注目のコンサート|2020年3月
♩2/29、3/1 ヘンデル《シッラ》全3幕
ファビオ・ビオンディ指揮 エウローパ・ガランテ
神奈川県立音楽堂の開館65周年を記念する公演、音楽堂室内オペラ・プロジェクトと銘うち、1月に上演した現代オペラ《サイレンス》とバロック・オペラ《シッラ》を紹介する。ビオンディはこの劇場3回目の登場となる。ヘンデル作曲の《シッラ》は初演の記録もなく、埋もれた存在であったが、20世紀後半のヘンデル・ルネサンスの中でようやく取り上げられるようになった。ビオンディは2017年にCD録音を行い、それに合わせ演奏会形式の上演を続けてきた。今回はその時と同様バロックを得意とする歌手たちとともに、彌勒忠史の演出による舞台上演を行う。
2/29,3/1@神奈川県立音楽堂
https://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=36013
昨今、活躍めざましいフランツ・リスト国際コンクール覇者の阪田による3部構成のリサイタル。第1部モーツァルト、シューマン、第2部リスト、第3部リスト、チャイコフスキー、クライスラー、ショパン、ヴェルディ名曲編曲集とあれこれ楽しめそうなプログラミング。軟硬幅広いピアニズムをゆっくり堪能できそうだ。
3/1@横浜みなとみらいホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=793
♩3/1 井上郷子ピアノリサイタル#29 松平頼則・松平頼暁ピアノ作品集
今年のリサイタルで井上が披露するのは、松平頼則、松平頼暁のピアノ作品。日本の現代音楽をリードしてきた作曲家父子の作品が並べて演奏される。両者の差異や共通点に思いを馳せるまたとないこの機会に、是非足を運びたい。
3/1@東京オペラシティ・リサイタルホール
https://www.n-b-music.com/concert-information-3
♩3/3 ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ
~華麗なる、イタリアンバロックの世界~
ビオンディ&エウローパ・ガランテが1991年にOPUS111レーベルへ録音したヴィヴァルディの『四季』はそのアグレッシヴさでそれまでの『四季』像を大きく修正したものだ。そこに洗練の度合いを増した2000年の再録音盤からさらに20年を経ての今回の来日公演における同曲演奏、どう進化/深化しているのか。誠に楽しみ。
3/3@王子ホール
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2019/20200303.html
♩3/4 白井光子・ハルトムート・ヘル リート・デュオ・リサイタル
50年近くにわたって続けられてきた白井光子とハルトムート・ヘルのリート・デュオ、彼等の存在はドイツ・リートの世界においても、継続的な音楽的関係を持つペアが重要であることを認識させるものであった。続く世代の歌手の多くが同じピアニストとともに活動し、より深い歌曲の世界を作り出す、その契機をつくったといってよいであろう。白井とヘルのリサイタル、東京では2017年10月に同じ第一生命ホールで行って以来。プログラムはシューベルトとマーラーの歌曲、マーラーは《大地の歌》から第6楽章〈告別〉。今年73歳となる白井のこの曲への想いをしっかりと胸に刻みたい。
3/4@第一生命ホール
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2020/03/04/3118/
3/6@いわきアリオス音楽ホール
https://alios-style.jp/cd/app/?C=blog&H=default&D=01873
♩3/4 アンサンブル九条山コンサートvol. 10 標(しるし)ーSigne
京都を拠点に活躍するアンサンブル九条山の活動から今、目が離せない。この10回目の公演では、初めて邦人作曲家に焦点を当てる。そればかりか、35歳以下を対象に作品を公募するとともに、注目の若手作曲家、坂田直樹に新作も委嘱し、それらの初演を行う。解説を交えた親しみやすい公演を行うことでも知られるこのアンサンブルが、日本の次世代の音楽をどのように魅せてくれるのか。ぜひ注目したい。
3/4@京都市国際交流館イベントホール
http://ensemble-kujoyama.blogspot.com/
♩3/6、7 日本フィルハーモニー交響楽団第718回定期演奏会<春季>
今飛ぶ鳥を落とす勢いのシンガポールの若手指揮者、カーチュン・ウォン。我が国においては既に読響、東京フィル、新日本フィルなどに登壇していずれも好評を博したが、今回日本フィルとの初共演が実現。メインのマーラーの第5はもちろんのこと、日本フィルのソロ・トランペット奏者、オッタビアーノ・クリストーフォリによるアルチュニアンの協奏曲も必聴。
3/6,7@サントリーホール
https://www.japanphil.or.jp/concert/23659
1990年モスクワ生まれ。モスクワ音楽院へ進み2019年チャイコフスキー国際コン2019でブレイクの新鋭コパチェフスキーによるオール・ショパン・プログラム。ポロネーズ、即興曲、ワルツ、マズルカ、スケルツォなど綺羅星のごとき名曲が並ぶ。ショパン好きにはたまらない。TVを通じ日本でも人気沸騰、才気あふれる演奏に期待だ。
3/8@ヤマハホール
https://www.yamahaginza.com/hall/event/004123/
アコーディオンの新たな地平を開拓している逸材・大田智美が、アコーディオンソロ作品と、弦楽5人を集めてのアンサンブルに挑む。ドメニコ・スカルラッティやJ.S.バッハがアコーディオンではどう響くのか、細川俊夫のアコーディオンソロ曲の生演奏などにも興味津々であるが、なんといっても異才・野村誠のアコーディオン協奏曲室内楽版日本初演に心動かされる。大田のアコーディオンによって現代のその先の音楽が聴こえてくることを期待したい。
3/10 14:30開演(昼公演)、19:00開演(夜公演)@豊洲シビックセンターホール
http://www.tomomiota.net/schedule20200310.html
♩3/11 ジャナンドレア・ノセダ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団
アメリカのいわゆるメジャー・オーケストラの中ではいささか地味な存在との認識が一般的であろうワシントン・ナショナル交響楽団。この度2017/2018年のシーズンから当オケの音楽監督を務めるジャナンドレア・ノセダとなんと21年振りの来日。3月11日のコンサートではシューベルトの『未完成』とマーラーの第5という「ど真ん中」の名曲でその真価を問う。
3/11@東京芸術劇場
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=789
現代日本を代表するヴァイオリニスト・諏訪内晶子が、世界から選りすぐりの精鋭を集めて室内楽演奏会を開催する。11日は「クラシック」、13日は「現代音楽」と分けての演奏会だが、「J.S.バッハとブラームスとドヴォルザーク」「ライヒと川上統とダルバヴィとオーンスタイン」という、1つの演奏会内で明らかに色彩の異なる作家・作品を選んだその意図やいかに。是非2回を通して鑑賞してみたい企画だ。
3/11(クラシック)3/13(現代音楽)@紀尾井ホール
https://www.japanarts.co.jp/imfn/information/04/
♩3/13 すみだ平和祈念音楽祭2020 マルタ・アルゲリッチ 藤倉大 そしてヒロシマ
広島交響楽団平和大使を務めるアルゲリッチが同団とともに提唱してきたMusic for Peace。今年は8月に世界のオーケストラ奏者20名を招聘してベートーヴェンの「第九」を演奏する他、藤倉大の新作《ピアノ協奏曲第4番「明子のピアノ」》を世界初演する。それに先立ち、すみだ平和祈念音楽祭にてアルゲリッチ、藤倉も登壇するトーク・セッションを行うとともに、藤倉の新作からカデンツァのピアノ独奏部分をアルゲリッチが披露。そのほか、ベートーヴェンの《三重協奏曲》の演奏など、盛りだくさんの公演が行われる。平和にかける作曲家、演奏家の思いを、トークと音楽の双方から聞くことのできる貴重な機会となりそうだ。
3/13@すみだトリフォニー・ホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2019-06-003476.html
♩3/13 フィリップ・ジャルスキー& アンサンブル・アルタセルセ
カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーが自身のアンサンブルとともに来日する。
41歳ともっとも充実した時期をむかえた彼のヴィヴァルディ、ヘンデルのアリアは、声の美しさ、技巧にとどまらず、オペラの舞台を彷彿とさせるものとなるだろう。近い将来、日本でも、彼の世代のすぐれたカウンターテナーを集め、カストラート全盛期の舞台を再現してほしいものだ。
3/13@東京オペラシティコンサートホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=9505
毎年桜の花の時期に上野を中心とするエリアで行われてきている東京・春・音楽祭、今年で16回目となる。期間が長い上に同じ時間帯に複数の公演が行われることもあり、どちらを選ぶか悩む場合もある。3月中の注目は、まずリッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」とヴェルディの《マクベス》公演、アカデミー受講生による抜粋公演。また、2020年がベートーヴェン生誕250年の記念の年ということで、彼のピアノ三重奏曲全曲をTrio Accord(白井 圭Vn、門脇大樹Vc、津田裕也Pf)が3回に分けて取り上げる。恒例の東京春祭マラソン・コンサートも「ベートーヴェンとウィーン」というテーマで1日のうちに5部にわたり演奏が行われる。昨年から始まった「子どものためのワーグナー」、本公演の演目と同じ《トリスタンとイゾルデ》を3月末から4月初めにかけて上演する。新たな聴衆の獲得につながることを期待したい。
3/13~4/18@東京文化会館大ホール他
https://www.tokyo-harusai.com/
音楽監督小泉和裕のタクトのもと、16年ぶりの東京公演を行う九州交響楽団。ベートーヴェン「交響曲 第4番」とR.シュトラウス「英雄の生涯」という堂々たるプログラム。2018年九響創立65周年記念でのマーラー演奏も記憶に新しいが、秋山和慶の後を引き継いだ小泉との7年の成果が聴ける。
3/14@サントリーホール
http://kyukyo.or.jp/cms/11235
♩3/15 クァルテット・エクセルシオ×タレイア・クァルテット
結成25年を迎えたエクセルシオSQと新世代タレイアSQの組み合わせで楽しむ四重奏と八重奏。タレイアは2014年東京藝大在学時に結成、ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015 第3位、第3回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第2位受賞など今後の活躍が期待されるクァルテット。ベテランと新進が向き合うガーデの八重奏、化学反応が楽しみだ。
3/15@第一生命ホール
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2020/03/15/2896/
♩3/19 小倉美春コンサートシリーズ ~「ピアノのために書く」とは
~vol. 2 ハインツ・ホリガー『パルティータ』をめぐって
ピアニスト・作曲家の小倉美春によるコンサートシリーズ 「『ピアノのために書く』とは」の2回目となる公演。スイス出身の音楽家、ハインツ・ホリガーの〈パルティータ〉を中心にして、プログラムには他のスイスの作曲家の作品、バッハの〈パルティータ〉が並ぶ。そしてまた、小倉の新作初演も。この布置のなかで彼女がどういった作品を書くのか、今から楽しみである。
3/19@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://tocon-lab.com/event/20200319
ヴィーナスの息子アモーレと美しい人間の娘プシケの愛の物語。カウンターテナーの彌勒忠史と紀尾井ホールがプロデュースし、日本舞踊と現代舞踊、能舞の踊り手と、バロックオペラの名歌手陣、そしてスーパー古楽集団アントネッロという異分野の競演で作り上げる、ミュージカル仕立ての新作舞台。演奏予定曲目には、モンテヴェルディ、フレスコバルディ、カッチーニ、メールラ、パーセルといった古楽の作品が並ぶ。このような音楽とさまざまな分野の踊りがどのようにからみ、化学反応を起こすか、見届けたい。
3/19,20@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20200319k1800.html
昨年7月の東京公演ではブラームスのセレナード第1番を取り上げたミンコフスキ&OEK、今年はその第2番。そこにブリテンの同じセレナード(トビー・スペンスのテノールとヨハネス・ヒンターホルツァーのホルンも聴き物)、メインはドヴォルザークのスラヴ舞曲全曲。ミンコフスキがこの曲集の1曲1曲を持ち前の表現力を以てどう料理するのか興味は尽きぬ。
3/23@サントリーホール
http://www.oek.jp/event/2350-2
3/25、27 大島莉紗、ロマン・ミンツ 2台ヴァイオリンリサイタル「音楽の架け橋」
受賞歴多数、また2016年にリリースしたプロコフィエフ・ヴァイオリン作品集のCDが世界的に高い評価を受けた大島莉紗が、ロシア生まれのヴァイオリニスト・ロマン・ミンツと2台ヴァイオリンリサイタルを開催する。ヒンデミット、プロコフィエフ、ヴァインベルク、シュニトケ、そして高橋悠治とフィラノフスキー(委嘱新作)という攻撃色に染まりきった選曲だけで驚かされる。これは絶対に何かが起こるに違いない。
3/25@横浜みなとみらい小ホール
3/27@豊洲シビックセンターホール
https://atelier-canon.jp/office/20200325-27lisaoshima/
♩3/26 アンサンブル・コンテンポラリーα『歪み、隔たり、ベートーヴェン』
ベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーである2020年、アンサンブル・コンテンポラリーαは彼の真っ直ぐな音楽に「歪み」と「隔たり」という視点を加味して21世紀の音楽創造に挑む。昨年の芥川作曲賞で大きな注目を集めた北爪裕道の委嘱新作初演にも心躍る。
3/26@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.contemporary-alpha.com/post/20200326
♩3/28 パラグナ・グループによるガムラン曼荼羅”響きの回廊へ”
インドネシア・スンダ(西ジャワ)音楽のグループとして、東京を拠点に活動しているパラグナ・グループが藤枝守の現代作品を、中世ゴシックハープの西山まりえ、笙の石川高、そして佐藤夏美とリアントによるジャワの舞踊と共に上演する。この日本とジャワだけに留まらない国境や時代や文化を越えたコラボレーションによっていかなる曼荼羅模様が広がるのか興味深々である。
3/28@トーキョーコンサーツ・ラボ
https://tocon-lab.com/event/20200328