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Anthonello Recorder Consort Tour 2022|大河内文恵

アントネッロ リコーダーコンソートTOUR 2022
Anthonello Recorder Consort Tour 2022

2022年9月7日 五反田文化センター 音楽ホール
2022/9/7 Gotanda Bunka Center Concert Hall
Reviewed by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)
写真提供:アントネッロ 

<出演>        →foreign language
濱田芳通(リコーダー)
浅井愛(リコーダー)
大塚照道(リコーダー)
織田優子(リコーダー)
高本一郎(リュート)
立岩潤三(パーカッション)

<曲目>
【フランス・ルネサンスのシャンソン】
クレマン・ジャヌカン:ヒバリ
ピエール・パスロー:家の亭主はお人好し
ウスタシュ・デュ・コーロワ:《若い娘》によるファンタジア
ピエール・アテニャン:トゥルディオン

【メディチ家の謝肉祭】
作者不詳:ブルゴーニュ人はかく語りき
ハインリッヒ・イザーク:ラ・ミ・ラ・ソ
作者不詳:粉を挽きませんか?お嬢さん

【三十年戦争前夜と戦時下の宮廷音楽】
ザムエル・シャイト:パヴァーヌ
ミヒャエル・プレトリウス:ブーレ/クーラント
エラスムス・ヴィトマン:マルガレータ

【エリザベル朝の古謡】
トーマス・シンプソン:リチェルカーレ《愛しのロビン》
作者不詳:グリーンスリーヴス

~~休憩~~

【17世紀イタリア・バロック時代の夜明け】
ダリオ・カステッロ:ソナタ第2番
ダリオ・カステッロ:ソナタ第15番
タルクィーニオ・メールラ:カンツォン《夜うぐいす》
ラルクィーニオ・メールラ:カンツォン《ラ・メールラ》
タルクィーニオ・メールラ:カンツォン《めんどり》
ルイジ・ロッシ:私の想いは戦って
ダリオ・カステッロ:ソナタ第16番

アンコール
スコット・ジョプリン:ザ・ラグタイム・ダンス

 

「よいこは真似をしてはいけません」 Eテレのテロップに出てきそうな言い回しが、何度も頭を駆け巡った。アントネッロの公演はどれも、アレンジ自在で縦横無尽。演奏に感嘆し、濱田のトークにげらげら笑い、そんな中に「あ、そうか」が潜む。

前半は4つのテーマから成る。フランス、イタリア、ドイツ、イギリスをそれぞれ、シャンソン、謝肉祭、三十年戦争前後、エリザベス朝に代表させて聞かせる。とにかく装飾を入れまくり、テンポを揺らしまくる濱田に対し、他のメンバーが平気な顔をして一緒に演奏しているのが不思議。楽器の異なる高本や立岩ならともかく、リコーダーの浅井・織田・大塚の対応力が半端ではない。

フランス篇が終わってイタリア篇が始まると、あれっ?雰囲気が変わった。前世はメディチ家という濱田の言葉は話半分に聞くとしても、シャンソンの洒脱な雰囲気から、謝肉祭の歌い踊る陽気さとその中に潜む「実は民衆は苦しいんだよね、わかるよ」といった心の声まで聞こえてくるよう。

そして、3つめの枠の最初に「あ、ドイツだ!」と一瞬でわかる曲を持ってくるセンス。そして舞曲もドイツになるとどことなく土臭さがあって、民俗的な響きがする。最後のエリザベス朝では、比較的知られた曲が2曲並べられたが、グリーンスリーヴスを「ふしだらな女の子の話」と言われて聴くと全然違う曲のように聴こえる。もちろん、絶妙なアレンジの賜物ではあるのだが。

後半はバロック前期のイタリアもの。まずはカステッロのソナタ2曲。そこからメールラの鳥にまつわる曲を3曲。濱田は『ニューグローヴ音楽事典』から仕入れたと言いつつ、作曲家のゴシップを交えて面白おかしく語る。だけかと思ったら、3曲めの《めんどり》では打楽器奏者の立岩が両手にニワトリのおもちゃを持ってそれを絶妙なタイミングで鳴らしまくる。このご時世、大きな口を開けて笑うことは難しいが、コロナ禍前だったら、爆笑の渦になっていたこと間違いなし。

その直後に、ロッシのカンタータ。戦争を歌った歌で、半音の遣いかたなどがいかにも初期バロック的な曲。最後はカステッロのソナタで盛り上がって終わった。リコーダー4人衆はもちろんのこと、高本のリュート、立岩のパーカッションが曲の雰囲気を盛り上げたり、要所を締めたりと活躍した。彼らの入ったアンサンブルは安心して聴けるという筆者の中でのテッパンが再び更新された。

プロにこういうことを言うのは失礼なのを重々承知の上で言うが、濱田は本当によく調べており、これまでの蓄積もあろうが準備に相当の時間をかけていると思われる。この日のコンサートは最初から最後まで(トークも含めて)完璧で、このままDVDにして残して欲しいくらいであった。そして、アンコールはジャズ・ナンバーのザ・ラグタイム・ダンス。最後の最後まで心憎い演出である。

(2022/10/15)

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Anthonello:
Yoshimichi HAMADA(recorder)
Ai ASAI(recorder)
Terumichi OTSUKA(recorder)
Yuko ODA(recorder)
Ichiro TAKAMOTO(lute)
Junzo TATEIWA(percussion)

Clément Janequin: Le chant de L’Alouette
Pierre Passreau: Il est bel et bon
Eustache Du Caurroy: Fantasie sur Une Jeunefillette
Pierre Attaignant: Tourdion

Anonymus: Dit le Bourguygnos
Heinrich Isaac: La my la sol
Anonymus: Alle stamegne

Samuel Scheidt: Pavan
Michael Praetorius: La Bourée / Courant
Erasmus Widmann: Margaretha

Thomas Simpson: Bonny sweet Robin
Anonymus: Greensleeves

— intermission—

Dario Castello: Sonata seconda
Dario Castello: Sonata decima quinta
Tarquinio Merula: Canzon la Lusignuola
Tarquinio Merula: Canzon la Merula
Tarquinio Merula: Canzon la Gallina
Luigi Rossi: FanBattaglia
Dario Castello: Sonata decima sesta

— Encore—

Scott Joplin: The Ragtime Dance