Menu

伊藤康英:《ミスター・シンデレラ》オペラ全2幕|藤堂清

日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.83
《ミスター・シンデレラ》オペラ全2幕
“Mr. Cinderella” Opera in 2 Acts in Original Language (Japanese)
作曲:伊藤康英
台本:高木達
Composer & Music Supervisor: Yasuhide ITO
Libretto & Stage Director: Toru TAKAGI

2022年2月19日 新宿文化センター大ホール
22022/2/19 Shinjuku Bunka Center
Reviewed by 藤堂清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)

〈出演者〉        →foreign language
指揮:大勝秀也
演出:高木 達

伊集院正男:山本康寛
伊集院薫:鳥海仁子
垣内教授:山田大智
伊集院忠義:江原啓之
伊集院ハナ:きのしたひろこ
赤毛の女:鳥木弥生
マルちゃんのママ:鈴木美也子
卓也:松原悠馬
美穂子:神田さやか
マミ:山邊聖美
ルミ:高橋香緒里
ユミ:遠藤美紗子

合唱:日本オペラ協会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
キーボード:松本康子

 

《ミスター・シンデレラ》というオペラを見たのは2004年のこと。タイトルの現代っぽい奇妙さと日本オペラ協会と鹿児島オペラ協会の共同制作ということのギャップが印象に残った。当時日本オペラ協会で上演される地方発信の作品は民話や伝承をもとにしたものが多いなかで、現代が舞台という点や性転換というテーマを扱うなど、ずいぶん毛色がちがうという印象を受けた。

まず簡単に筋を書いておく。
伊集院正男・薫は大学に勤める子供のいない30代の夫婦。正男は日の目を見ない研究一筋で妻をかえりみない。そんな夫にあき(れ)た妻は新しい学部長に惹かれている。その学部長の研究材料を誤って飲んだ正男は、潮の満ち干に合わせ、女に変身する体となる。その赤毛の女は正男と正反対で積極的な性格。学部長も彼女にほれ込んでしまう。そんな正男と赤毛の女をめぐりドタバタがあるが、正男は学部長が作った薬、男に完全に戻るか女に変身したままでいるか、の選択を迫られる。彼は薫とともに生きることを選ぶ。

2001年に鹿児島で初演されてから20年、そして今回までに鹿児島で2回、東京で2回の上演機会があった。こういった繰り返しがオペラの成熟には欠かせない。今回の上演では、台本作者である高木達が演出を担当。作曲者の伊藤康英の解説によれば、一部台本を改訂して今回上演の版を決定版とすることとし、音楽の通し番号も決定したとのこと。これにより今後の上演の規範が整備されたといえよう。

ほぼ20年ぶりに見て、聴いて、筆者自身の感じ方も変化したと感じた。
まず大事なことは、日本語を歌うことがよく考えられた音楽となっていること。第2幕第5場で歌われる赤毛の女のアリア〈偽りの午前零時〉など、聴いていて意味がスッと理解できるという点、よく書けていると思う。
地方オペラという性格から、〈鹿児島おはら節〉と徳之島の子守歌〈ねんねがせ〉が使われている。そのほかにも《魔笛》の三人の侍女の音楽を引用したり、器楽曲も数カ所で登場する。こういった音楽的な遊び、いまでは素直に楽しむことができるようになった。

演奏面でまず挙げたいのは、指揮の大勝秀也のもと東京フィルハーモニー交響楽団が充実した響きを聴かせたこと。電子ピアノでチェンバロ、チェレスタといった楽器の音を作っていたのも効果的であった。
歌手では主役4人、正男の山本、薫の鳥海、垣内教授の山田、赤毛の女の鳥木がそろって安定していた。山本と鳥木の第1幕と第2幕の間に置かれたアントラクトでの複雑な感情の交錯、聴き応えがあった。みな日本語を歌うことが上手になったと思う。

演出面では、台本作者による舞台、設定されたとおりのものが作られている。今後はより柔軟な発想での舞台づくりを期待したい。ジェンダーが主題と考えれば、いろいろ演出を考えることはできるのではないだろうか。

オーケストラ版での東京での再演が充実したものとなったことを喜びたい。

(2022/3/15)

—————————————
<Performer>
Conductor: Shuya OKATSU
Stage Director: Toru TAKAGI

Ijuin Masao: Yasuhiro YAMAMOTO
Ijuin Kaoru: Masako TORIUMI
Professor Kakiuchi: Taichi YAMADA
Ijuin Tadayoshi: Hiroyuki EHARA
Ijuin Hana: Hiroko KINOSHITA
Red-haired woman: Yayoi TORIKI
Mom of Maruchan: Miyako SUZUKI
Takuya: Yuma MATSUBARA
Mihoko: Sayaka KANDA
Mami: Kiyomi YAMABE
Rumi: Kaori TAKAHASHI
Yumi: Misako ENDO

Chorus: Nihon Opera Kyokai Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra
Keyboard: Yasuko MATSUMOTO