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Pick Up(2021/10/15)|第109回舞台芸術講座 青島広志の「もっと知りたい!創造する女性!」|大河内文恵

第109回舞台芸術講座 青島広志の「もっと知りたい!創造する女性!」

2021年9月25日 神奈川県民ホール 小ホール
2021/9/25  Kanagawa Kenmin Hall Small Hall
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
写真提供:神奈川県民ホール

<出演>        →foreign language
  青島 広志(お話・ピアノ)
  横山 美奈(ソプラノ)
  飯野 明日香(ピアノ)
  甲斐 史子(ヴァイオリン)
  新井 幸子(チェロ)

<曲目>
セシル・シャミナード:「子どものアルバム 第1集 Op.123」より “前奏曲”
マリア・テレジア・フォン・パラディス:シチリアーノ
クララ・シューマン:蓮の花 Op.13-6、すみれ
ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:ピアノ・ソナタ ハ短調 より 第2楽章
アルマ・マリア・マーラー:「5つの歌曲」より“恍惚”
セシル・シャミナード:「子どものアルバム 第1集 Op.123」より “ガヴォット”
リリ・ブーランジェ:行列
テクラ・バダジェフスカ:乙女の祈り
エヴァ・デラックア:ヴィラネル
リリウオカラニⅡ世:アロハ・オエ
ジョン・ダグラス・スコット夫人:アニー・ローリー

~休憩~

幸田延:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 より
松島彜: “真珠”
関屋敏子:オペラ「お夏狂乱」より
渡鏡子:ピアノ、ヴァイオリンとチェロのためのトリオ

~アンコール~
松島彜:“おうま”

 

クラシック音楽を聞く人で、青島広志氏の名前を知らない人はいないだろう。音楽番組のみならず、Eテレなどでもおなじみの青島氏が開催する「お話」と音楽の講座(決してレクチャーコンサートではない!)。女性作曲家を取り上げるコンサートは時折見かけるけれど、そこに日本の女性作曲家が含まれることはかなり稀である。今回、幸田延、松島彜、関屋敏子、渡鏡子と日本の作曲家が4人も取り上げられていることもあり、コロナ禍以降、県境を越える演奏会は自粛してきたのだが、思い切って神奈川まで遠征した。

テレビの通り、というよりテレビで見るよりさらにパワーアップした青島のトークと、青島直筆のイラスト(これが上手い!)で、話がぐんぐん進む。とりわけ心にずっしり来たのは、夫や家族に作曲することを止められたというエピソードを持つ女性作曲家の多さである。クララ・シューマンはロベルトと結婚以降、作曲することを禁じられ、結婚以前の作品しか残っておらず、マーラーの妻であるアルマ・マーラーも結婚前の作品しかない。

若い頃の習作に近いような作品だけをみて稚拙だということは簡単だが、その背景を知ると、彼女らが作曲を続けていたら、どんな素晴らしい作品を残しただろうか、もしかしたらそれを彼女らの夫たちは恐れたのではないかいうと妄想が頭をもたげる。

後半の日本の女性作曲家でも事情は変わらない。日本の西洋への音楽留学生第1号だった幸田延は、帰国後東京音楽学校(現:東京芸術大学)の教師となるが、排斥運動がおこり、退職を余儀なくされた。また、「日本で初めて『作曲家』として活躍した女性」(パンフレットより)とされる松島は、東京音楽学校に進学することを家族から反対され、「音の研究をする」という口実を作って説得したという。

女性であること、音楽の道に進むということという二重の障害が彼女たちの行く手に立ち塞がっていたことを考えると、東京音楽学校作曲部の第1期生に渡鏡子がいたことは奇跡的な出来事に感じられる。
渡のピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重奏曲は、東京芸術大学の図書館にある楽譜を青島が苦労してコピーを入手し、渡の娘さんである慶野由利子氏に未完の部分の補筆を依頼し、完成させたものであるという。渡はドヴォルザークとスメタナの伝記の執筆者でもあり、スラヴ系の音楽への造詣が深く、このトリオにもその片鱗が見られる。のみならず、後期ロマン派を思わせる息の長い旋律や、リズミックな部分もあり、聞きごたえのあるものだった。今回演奏されなかった2楽章も含め、いずれ完全版を演奏する予定とのことなので、それを楽しみにしたい。

(2021/10/15)

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Players:
AOSHIMA Hiroshi: Lecturer, Piano&Organ
IINO Aska: Piano
YOKOYAMA Mina: Soprano
KAI Fumiko: Violin
ARAI Sachiko: Cello

Program:
Cécile Chaminade: “Album des enfants Op. 123” Intermezzo / Organ
Maria Theresia von Paradhis: Siciliano / Violin & Piano
Clara Schumann: Die stille Lotosblume / Soprano & Piano
C. Schumann: Das Veilchen / Soprano & Piano
Fanny Mendelssohn-Hensel: 2nd mov from Klaviersonate c moll / Piano
Alma Maria Mahler: Ekstase / Soprano & Piano
Cécile Chaminade: “Album des enfants Op. 123” Gavotte / Organ
Lili Boulanger: Cortège / Violin & Piano
Tekla Bądarzewska-Baranowska: A Maiden’s Prayer / Piano
Eva Dell’Acqua, arr.AOSHIMA Hiroshi: Villanelle /Soprano, Piano & Violin
Kady John Douglas Scott, arr.H.AOSHIMA: Annie Laurie / Soprano, Violin & Cello
Lydia Lili’uokalani, arr. H. AOSHIMA: Aloha ‘Oe / Soprano, Piano, Violin & Cello

–intermission—

KODA Nobu: 2nd & 3rd mov. From Sonata for Violin and Piano in F flat Major
MATSUSHIMA Tsune: Shinju / Soprano, Piano & Cello
SEKIYA Toshiko: Excerpt a quote from the Opera “Onatsu Kyoran” / Soprano & Piano
WATARI Kyoko: Trio für Klavier, Violine und Violoncello

–Encore–
MATSUSHIMA Tsune: Ouma