注目のコンサート|2020年2月
邦人作曲家によるチェロ独奏曲の中ではもっとも演奏されている作品の一つ、黛敏郎の《BUNRAKU》。この度、その大元となる「文楽」と共演するという、夢のような話が実現することとなった。独奏するのは若手実力者の宮田大。かたや人形遣いは三世桐竹勘十郎。《BUNRAKU》=「文楽」の魅力を探るまたとない機会となりそうだ。他にバッハの《無伴奏チェロ組曲第1番》より〈プレリュード〉、《本朝廿四孝》より〈奥庭狐火の段〉を上演予定。
2/1@ワキタコルディアホール(旧イシハラホール)
https://daimiyata.com/concert/桐竹勘十郎人形x宮田大チェロ 文楽の魅力
吉田秀和の想いがこもった水戸室内管弦楽団創立30周年記念特別演奏会。小澤征爾のもと世界で活躍する腕っこきを集めた創立メンバーから早30年、新旧入り混じってのチャイコフスキー『弦楽セレナード』第1楽章、バッハ『ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲』豊嶋泰嗣vn、フィリップ・トーンドゥルob、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編曲)『アイネ・クライネ・シンフォニー』(吉田・MCOへの献呈作)にバルトーク、メンデルスゾーンと盛りだくさんの祝祭プログラム。
2/1,2@水戸芸術館コンサートホールATM
https://www.arttowermito.or.jp/mco/concert/single.php?id=article_4103
フランソワ=グザヴィエ・ロト、2016年4月以来の都響登壇では待望の『ダフニスとクロエ』全曲を取り上げる。この指揮者が指揮台に立つと、竹を割ったような明快なリズムと原色的な色彩の乱舞、そしてユニークな表現が溢れ出る。ラヴェルの最高傑作をどう料理してくれるのか。期待するなと言う方が無理。ラモーとルベルもまた名演の予感。
2/2@サントリーホール 都響スペシャル
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3257
2/3@東京文化会館 第896回 定期演奏会Aシリーズ
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3258
♩2/3 通奏低音組合 第5回公演《息吹き 〜 ギャラント音楽を彩る通奏低音の世界》
2017年に始動した「通奏低音組合(コンティヌオ・ギルド)」の第5回公演。今回のゲストはフラウト・トラヴェルソの菅きよみ。フルート奏法書で名高いクヴァンツを軸に、彼が活躍したドレスデンとベルリンの同時代の作曲家の作品を取り上げる。通奏低音が18世紀半ばにどのように変貌したのか、見届けたい。
2/3@近江楽堂
https://www.facebook.com/continuoguild/
♩2/4 ジャン・チャクムル ピアノ・リサイタル
浜松国際ピアノコンクールの覇者、ジャン・チャクムルのリサイタル。トルコ生まれ、パリに学びドイツのワイマール音大で研鑽を積む新進ジャン・チャクムル。ベーゼントルファーで聴くシューベルトの『白鳥の歌』(リスト編)が大注目だ。なお、当初予定のE.ドメネク『シューベルト/リスト: 白鳥の歌への前奏曲』が『ピアノのための短編小説より 第4曲 “かくれんぼ”』に変更となった。他にスカルラッティのソナタ4曲。(チケット完売)
2/4@Hakuju Hall
https://www.hakujuhall.jp/syusai/216.html
洒脱なフランスの名匠、というだけでは足りない。なるほど洒脱さはある。だがダルベルトの演奏にはある種の求道者的なストイックさ、と言うか貴族主義的な高貴さが常に漂う。今回の王子ホールではドビュッシーの前奏曲集第1巻、第2巻を一夜で演奏。ミケランジェリを彷彿とさせるような孤高の名奏を期待。
2/5@王子ホール
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2019/20200205.html
2/7@ザ・フェニックスホール
https://phoenixhall.jp/performance/2020/02/#anchor7
ヒンデミットから夏田昌和の委嘱初演に至るまで、1955~2020年までの75年間のうちに書かれたチューバ・ソロ作品が堪能できるコンサート。注目はやはり、日本初期のチューバ作品である甲斐直彦と金光威和雄のもの。20世紀中盤から21世紀に至るまでの現代音楽の様相を、チューバで描き切る試みに期待したい。
2/5@杉並公会堂小ホール
https://tiget.net/events/73364
♩2/6 ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)美しき水車小屋の娘
ディートリヒ・ヘンシェルは1967年ベルリン生まれのバリトン、20代には岡原慎也のピアノで日本でのリサイタルを数多く行っていた。オペラに歌曲にと活躍の場が拡がり、来日の頻度は少なくなっていた。今回、東京では3年ぶりのリサイタルが、二人による《美しき水車小屋の娘》のCDリリースを記念して開催される。ヘンシェルによるこの曲の録音は彼が30歳のもの、若々しい声が魅力。それから20年、彼の円熟した歌い口は、以前のものとは違う表情を見せてくれるだろう。同じプログラムによるコンサートは他の3箇所でも予定されている。また、札幌交響楽団の東京公演にも出演する。
2/6@東京文化会館小ホール
http://opus-one.jp/concert/ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)美しき水/
2/2@札幌コンサートホールKitara小ホール
http://opus-one.jp/concert/ディートリヒ・ヘンシェル-バリトンリサイタル<k/
2/8@教信寺法泉院 奏楽堂
http://opus-one.jp/concert/ディートリヒ・ヘンシェルバリトンと-岡原-慎也/
2/9@米子市文化ホール
http://opus-one.jp/concert/ディートリヒ・ヘンシェルバリトン-岡原-慎也ピ/
2/7@サントリーホール(マーラー:亡き子を偲ぶ歌)
ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)札幌交響楽団2020東京公演
http://opus-one.jp/concert/ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)札幌交響/
♩2/6,8,11,14,16 新国立劇場 ロッシーニ:セヴィリャの理髪師
ベルカント・オペラの演目として新国立劇場ではもっとも上演回数が多いものだろう。それだけ人気があるということだが、登場した歌手も高いレベルで揃えられていることが多かった。今回も負けてはいない。アルマヴィーヴァ伯爵にルネ・バルベラ、ロジーナに脇園彩、フィガロにフローリアン・センペイと、30代の注目の歌手を集めた配役は大いに期待できる。指揮のアントネッロ・アッレマンディは堅実な音楽を聴かせてくれるだろう。ヨーゼフ・E. ケップリンガー演出の舞台は2005年のプレミエ以降、今回が5回目となる。再演演出でも、歌手の動きなどオリジナルの指示をきちんと反映していってもらいたい。
2/6,8,11,14,16@新国立劇場
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/ilbarbieredisiviglia/
♩2/7 日本の作曲家AプロJFCニューカマーズ 神田佳子と仲間たちによる打楽器作品展
2011年に開始したJFCニューカマーズ、第10回の今回をもってシリーズを一旦閉じるという。最後を飾るのは打楽器の名手神田佳子とその仲間、そして未来を信じる作曲家たちである。彫琢されたエクリチュールか、奇想に満ちたアイディアか、未踏の音楽世界に足を踏み入れる体験を期待したい。
2/7@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.jfcomposers.net/演奏会/日本の作曲家aプロ/
♩2/8、9 トレヴァー・ピノックのモーツァルト『レクイエム』
古楽界の重鎮ピノックが紀尾井ホール室内管弦楽団創立25周年記念に4年ぶりの帰還、得意のモーツァルト尽くしだ。『ト短調交響曲』に加え、『アヴェ・ヴェルム・コルプス』『レクイエム』と、天上に舞い上がりそうなプログラム。独唱陣は望月万里亜、青木洋也、中嶋克彦、山本悠尋で青木のカウンターテナーなど楽しみな顔揃え。モーツァルトのなんたるにただただ身をまかせる一夕となるに違いない。
2/8@紀尾井ホール
https://kioihall.jp/20200209k1400.html
♩2/8 高崎芸術劇場開館記念 パーヴォ・ヤルヴィ&NHK交響楽団 高崎公演
パーヴォはラフマニノフの交響曲第2番を既にシンシナティ響と録音、我が国でも同オケの来日公演で演奏しているが、今回はN響と待望の再演。サントリーホールでのB定期と同一プログラムを昨年9月に開館したばかりの高崎芸術劇場へ持って行ってのパーヴォ&N響、同ホールデビュー公演。演奏とホール、どちらも楽しみなコンサート。
2/8@高崎芸術劇場
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/concert_detail.php?key=24
現代音楽を中心に毎回ユニークな仕掛けを施すいずみシンフォニエッタ大阪。今度の定期では、なんと室内オーケストラの編成でマーラーの大曲《大地の歌》を取り上げる。もちろん、原曲そのままではなく、同楽団のプログラム・アドバイザーで作曲家の川島素晴がテノール(望月哲也)とバリトン(大西宇宙)による独唱版として編曲したものを演奏(指揮は常任指揮者の飯森範親)。他に、中村滋延による新作の世界初演も行われるなど、今回もやはり目が離せそうにない。
2/8@いずみホール
http://www.izumihall.jp/sinfonietta/
2017年にミュンヘン国際音楽コンクールで第3位及び委嘱作品特別賞を受賞した久末航。ブラームスのピアノ・ソナタを毎年1曲、計3年にわたって全曲演奏するシリーズに取り組んできたが、本公演でいよいよフィナーレを迎える。本公演ではそのソナタの第3番を、他にブラームス編曲によるバッハの「シャコンヌ」(左手のための)、スカルラッティやシマノフスキなどを取り上げる。知性的な演奏で将来が期待される若きピアニストがどのようにロマン派の巨匠に挑むのか、ぜひ聞いておきたい。
2/9@滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール小ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/2019/09/13/2019-20-premium35-3.html
♩2/9、16、22 全国共同制作オペラ『ラ・トラヴィアータ』
白河、金沢、東京の各公共ホールが共同制作の新演出『ラ・トラヴィアータ』。スウェーデン・ヨーテボリ国立歌劇場総監督H.シェーファー(指揮)にクリエイター集団ニブロール主宰矢内原美邦がオペラ初演出、新たなステージが生まれる。ヴィオレッタにはエヴァ・メイを迎え、アルフレード宮里直樹など若手中堅のキャスティング。現代社会に普遍的な問いを投げかける刺激的な舞台となるのではないか。
2/9@白河文化交流館コミネス
2/16@金沢歌劇座(金沢芸術創造財団)
2/22@東京芸術劇場
https://www.geigeki.jp/performance/concert194/
♩2/11、14 諏訪内晶子&ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル
諏訪内晶子が芸術監督を務める国際音楽祭N IPPONは芸術のもつエネルギーが人々をつなげ、今・未来の人々の生きる力、平和へのメッセージとなることを願う音楽祭。終戦75年、ベートーヴェン生誕200年の節目にベートーヴェンのソナタ3曲を名手アンゲリッシュと聴かせる。プレイエルでの協奏曲CDなど古典から現代まで目配りを持つアンゲリッシュとポピュラーな『春』『クロイツェル』での新たな境地を期待したい。
また3/13の現代音楽を並べた室内楽(ライヒから川上統まで)も必聴だ。
2/11@ザ・シンフォニーホール
https://www.symphonyhall.jp/?post_type=schedule&p=17290
2/14@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.japanarts.co.jp/imfn/information/01/
ヴァレンタインという名前の作曲家がいるらしい。イタリア名はヴァレンティーニだが、じつはイギリス人でロバート・ヴァレンタインが本名。リコーダー音楽祭の主催者として知られる本村が、バロック・コントラバスで知られる角谷(今回はヴィオローネ)、新進気鋭のチェンバロ奏者中川とタッグを組んでヴァレンタインデーに目論むコンサート。目が離せない。
2/14@近江楽堂
http://mutsuyukimotomura.com/200214/index.html
2018年2月に新国立劇場で日本初演され、高い評価を受けた細川俊夫のオペラ《松風》が、新たな演出とキャストの元に広島で上演される。しかも、今回は能舞台を使用。本作に表現される能の美が一層際立つことであろう。また、演出に岩田逹宗、指揮に川瀬賢太郎(管弦楽は広島交響楽団)、松風役に半田美和子など、ほぼ全て日本人によるスタッフでの制作を実現。これまでにない全く新しい「松風」を堪能できるのではないだろうか。
2/15,16@JMSアステールプラザ中ホール(能舞台)
http://h-culture.jp/opera/classic/event4/entry-2239.html#ttl
♩2/16、18 ルドヴィート・カンタ チェロ ・リサイタル
1990年よりアンサンブル金沢の首席チェロ奏者を務め、現在名誉団員のルドヴィート・カンタがベートーヴェン生誕250年記念イヤーとしてベートーヴェン「チェロ・ソナタ」全曲演奏会を開く。カンタはスロヴァキア共和国出身、2011年には来日20周年記念公演でマルティヌーのチェロ協奏曲2番を日本初演。世界各地で国際音楽祭やマスター・クラスなど、 後進の指導にも熱心に取り組む。熟成したベートーヴェンを聴かせてくれるだろう。ピアノはユリアン・リイム。
2/16@石川県立音楽堂コンサートホール
2/18@よみうり大手町ホール
http://www.concert.co.jp/concert/detail/2078/
日本音楽会の最先端を走るチェリスト、山澤慧がB→Cに登場する。バッハの無伴奏と、新作(全て山澤の委嘱・世界初演作)を交互に並べたプログラムを見ただけで聴き逃すことのできないリサイタルだと即断できる。山澤は、現代音楽はどこまで行くのか、是非見届けたい。
2/18@東京オペラシティリサイタルホール
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=9514
最近の東京二期会の公演には大きな注目を集めるポイントが必ずある、このプロダクションでは指揮者ジャコモ・サグリパンティの日本初登場という点。30代半ばにして、パリ・オペラ座などヨーロッパの多くの劇場でオペラ指揮者として活躍している俊英。得意とするヴェルディのオペラ、海外での高い評価を確かめるのにうってつけの演目。二期会の若手歌手たちに大きな刺激を与えてくれることを期待したい。演出は宝塚歌劇団所属の原田諒。こちらもオペラの世界とは違った発想で新たな世界を作り出してくれるだろう。
2/19~23@東京文化会館大ホール
http://www.nikikai.net/lineup/traviata2020/index.html
♩2/23 オーケストラ・ニッポニカ 日本バレエ・舞踊史における1950年
今回のオーケストラ・ニッポニカは、「日本の舞踊界の礎を築いた小牧正英、江口隆哉・宮操子へのオマージュ」とし、日本の舞踊界がひとつの頂点を向かえた時期の作品を取り扱う。ストラヴィンスキー〈ペトルーシュカ〉と伊福部、芥川の邦人作曲家の作品を並べることで、この時期の現代音楽の新たな側面が聞こえてくることだろう。
2/23@紀尾井ホール
http://www.nipponica.jp/concert/next_concert.htm