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ソニア・ヨンチェヴァ ソプラノ・コンサート|藤堂清

〈オペラ・フェスティバル〉特別企画 旬の名歌手シリーズ2022-I
Great Singers Series 2022-I
ソニア・ヨンチェヴァ ソプラノ・コンサート
Sonya Yoncheva in Concert

2022年7月2日 東京文化会館大ホール
2022/7/2 Tokyo Bunka Kaikan Main Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)

[出演]        →foreign language
ソニア・ヨンチェヴァ(ソプラノ)
指揮:ナイデン・トドロフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

[曲目]
ヴェルディ:歌劇《ナブッコ》 序曲
ヴェルディ:歌劇《イル・トロヴァトーレ》 “穏やかな夜~この恋を語るすべもなく”
プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》 間奏曲
   “この柔らかなレースの中で”
ヴェルディ:歌劇《運命の力》 序曲
   “神よ平和を与えたまえ”
———————-(休憩)———————-
ベッリーニ:歌劇《ノルマ》 “清らかな女神”
プッチーニ:歌劇《妖精ヴィッリ》 第2幕の間奏曲より“夜の宴”(妖精たちの踊り)
   “もし私がお前たちのように小さな花だったら”
プッチーニ:歌劇《トスカ》 “歌に生き、恋に生き”
プッチーニ:歌劇《蝶々夫人》 間奏曲
   “ある晴れた日に”
——————-(アンコール)——————-
ビゼー:歌劇《カルメン》“ハバネラ~恋は野の鳥”
プッチーニ:歌劇《ジャンニ・スキッキ》“わたしのお父さん”
プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》“この柔らかなレースの中で”

 

ソニア・ヨンチェヴァというソプラノの名前を聞いたのはいつごろだっただろう。
2010年にオペラリアで優勝した時から、2013年に《リゴレット》のジルダでMETデビューを果たした時までの間のいずれかの時点かと思われる。このころの彼女のレパートリーは軽めのものが中心で、クリスティの指導の下、バロックものに取り組むこともあった。その後何度かオペラの公演に参加して来日という話もあったが、実現にはいたらず、今回が初来日。40歳を超えた今ではイタリア・オペラのリリコ・スピントの役柄を中心に歌っている。

この日のプログラムには、ヴェルディ、プッチーニ、ベッリーニというイタリア・オペラの中核をなす曲が選ばれた。ヴェルディのレオノーラの2つのアリア、プッチーニはマノン、トスカ、蝶々夫人、ヴィッリ、ベッリーニはノルマ。彼女の現在のレパートリーに合致した選曲と言えるだろう。
《イル・トロヴァトーレ》の“穏やかな夜~この恋を語るすべもなく”、カヴァティーナのメロディーをたっぷりと歌う部分は、声の響きも厚みもありしっかりした歌を聴かせた。声自体は実に魅力的。高音域も無理なく出る。しかし後半のカバレッタのアジリタの技巧を活かす部分では、響きが乗り切らない部分もあった。
プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》 の“この柔らかなレースの中で”では最後の高音も無理なく伸ばす。気になったのはイタリア語の母音が少しくすんだ印象であること。発声の個性とも捉えられるが、改善の余地はあるだろう。
《運命の力》の“神よ平和を与えたまえ”ではドラマチックな歌い口が映える。
細かな動きのある曲より、ゆったりとした流れを歌い上げる方があっているようだ。

後半は、ベッリーニ:歌劇《ノルマ》から入り、プッチーニが3曲。
“清らかな女神”は弱声を効果的に使った演奏。彼女のノルマはすでに映像が発売されており自信のあるレパートリーなのであろう。響きの美しさを味わった。
プッチーニのうちヴィッリはコンサートではたびたび取り上げているようで、若書きのこの曲をたっぷり表情を付けて歌った。《トスカ》《蝶々夫人》からのアリアは、どちらも手慣れたもの。少し自由度が高くオーケストラを置いてきぼりにする部分もあった。

アンコールは3曲。オーケストラ伴奏なので用意できる曲数は限られる。1曲目の《カルメン》、2曲目の《ジャンニ・スキッキ》、3曲目は前半で歌われた《マノン・レスコー》“この柔らかなレースの中で”。大胆に振りをつけ、拍手を受けた。

ソニア・ヨンチェヴァ、素材としての魅力はあるが、それが複数のアリアを歌うコンサートという形式の中では、「ヨンチェヴァ流」の表情が強く、好みが分かれるように思われた。演技も含めオペラの舞台でより輝く人ではないだろうか。その機会を楽しみに待ちたい。

(2022/8/15)

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<performer>
Sonya Yoncheva, Soprano (Japan debut)
Nayden Todorov, Conductor
Tokyo City Philharmonic Orchestra

<Program>
Giuseppe Verdi, Overture (Sinfonia) to Nabucco
Giuseppe Verdi, “Tacea la note placida… Di tale amor” from Il trovatore
Giacomo Puccini, Act 3 – Intermezzo from Manon Lescaut
Giacomo Puccini, “In quelle trine morbide” from Manon Lescaut
Giuseppe Verdi, Overture (Sinfonia) to La Forza del Destino
Giuseppe Verdi, “Pace, pace, mio Dio” from La Forza del Destino
———————-(Intermission)————————–
Vincenzo Bellini, “Casta Diva” from Norma
Giacomo Puccini, Act 2 – La tregenda from Le Villi
Giacomo Puccini, “Se come voi piccina io fossi” from Le Villi
Giacomo Puccini, “Vissi d’arte, vissi d’amore” from Tosca
Giacomo Puccini, Act 2 – Intermezzo from Madama Butterfly
Giacomo Puccini, “Un bel di, vedremo” from Madama Butterfly
————————–(Encore)—————————-
Giorge Bizet, “Habanera” from Carmen
Giacomo Puccini, “O mio babbino caro” from Gianni Schicchi
Giacomo Puccini, “In quelle trine morbide” from Manon Lescaut