Pick Up (19/11/15)|東京・春・音楽祭 2020|藤堂 清

東京・春・音楽祭 2020
Spring Festival in Tokyo, 2020

Text by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)

毎年桜の花の時期に上野を中心とするエリアで行われてきている東京・春・音楽祭、16回目となる2020年の概要が10月28日に実行委員会から発表された。開催期間は2020年3月13日から4月18日までの5週間。
これまで継続してきたシリーズ、2019年にスタートしたシリーズ、2020年から新たに始まるシリーズのほか、生誕250年となるベートーヴェンを記念したコンサートも予定されている。
注目点を分野別に挙げておこう。

【オペラ】
音楽祭の中心となってきた「東京春祭ワーグナー・シリーズ」、2010年の第1回《パルジファル》から始まり、来年の《トリスタンとイゾルデ》の公演で、取り上げられることの多い(バイロイト祝祭劇場で演奏される)作品はすべて演奏されることになる。
指揮者には、このシリーズで《ニーベルングの指環》全曲を振ったマレク・ヤノフスキが戻ってくる。歌手陣もトリスタンにアンドレアス・シャーガー、イゾルデにペトラ・ラング、ブランゲーネにエレーナ・ツィトコーワと粒ぞろい。オーケストラは例年どおりNHK交響楽団が務める。

2019年から始まったバイロイト音楽祭との提携公演「子どものためのワーグナー」、2020年もオペラ公演と同じ演目《トリスタンとイゾルデ》が上演される。会場は前回と同じ三井住友銀行東館。セリフは日本語、歌唱はドイツ語、芸術監督カタリーナ・ワーグナーの監修による編曲版で行われる。バイロイトでは2013年に取り上げられており、観客席も舞台上の船の中にあるという設定。子どもたちがオペラに親しむきっかけになると期待したい。

もう一つ2019年からスタートしたのが、リッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」。ムーティが若い音楽家に1週間にわたるレクチャー、指導を行い、受講した指揮者、歌手によるコンサートも開かれる。指揮受講生は2019年と同じメンバー、その中には今年のブザンソン指揮者コンクールの覇者、沖澤のどかも入っている。演目はヴェルディの《マクベス》、ムーティ自身の指揮による2回の公演も予定されている。ルカ・ミケレッティ、フランチェスコ・メーリと歌手の顔ぶれも豪華。

2020年から新しく「東京春祭プッチーニ・シリーズ」がスタートする。読売日本交響楽団とともに始めるもので、初回は、《外套》《修道女アンジェリカ》《ジャンニ・スキッキ》の3作からなる《三部作》を演奏する。指揮は、近年ウィーンなどヨーロッパの主要劇場での活躍が目立つスペランツァ・スカップッチ、読売日本交響楽団とは初共演だが、春祭にはすでに何回か登場している。

【ベートーヴェン生誕250年】
1770年に生まれたベートーヴェンのアニヴァーサリー・イヤーということで、彼の曲をとりあげたコンサートが予定されている。

「東京春祭合唱の芸術シリーズ」では晩年の大作《ミサ・ソレムニス》をマレク・ヤノフスキの指揮、東京都交響楽団、東京オペラシンガーズの演奏。ソリストもイヴォナ・ソボトカ、エリーザベト・クールマンと楽しみな顔ぶれ。

室内楽でも、彼の作品あるいは彼と関係のある音楽によるコンサートが並ぶ。
「東京春祭マラソン・コンサート」を「ベートーヴェンとウィーン」と題し5部構成で行う。
エリーザベト・レオンスカヤがベートーヴェンの第30~32番のピアノ・ソナタを弾く。また、クレメンス・ハーゲンと河村尚子が彼のチェロとピアノのための作品の全曲演奏会を二夜にわたって行う。さらに、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の全曲をトリオ・アコードが三夜をかけ演奏する。

【その他のシリーズ】
「東京春祭歌曲シリーズ」も息の長いシリーズ、2020年には、4人の歌手のリサイタルが予定されており、vol.28~31ということになる。
エリーザベト・クールマンが「おとぎ話と物語、バラード」いうタイトルでリサイタルを行う。彼女らしい凝ったプログラムが楽しめそう。
マルクス・アイヒェがブラームスの《ティークの「マゲローネ」によるロマンス》を朗読付きで演奏する。コンサートではあまり行われない形なので興味深い。語りは日本語とのこと。

「ベンジャミン・ブリテンの世界」も2020年が4回目となる。今回は、歌劇《ノアの洪水》を上演する。めったに聴くことがないオペラ、貴重な機会といえるだろう。

この他にも「東博でバッハ」のシリーズ、国立科学博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館で行われるミュージアム・コンサートも若手を中心に意欲的なプログラムが組まれている。

【最後に】
新たな取り組みを積極的に進めている東京・春・音楽祭、子どもたちや美術館に来ている人といった聴衆の開拓、多くの音楽団体との共同作業の推進と、今後の音楽文化の発展に向け種まきをする姿に感動を覚える。
2020年の音楽祭がすばらしい成果を生むことを期待したい。
一聴衆としての立場から言うと、聴きたいコンサートが重なっていて悩むことが多くなってきた。うれしい悲鳴といったところ。

【追加情報】
東京・春・音楽祭は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会との共催で、「東京2020NIPPONフェスティバル」のプログラムとして、「東京・春・音楽祭特別公演 ベルリン・フィル in Tokyo 2020」を開催する。
グスターボ・ドゥダメル指揮ベルリン・フィルで、6月24日~26日東京文化会館、27日都内の野外会場で行われる。詳細は11月末に発表予定。

(2019/11/15)