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撮っておきの音楽家たち|アレクサンドル・カントロフ|林喜代種

アレクサンドル・カントロフ(ピアノ奏者)
Alexandre Kantorow, Pianist

2022年6月30日 東京オペラシティコンサートホール
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

2021年11月の来日公演ではリストの「ダンテを読んで」の演奏で聴衆を魅了したフランスの若きピアニスト、アレクサンドル・カントロフ、この初夏にふたたびやって来た。6月とは言え、今年の日本は、また東京も猛暑が続いていた。そんな中でもカントロフは爽やかな音楽を聴かせてくれた。ステージ上の演奏者はラフな黒のシャツ姿であったが、チラシとは違ったヒゲの顔が印象的であった。
アレクサンドル・カントロフの父は著名なヴァイオリニストのジャン=ジャック・カントロフである。アレクサンドルはヴァイオリンもやってみたが自分には合わないのでピアノを選んだという。
22歳で挑んだ2019年のチャイコフスキー国際コンクールにおいて優勝。フランスのピアニストとして初めてである。フランスピアノ界のホープとして注目されている。16歳のときナントとワルシャワのラ・フォル・ジュルネ音楽祭においてシンフォニア・ヴァルソヴィアと共演して以来、数多くのオーケストラからソリストとして招かれている。ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団とはとくに定期的に共演を重ねてきた。今後パリ管、シュターツカペレ・ベルリンなどとの共演を予定。またアムステルダムのコンセルトヘボウ、ベルリンのコンツェルトハウス、フィラルモニ・ド・パリなどの一流ホールで演奏。ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭、ハイデルベルク春の音楽祭などの著名な国際音楽祭に出演している。また2019年フランス批評家協会賞の年間最優秀新人音楽家部門を受賞。2020年にはサン=サーンスの協奏曲アルバムでフランスの最も権威ある音楽賞「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジク・クラシック」の2部門=年間最優秀録音部門・年間最優秀器楽ソリスト部門を同時受賞。
「父とは最初の頃にフランクのヴァイオリン・ソナタをやった。近年父はヴァイオリンの演奏を再開したのでまた一緒に弾くようになった」と語っている。日本でも二人の演奏を聴けることを祈っている。

(2022/8/15)