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撮っておきの音楽家たち|石上真由子|林喜代種

石上真由子(ヴァイオリン奏者
Mayuko Ishigami, Violinist

2022年5月16日 武蔵野市民文化会館小ホール
Photos & Text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

医師の免許を持つヴァイオリ二ストとして今最も注目を集めている気鋭の若手音楽家である。
1991年京都市に生まれる。京都府立医科大学医学部卒業。医師免許を取得。5歳からヴァイオリンを始め、8歳の時にローマ国際音楽祭に招待される。高校2年生の時、第77回日本音楽コンクール第2位。第7回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽器部門第1位など数多くのコンクールで受賞を重ねる。また東響、東京都響、日本フィルなど数多くのオーケストラと共演。2018年1月京都を中心に室内楽のコンサートを行なうEnsemble Amoibeシリー ズを立ち上げ、京都・東京各地で公演を行なう。2019年度京都市芸術新人賞受賞。第29回青山音楽賞青山賞を受賞。また2019年日本コロンビアの新レーベルOpus OneよりCD「ヤナーチェックのヴァイオリン・ソナタ」(レコード芸術準特選)をリリース。今回のリサイタルでは「ラヴェルのツィガーヌ」の鋭い切り口のヴァイオリンの音が印象的だった。

医学部在学中とにかく腫瘍の手術に興味、消化器外科以外整形外科でも腫瘍手術の可能性があると知る。
ここに至るまでの葛藤も見過ごされない。音楽を取るか、医者を取るかと悩んだ時、研修医となったら音楽をする時間がなくなる。医師とヴァイオリニストの二足のわらじは今の自分には難しいと判断して、締め切り一分前に研修医の申し込み画面を消したという。
こういう体験もある。あるオーケストラとの共演でゲネプロの時に首を痛めた。すぐに団員の人たちが即効性のある鍼灸と整体の先生を紹介して下さり事無きを得たと語っている。西洋医学を学んだ身であるにも拘らず、自分が人生で初めて鍼灸と整体にかかったあとは今後の定期的なメンテナンスのために整形外科を受診しようとは思いませんでしたとも語っている。

ヴァイオリンの勉強では3人の素晴らしい恩師と出会ったという。最初は「自分で見つける力を与えるため放置を辞さなかった」先生、次は「小説などの本を私に貸しながら、哲学的な考え方を授けて下さった」先生、最後は再び「生徒が自分で解決する糸口を練り与える」先生。とにかく自力で局面を打開していく強さを自然に身につけることが出来たと語る。積極的にお客様をつくっていくと決めた。
最初に好きになったヴァイオリニストは1949年飛行機事故で30歳で亡くなったフランスの女性のジネット・ヌヴーだという。
ソロ以外の活動では恩師の森悠子率いる長岡京室内アンサンブルなどのメンバーとして活動。最近、石上真由子Vn+中恵菜Va+佐藤晴真Vcで弦楽トリオを結成した。

メスを弓に持ち変えた切っ先鋭い音を、3人の先生の教えで包んでホール一杯に響かせる。

(2022/6/15)