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ハイドン:《天地創造》– バッハ・コレギウム・ジャパン 第150回定期演奏会|藤堂清

J. ハイドン:オラトリオ《天地創造》Hob.XXI-2
バッハ・コレギウム・ジャパン 第150回定期演奏会
Haydn : Die Schöpfung
Bach Collegium Japan 150th Subscription Concert

2022年7月16日 東京オペラシティ コンサートホール
2022/7/16 Tokyo Operacity Concert Hall
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)

指揮:鈴木優人        →foreign language
ソプラノ:ジョアン・ラン(天使ガブリエル、イヴ)
テノール:櫻田 亮(天使ウリエル)
バス:クリスティアン・イムラー(天使ラファエル、アダム)
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

第150回を迎えたバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)定期演奏会、首席指揮者の鈴木優人のもと、J. ハイドンのオラトリオ《天地創造》を取り上げた。
BCJの管弦楽、この日は、弦楽器が7x6x5x4x3、管楽器はフルートとトロンボーンが3本、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットが2本、それにコントラファゴットとティンパニ、フォルテピアノが加わるという編成。合唱は各パート7名の予定であったが、テノールのみ1名が降板で6名となった。
第1部、第2部、神による世界の創造の6日間を3人の天使が語る前半、アダムとイヴが、神の被造物を讃え、二人の愛を歌う第3部を後半とするプログラム。
3人のソリストはいずれもバッハ・コレギウム・ジャパンとの共演が多い。天使ラファエルを歌うイムラーが「創世記」第1章を語りはじめ、それを引き継いだ合唱が神の言葉「光あれ!」を歌うと、オーケストラが爆発するかのように和音を奏でる。会場が急に明るくなったかのような錯覚をおぼえる。
創世記の1章をレチタティーヴォとして、ラファエルが、ウリエルが、ガブリエルが歌いあげていく。特にイムラーのスタイリッシュな語りは神による創造の様子に聴き手を引き込んでいく。アリアや合唱部分などは、ジョン・ミルトンの『失楽園』から抜粋しヴァン・スヴィーテン男爵がドイツ語に翻訳したテクストが用いられている。
ジョアン・ランのヴィブラートの少ない透明な声が、レチタティーヴォでもアリアや重唱でも力みなく自然に響く。ウリエルを歌う櫻田もベテランらしい安定した歌。
前半は、地に生物を、そして人間アダムとイヴを作り、神は満足したところで終わる。最後の合唱曲でのBCJの合唱の壮大な歌、その間に挟まれた3人のソロや重唱、限りない喜びを歌い上げた。
後半はウリエルのレチタティーヴォから始まり、アダムとイヴによる神への讃美、そして二人は互いの愛を歌う。こちらでは『失楽園』からのテクストが使われる。もっともこの曲では楽園でのやりとりにとどまり、わずかにウリエルの二人への警鐘の言葉が入るだけだが。最後の合唱で神を賛美し「アーメン」で全曲を締めくくる。ここでは独唱者も加わる。アルトのパートは合唱を歌っていた青木洋也が入り歌った。

この日の合唱団のメンバーには、BCJのコンサートでソロを歌うものも、またその他でソロ活動しているものも多く加わっていた。古楽の歌をよく知っている人たちが集まったことで安定した合唱を聴くことができた。同様なことは管弦楽についても言える。とくにあげておきたいのはフォルテピアノを担当した大塚直哉で、レチタティーヴォの完成度は彼の力によるところも大きかった。
だがなんといっても、明るい喜びに満ちた《天地創造》、最大の功労者は指揮者の鈴木優人であった。時代楽器を用いたからといってちんまりまとめるのではなく、小規模の合唱、管弦楽からダイナミクスの大きな音楽を生み出していた。今後の幅広い分野での活躍を期待したい。

(2022/8/15)

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Conducter:Masato Suzuki
Soprano:Joanne Lunn(Gabriel,Eva)
Tenor:Makoto Sakurada(Uriel)
Bass:Christian Immler(Raphael,Adam)
Chorus & orchestra:Bach Collegium Japan