滅ぼされつつある故国ポ-ランドを後にして旅立つ。滅びゆく故郷への去りがたい思いがショパンを憂鬱にする。天上の女性ステッラは音楽を通して為すべき使命を教える。またショパンの才能を信じて音楽を残そうとする友人たちの声に励まされ2度と祖国に戻らない覚悟を決める・・・。

この企画の「シアター・デビュー・プログラム」とは成長段階に合わせた題材を取り上げ、クラシック音楽と他ジャンルがコラボレーションしたオリジナルの舞台作品を一流アーティストを起用して小学生、中学・高校生に向け、企画・制作するプログラム。幼少期に音楽ワークショップや子供向けコンサートを経験した子供たちへ、彼らが小学生、中学・高校生へと成長するのに伴う次のステップとして「舞台芸術」による「初めての劇場体験」のプログラムを届ける、と東京文化会館では企画意図を述べている。学校でのアウトリーチも行なわれている。25歳以下、18歳以下の割引きがある。
成果を期待したい。

(2023/1/15)