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NISSAY OPERA 2021 《カプレーティとモンテッキ》|藤堂清

NISSAY OPERA 2021/ニッセイ名作シリーズ
ヴィンチェンツォ・ベッリーニ:カプレーティとモンテッキ
Vincenzo Bellini : I Capuleti e I Montecchi
オペラ全2幕 原語(イタリア語)上演 日本語字幕付き

2021年11月14日 日生劇場
2021/11/14 Nissay Theatre
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)

〈スタッフ〉        →foreign language
指 揮:鈴木 恵里奈
演 出:粟國 淳
美 術:横田 あつみ
照 明:大島 祐夫(A.S.G)
衣 裳:増田 恵美(モマ・ワークショップ)
舞台監督:山田 ゆか(ザ・スタッフ)
演出助手:橋詰 陽子
合唱指揮:大川 修司

〈キャスト〉
ロメーオ:加藤 のぞみ
ジュリエッタ:オクサーナ・ステパニュック
テバルド:山本 耕平
ロレンツォ:田中 大揮
カペッリオ:デニス・ビシュニャ
管弦楽 : 読売日本交響楽団
合 唱 : C.ヴィレッジシンガーズ

 

オペラ《カプレーティとモンテッキ》の主役はロメーオとジュリエッタ、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」と大筋では同じ、カプレーティ家の令嬢ジュリエッタとモンテッキ家の当主ロメーオの愛と死の物語。オペラが始まる段階では二人はすでに愛しあっており、ロメーオが両家の和解のためにと二人の結婚を求めてくる。カプレーティ家の当主カペッリオは息子をロメーオに殺されており、許すわけがない。ジュリエッタの許婚テバルドとの婚姻をいそがせる。それ以後はよく知られたストーリー。ロレンツォの用意した薬で彼女は仮死状態となり葬られる。墓場の彼女の傍らでロメーオは毒をあおるが、そのとき彼女は息を吹き返す。彼の死に絶望したジュリエッタも後を追う。

第1幕の最初の聴きどころはテバルドのロメーオへの復讐を歌うカヴァティーナと続くカバレッタ、山本は前半たっぷりと歌い上げ、後半は合唱をともない決意を示す。冒頭におかれていることもあり、惹きつけるのはむずかしいところだが、一気に盛り上げた。さて、ロメーオが正体を隠し使者として登場、ロメーオとジュリエッタの結婚と両家の和解を申し出る。加藤の歌うカヴァティーナは厚みのある声で立派なもの。カペッリオは拒絶し、ロメーオは怒りをぶつける。このカバレッタ、ともするとカプレーティ家の合唱に食われてしまいがち。この日もその傾向はみられた。
場面は変わってジュリエッタの部屋、美しいロマンツァ“Oh,quante volte”が歌われる。ステパニュックは声自体は美しいのだが、ときおりコントロールが不安定となるところがあった。単独で歌われる曲だけに完成度を問われるところ。ロレンツォが秘密の入り口からロメーオを引き入れる。一緒に逃げようというロメーオだが、ジュリエッタはためらい、彼は怒りを爆発させる。だが、思い直し彼女への愛を歌う。つづく二重唱までのソプラノとメゾソプラノの掛け合いは美しい響きで、聴き応え十分。
テバルドとジュリエッタの結婚の祝宴にロメーオが潜入、彼女を連れ出そうとするが失敗、彼だけ救出される。

第2幕はジュリエッタのアリアで始まる。テバルドとの婚姻を避けるためロレンツォのすすめる薬をのむ彼女。父カペッリオに別れを告げるカバレッタ、もう一つ突き抜けるものがほしい。
人気のないところでロレンツォを待つロメーオ、そこにテバルドがあらわれ決闘となる。ジュリエッタの死を告げる合唱。二人はそれぞれ自分がその死の原因となったと悲しみにうちひしがれる。ここでの二人の歌の美しさ。
最後は墓場の場面。一緒にきた供を返し一人墓に入ったロメーオはジュリエッタのかたわらで悲しみのアリアを歌う。加藤の均質な声が美しく響く。

歌だけを考えれば水準以上であった。音楽面での不満はそれを支えるオーケストラがベッリーニに期待するメロディーラインを作れなかった点。アンサンブルの面ではまずまずコントロールされてはいたが、音の美しさにとどまり、音楽の美しさには至っていなかった。

このオペラの公演は、NISSAY OPERA 2021として一般向けに2回、ニッセイ名作シリーズとして中高生向けの無料公演として4回、行われている。2組のキャストでの上演なので、それぞれ3回ずつ歌っているわけだ。二期会や藤原歌劇団のような大きな団体の公演でも2キャストで4回が限度、多くのオペラ公演は1日限りという状況と較べると、出演者にとって貴重な機会ということが分かるだろう。この日はオーケストラ、合唱にとっては6回目、歌手にとっては3回目の公演であり、より経験を積んだものとなった。中高生向けの公演はこれからの聴衆を育成する目的もあり、いずれは一般公演の聴き手となって戻ってくることを期待しているのだろう。出演者の選定にあたっても、特定の団体にかたよることなく、日生劇場が独自のオーディションで選ぶことができることもキャスティングの自由度という点で大きなメリットとなっていそうだ。
このような日生劇場の取り組み、今後も楽しみにしたい。

(2021/12/15)

<Staff>
Conductor: Erina Suzuki
Stage Direction: Jun Aguni
Sets: Atsumi Yokota
Lighting: Masao Oshima
Costumes : Emi Masuda
Chorus Master: Shuji Okawa
Assistant Stage Director: Yoko Hashizume
Stage Manager: Yuka Yamada

<Cast>
Romeo: Nozomi Kato
Giulietta: Oksana Stepanyuk
Tebaldo: Kohei Yamamoto
Lorenzo: Taiki Tanaka
Capellio: Denis Vyshnia
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
Chorus: C Village Singers