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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第345回定期演奏会 ストラヴィンスキー没後50周年記念プログラム|大河内文恵

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第345回定期演奏会 
ストラヴィンスキー没後50周年記念プログラム 踊るリズムに刻まれた連綿たる独創性の軌跡
Tokyo City Philharmonic Orchestra the 345th Subscription Concert 

2021年10月14日 東京オペラシティ コンサートホール 
2021/10/14  Tokyo Opera City Concert Hall
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
写真提供:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<出演>        →foreign language
指揮(常任指揮者):高関健
コンサートマスター:荒井英治
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<プログラム>
ストラヴィンスキー:小管弦楽のための組曲 第2番
         :バレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」

~休憩~

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「カルタ遊び」
         :3楽章の交響曲

 

ストラヴィンスキーの新古典主義時代の作品4曲という、一見、地味にもみえるプログラムがこんなにも心躍る演奏会になるとは、想像の及ばぬところであった。

《小管弦楽のための組曲 第2番》は、ミヨーかプーランクの作品だと言われても、そのまま納得してしまいそうになる作品。ストラヴィンスキーの新古典主義というより、フランス六人組の作品にかなり近く、変拍子や不協和音を含む独特の和声など、聞いていて心が浮き立つ。プレトークで「今日の作品は振るのが難しく、間違えたらオケが困る作品」と高関が笑いを取っていたが、まさにその典型。

続くバレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」は、プレトークで「留学時代、カラヤン指揮で何度も聴いた。カラヤンの得意な曲だった」と高関が語ったもの。なるほど、R.シュトラウスを思わせるような後期ロマン派っぽい少し重厚で流れるような旋律はいかにもカラヤンが好みそうな曲想である。かと思うと、第2場の「カリオペの踊り」では、面白い音使いとリズムを巧みに聴かせ、カラヤンというよりは最近のピリオド系の指揮者が振るような軽妙さで、思わず笑みがこぼれ、「テレプシコーレ」でのダンサーのステップが見えるかのような音作りも見事。随所でヴァイオリン、チェロらのソロも光った。

30分ほどの曲があっという間のように感じたのは、どことなくどこかで聞いたことがあるような既視感をもつ親しみやすい音楽であること、バレエ音楽らしい弾むような感覚、そしてカラヤンが愛したと思われるロマン的な響きなどによるものであろう。最初の曲が小編成であったこともあり、「オーケストラっていいな」と感慨がわきあがる。

休憩後は同じくバレエ音楽の「カルタ遊び」。こちらは高関いわく、アバドの得意曲であったそうで、さまざまな引用を散りばめながらも、引用元の魅力に頼ることなく、いかにもモダン・バレエの曲らしい弛緩と収縮とを感じさせる音楽が続く。

今回のプログラミングにあたって、高関は作曲順に並べたと話していたが、それが想像以上の功を奏していたようだ。というのも、同じ新古典主義の音楽といっても、1曲1曲まったく雰囲気が違うのがよくわかるのみならず、演奏が進むにつれて、演奏者も聴き手もボルテージが自然に上がっていくのだ。

最後の《3楽章の交響曲》は、いかにも「アメリカ!」と感じられる曲で、ウエスト・サイド・ストーリーを思わせる部分がある。いや、ウエスト・サイド・ストーリーは1957年初演だから、バーンスタインのほうが真似をしたのだが。この曲はバーンスタイン&ニューヨーク・フィルの演奏で高関が聞いているというのも、その裏付けとなろう。最後は客席も大盛り上がりで、拍手がいつまでも止まなかった。

演奏そのものの良さはもちろん、高関がカラヤン、アバド、バーンスタインという20世紀を代表する指揮者たちへの敬意込めて彼らの代表的な演奏曲を選曲したことが演奏からも伝わってきた。さらに、今日の演奏を通して、カラヤン・アバド・バーンスタインにも触れられたような気がした。そういった意味でも、よくできたプログラムだと思う。

新古典主義の音楽というと、「古いものへの回帰」として後ろ向きの動きのようにとらえられがちであるが、ストラヴィンスキーのこの4曲を聞いただけでも、一言ではあらわせないような多様性をもち、歴史的変遷の経過が感じられる。また、アメリカ人あるいはアメリカ生まれの作曲家の音楽で構成されると考えられる傾向のある「アメリカの音楽」にも、ストラヴィンスキーの音楽を補助線とすることによって、新たな面がみえてくるのではないかとも思われた。

没後50周年というアニバーサリーは、少し前までは盛大に祝われるものだった。著作権が切れてパブリックドメインになるお祝い(?)だからだ。日本では戦時加算があるため、50年ではなかったのだが、それはさておき、今や保護期間は70年になり、パブリックドメインになるという意味合いはなくなってしまった。とはいえ、50年というキリのよい記念の年のわりに、それほど盛り上がっているように見えないのはコロナ禍のせいなのか。

そんな中で、いわゆる有名曲を入れずにストラヴィンスキー特集を組み、ここまで成功させた手腕には感嘆するほかない。あちこちのソロの快演を含め、指揮者の要求にしっかりと応えた楽団員たちにも改めて拍手を送りたい。

(2021/11/15)


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Players:
Ken TAKASEKI, Conductor (Principal Conductor)
Eiji ARAI, Concertmaster

Program:
I.F.Stravinsky: Suite No.2 for small orchestra
      : “Apollon musagète” ballet en deux tableaux

–intermission—

I.F.Stravinsky: “Jeu de Cartes”
      : Symphony in three movements