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撮っておきの音楽家たち|テオドラ・ゲオルギュー|林喜代種

テオドラ・ゲオルギュー(ソプラノ歌手)
Teodora Gheorghiu , Soprano

2019年7月21日 武蔵野市民文化会館小ホール
photos & text by 林喜代種( Kiyotane Hayashi)

ルーマニアのソプラノ歌手のテオドラ・ゲオルギューが来日。武蔵野市民文化会館で歌うのは25年振りである。1994年同市が招聘したブラショフ少女合唱団「カメラータ・インファンティス」のメンバーの一人として来日。16歳のときである。この時は市内のホストファミリーの家にホームステイをして着物を着せてもらうなど日本文化についていろいろ教わったという。今回の来日で再会を楽しみにしていたが所在が分からず叶わなかった。
テオドラ・ゲオルギューは1978年ルーマニア・ブラショフに生まれる。ホセ・カレーラスが審査委員を務めたスペインのフリアン・ガヤレ国際声楽コンクールで入賞は逸したが、カレーラスは彼女は入賞に値すると言って、ポケットマネーで入賞金額に匹敵する額を奨学金として申し出た。テオドラ・ゲオルギューは「その時はじめて、歌手としての未来が私の目の前に広がった」という。歌うことはスピリチュアルな行為だとしばしば感じることがある。「歌こそ人間の核であり、からだの中から溢れ出てくるものである」と。
エリザベート王妃国際コンクール(ベルギー)入賞、ヘルベルト・フォン・カラヤン・スカラシップを得た後、ウィーン国立歌劇場にデビュー。25歳でウィーン国立歌劇場の専属歌手として2007年から2010年まで務める。フローレス、レオ・ヌッチ、ラモン・ヴァルガス、アダム・フィッシャー、マルコ・アルミリアート、ベルトラン・ド・ビリ、ウェルザー=メストなど第一級の音楽家と共演。2010年ウィーン国立歌劇場を離れ、フリーランスとして場を広げる。
デビュー・アルバム『アンナ・デ・アミチスのためのアリア集』をアパルテ・レーベルからリリース。専門誌より{驚愕のヴォーカリズム」との評を得る。
また人が人生に於いて常に変化すると同じようにアーティストも成熟していく。歌手の場合は声質にその変化が現れる。テオドラ・ゲオルギューはグラインドボーン音楽祭でR.シュトラウス『ばらの騎士』のゾフィー役での成功で新境地を開いた。2015年5月井上道義指揮・プロデュース、野田秀樹演出の『フィガロの結婚~庭師は見た』で伯爵夫人に出演している。
音楽と歌への愛情はオペラだけでなく、リートにも向けられている。今回のリサイタルも前半はシューマン、アーンなどの歌曲、後半はプッチーニ、マスカーニ等のオペラ・アリアを歌った。

(2019/8/15)