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Bona Musica Membra 第2回主催定期公演 Abend Musik Vol. 1|大河内文恵

Bona Musica Membra 第2回主催定期公演 Abend Musik Vol. 1
Bona Musica Membra The 2nd Subscription Concert Abend Musik Vol. 1

2022年7月22日 日本福音ルーテル東京教会
2022/7/22 Tokyo Lutheran Church
Reviewed by 大河内文恵 (Fumie Okouchi)
写真提供:Bona Musica Membra 

<出演>      →foreign language
ソプラノ:中山美紀、望月万里亜
アルト:久保法之
テノール:中嶋克彦
バス:渡辺祐介

ヴァイオリン:荒木優子、佐々木梨花
ヴィオラ・ダ・ガンバ:福沢宏
ヴィオローネ:布施砂丘彦
オルガン:荒井牧子
テオルボ:瀧井レオナルド

<曲目>

ブクステフーデ:主よ、あなたの御言葉にかけて (BuxWV 27)
  何物も神の愛から (BuxWV 77)
  私をこの世で悲しませるもの (BuxWV 105)
  ご自分の独り子を (BuxWV 5)
  天使に命じて (BuxWV 10)

~~休憩~~

ブクステフーデ:主よ、私にはあなたしかおられないのであれば (BuxWV 38)
  私の切なる願いは (BuxWV 47)
  ソナタ ハ長調 (BuxWV 266)
  神よ、私たちは感謝します (BuxWV 86)

アンコール
H. シュッツ:宗教的合唱曲集 Op. 11より、ですから私はイエス・キリストの御許へ行きます(SWV 379)

 

第1回の公演から約1年。2回目の公演でここまで進化を遂げるとは予想していなかった。歌手同士、楽器奏者同士、そして歌手と楽器と、いずれも前回とは段違いにアンサンブルが安定し、ブクステフーデの音楽世界にどっぷりと浸ることができた。

演奏会に先立っておこなわれたSpaceでの公開インタビューで、望月は「自分が好きな曲(聞きたい曲、歌いたい曲)を選んだ」と述べていたが、好きな曲を無作為に並べたのではないことが、聞いているとわかる。というのも、メンバー1人1人の個性や魅力を深く理解し、それが聴き手に伝わるように組まれたプログラムであることが、だんだんわかってくるからだ。

たとえば、2曲目の「何物も神の愛から」は、望月と久保と渡辺の3人で歌われたが、望月と久保との二重唱になっている部分の声の混ざり合い・響き合いが何ともいえない美を醸し出し、そこに渡辺のバスの美声が加わると、聞いていて蕩けそうになる。曲の中盤の久保のソロの部分では、ヴィオラ・ダ・ガンバとテオルボのみで伴奏され、久保の声と楽器のゼクエンツが絡み合う。そして、最後に冒頭の部分が戻ってきて、最後にnichts, nichts, nichtsと3回歌って終わる、その余韻の残しかたといったらない。

4曲目「ご自分の独り子を」は中山のソロ。前回のレビューで、高音に特徴のある中山が実は中音域にも魅力があることに気づいたと書いたが、その中音域の魅力がさらに強化されたことが示された。深く厚みのある声、さらにその深みと厚みが変わらないまま高音域に移行する。透明感の高い中山の高音域に、さらに深みと厚みが加わり、新たな武器を手にしたなと感じた。最後のアレルヤでのアジリタは見事! 客席の温度が一気に上昇したのがわかった。

前半の最後「天使に命じて」は望月、久保、中嶋、渡辺の4人が絶妙なバランスで歌い進めていく。最後のアーメンでテンポが速くなるのだが、それに先立って、2節めに入るところでテンポがゆっくりになった。それによって1節と2節がくっきりと際立ち、アーメンでの変化がさらに効果的になる。曲全体の構成感とともにアーメンでの壮麗さは、前半の締めくくりにふさわしい雰囲気を醸し出した。

後半最初は望月のソロから。間奏部でのヴィオローネのピチカートが心地よく、パッヘルベルを思わせる。望月の軽めの声と楽器がいいバランスで低音主題にのっていく。というよりむしろ、声が楽器の1つになったように溶け合って、妙なるアンサンブルを奏でる。こういうものが聴けるのが上手いアンサンブルを生で聴く醍醐味だなと思う。

続く「私の切なる願いは」で、透明感たっぷりの中山の声が聴けた。そうそう、これこれ。1つの演奏会の中でまったく違う歌い方を使い分ける技術に舌を巻く。3つのアリアと3重唱から成るこの曲は、節の終わりの部分が何度も繰り返されて強調される。その繰り返しを聴きながら、そういえば今日のメンバーはドイツ語が明瞭だなと気づく。つい歌詞を見ながら聞いてしまったが、おそらく見ずに聞いていても意味が入ってきたであろう。それを体験しそびれたのは勿体なかった。

器楽曲を挟んで、最後は「神よ、私たちは感謝します」。北ドイツらしい旋律運びに、ブクステフーデの魅力がたっぷり詰まった1曲を全員で締めくくる。望月がやりたかった曲だというのが伝わってくる。

歌い終わってから、望月が「指揮者のいないグループなので、リハーサルで試行錯誤した」と語っていたが、その試行錯誤によって、楽譜から彼ららしい音楽が立ち上り、アンサンブルが磨かれたのだろう。器楽奏者のなかでは、特に佐々木の成長ぶりが顕著だった。前回は瀧井が1人でバランスをとっている形だったが、佐々木が第1ヴァイオリンと低音とをしっかりつなぎ、全体の手綱をうまくとっていたように思う。

アンコールは次回に取り上げる予定のシュッツから1曲。ブクステフーデの後に聞くと、モノクロ映画から急にカラー映画になったようなカラフルさ。それがかえってモノクロの味わいを引き立たせると同時に、次のカラー映画も見たい!と思わせた。今後、2023年の12月までに3回の定期公演がすでに予定されているという。ますます目が離せないグループになっていくだろう。

(2022/8/15)

   

—————————————
Miki NAKAYAMA(soprano)
Maria MOCHIZUKI(soprano)
Noriyuki KUBO(Alto)
Katsuhiko NAKAJIMA(Tenor)
Yusuke WATANABE(Bass)

Yuko ARAKI(violin)
Rika SASAKI(violin)
Hiroshi FUKUZAWA(viola da gamba)
Sakuhiko FUSE(violone)
Leonardo TAKII(Theorbo)
Makiko ARAI(organ)

Dietrich Buxtehude: Erhalt uns, Herr, bei deinem Wort (BuxWV 27)
Nichts soll uns Scheiden von der Liebe Gottes (BuxWV 77)
Was mich auf dieser Welt betrubt (BuxWV 105)
Also hat Gott die Welt geliebt (BuxWV 5)
Befiel dem Engel, dass er komm (BuxWV 10)

— intermission—

Dietrich Buxtehude: Herr, wenn ich nur dich hab‘ (BuxWV 38)
Ich habe Lust abzuscheiden (BuxWV 47)
Sonata in C (BuxWV 266)
O Gott, wir danken deiner gut (BuxWV 86)

— Encore—
Heinrich Schutz: Geistliche Chormusik, Op. 11 So fahr ich hin zu Jesu Christ, SWV 379