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エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団|藤堂清

エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団
Esa-Pekka Salonen conducts Philharmonia Orchestra

2020年1月23日 東京芸術劇場コンサートホール
2020/1/23 Tokyo Metropolitan Theatre
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by Hikaru.☆/写真提供:東京芸術劇場

<演奏>        →foreign language
指揮:エサ=ペッカ・サロネン
   (首席指揮者&アーティスティック・アドヴァイザー)
ヴァイオリン:庄司紗矢香(*)
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

<曲目>
ラヴェル:組曲《クープランの墓》
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47(*)
————-(ソリスト・アンコール)————
パガニーニ:パイジェッロの《うつろな心》による序奏と変奏曲より”主題”(*)
——————–(休憩)———————
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》

 

コンサート後半の《春の祭典》での指揮者とオーケストラの集中力のすさまじさに圧倒された。

エサ=ペッカ・サロネンが2021年でフィルハーモニア管弦楽団から離れると発表されており、彼が首席指揮者としてこのオーケストラと来日する最後となるツァー。
この日のプログラムには、トルルス・モルクをソリストとするサロネンのチェロ協奏曲が予定されていたのだが、彼が来日不可能ということで曲目とソリストが変更となった。作曲家の自作自演を楽しみにしていたので残念。

プログラムの一曲目、ラヴェルの組曲《クープランの墓》、このオーケストラにしては合奏の精度が悪い。サロネンのラヴェルはオーケストラの精妙な音が保たれたまま、熱気のこもったフレーズが浮き上がってくるという印象があったのだが、その前段がくずれるとまずそちらへの対処が優先となり、より繊細な表情付けは後回しということになる。全体として平板なまま終わってしまった。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲、独奏の庄司紗矢香はこの曲を内外のオーケストラと共演している。冒頭の弦楽器の弱音の上にのる独奏ヴァイオリンがしっかりした音で入ってくる。楽譜の指定はmfだからおかしくはないのだが、オーケストラと対決するように聴こえドキッとする。普段聴き逃していただけかもしれないが、あれっと思う箇所がところどころで出てくる。オーケストラのミスもあり筆者の耳がそちらに向くこともあったが、以前聴いたときの印象とはずいぶん違う独奏パートであった。庄司の攻めの姿勢がすべて成功していたわけではなく、オーケストラとのズレが生まれることもあり、指揮者が細かく指示する場面もあった。曲目、ソリストの変更、来日直後、という条件のもとどれほどの準備ができていたか分からないが、実演ならではのスリルを味わった。


後半はストラヴィンスキーの《春の祭典》。これはオーケストラにとってお手のもののレパートリーだろう。もちろんサロネンもたびたび取り上げてきているはず。
この日の演奏、最初にふれたように指揮者とオーケストラががっちりと組み合い、熱量の高い演奏となった。以前のサロネンとロサンジェルス・フィルハーモニックの録音では、リズム、楽器のバランスなど、精緻で透明感があり、なおかつ爆発的な力に満ちたものであった。この日の演奏は、精緻さよりその場での感情を表に出し、テンポの変化、楽器のバランスの変化などを加え、より表情付けの強いものとなった。サロネンがこのように曲全体で「熱い」演奏をすることは今まであまりなかったように思う。その指示を受け止め、オーケストラが全体としてやはり熱く燃えて演奏しているように感じられた。
録音で聴けばキズはあるだろうが、これこそ一期一会の体験。空席が目立った客席も熱狂につつまれた。

関連評:東京芸術劇場 海外オーケストラシリーズ サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団 |藤原聡

(2020/2/15)

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<Performer>
Conductor:Esa-Pekka Salonen, Principal Conductor & Artistic Advisor
Violin:Sayaka Shoji
Orchestra:Philharmonia Orchestra

<Program>
Ravel : Le tombeau de Couperin
Sibelius : Violin Concerto in d-Minor, op.47
————–(Encore by the soloist)—————-
Paganini : Introduction and Variations on ‘Nel cor piu non mi sento’ – Theme
——————(Intermission)———————
Stravinsky : The Rite of Spring