注目のコンサート|2019年8月
大野和士が音楽監督を務めるバルセロナ交響楽団が24年ぶりに来日。平和への祈りに包まれる8月の広島で「真夏の第九」がどのように鳴り響くのか、ぜひ耳を傾けたい。また、今回注目されるのは、バルセロナ出身の作曲家、ファビア・サントコフスキーによる新作《2つの三味線のための協奏曲》。演奏するのは、津軽三味線に一大ブームを巻き起こしたことでも知られる吉田兄弟。ヨーロッパとアラブという異文化の交流地でもあるバルセロナから捉えた和楽器の魅力にも期待したい。
なお、本公演は広島の他、下記の場所で開催される(曲目については公演により多少異なる)。
7月17日 愛知県立芸術劇場
7月24日 オーチャードホール
7月31日 東京文化会館
8/1@広島文化学園HBGホール
http://www.htv.jp/event/event-list/190801.html
♩8/3 アンリ・プッスール《5つのため息》 ~ベルギーよりトリオ・エラマーを招いて 歌と室内楽の夕べ~
日本現代音楽界に名高いソプラノ・薬師寺典子がヨーロッパで活躍中のトリオ・エラマーを招き、ベルギーの巨匠アンリ・プッスール(1929-2009)と同国で現在活躍中のJ.P.ドゥルーズ(1954~)の作品を演奏する。実演に接する機会はあまりないベルギー現代音楽の実演と聞けば食指が動こうと言うものだ。
8/3@杉並公会堂小ホール
https://senzoku-d.jp/post-1471/
♩8/4,5 第5回 両国アートフェスティバル2019【Cプログラム】コンサート『アメリカに見る創造精神』
今年で第5回を向かえた両国アートフェスティバル。下町・両国を舞台に、毎年独創的な演奏会が開催される。
今年の芸術監督はアメリカ在住の日本人作曲家、内藤明美。3回にわたる演奏会企画の最後を飾るこの【Cプログラム】は、内藤明美が選んだアメリカの独創的なピアノ作品で構成されている。なお、夏の両国門天ホールの象徴ともいうべき2台ピアノによるパフォーマンスも例年通り含まれているとのこと。ぜひ足を運びたい。
8/4,5@両国門天ホール
http://www.monten.jp/RAF5
♩8/5 トリフォニーホール・グレイト・ピアニスト・シリーズ ジャン・チャクムル ピアノ・リサイタル
トリフォニーホール・グレイト・ピアニスト・シリーズに、第10回浜松国際ピアノコンクール優勝者であるジャン・チャクムルが登場。プログラムには、BISレーベルより発売されたデビュー盤にも収録されている、シューベルト「ピアノ・ソナタ第7番」、バルトーク「戸外にて」も含まれており、聞きごたえ十分。話題の新生の俊英なピアニズムを、この機会に堪能したい。
8/5@すみだトリフォニーホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2019-01-003150.html
♩8/11 オーケストラ・アンサンブル金沢 オペラ&講談「耳なし芳一」
その小気味良いテンポで抜群の人気を集める若手講談師、神田松之丞の新作「耳なし芳一」と現代音楽の大家、池辺晋一郎のオペラ「耳なし芳一」を並べるとは、なんと大胆な。壇ノ浦の王朝絵巻、八雲の世界が琵琶の音と共に繰り広げられる。夏の夜の怪談話、さてどちらに胆を冷やすか、震えるか?
8/11@石川県立音楽堂 邦楽ホール
http://www.oek.jp/event/2070-2
♩8/12 ジョヴァンニ・ソッリマ 100チェロ コンサート
「100チェロ」が日本にやってくる。100人のプロ、アマチュアが一堂に会するコンサートで、軸になるのは鬼才ソッリマ。クラシックからロックまでジャンル越境のステージとなる。墨田区のシンボル葛飾北斎「神奈川沖浪裏」をモティーフにした作曲コンクールも同時開催で、選抜作品が披露されるのも話題だ。日本のチェリストたちがアンコールによく弾くソッリマだが、本人をしかと目撃したい。
8/12@すみだトリフォニーホール
https://www.triphony.com/concert/detail/2019-01-003154.html
♩8/14~17 ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1
没後500年を迎えるレオナルド・ダ・ヴィンチにちなむ音楽祭が川口総合文化センター・リリアで始まる。良く知られた美術、科学、工学での業績のほか、音楽の分野でも楽器の発明・改良、音響や音声の研究を行っていたという彼が作品の上演にかかわったオペラ《オルフェオ物語》を、濱田芳通を芸術監督とし、彼の率いるアントネッロと中心として甦演する。オペラ以外にも、ギヨーム・ド・マショーとジョン・ケージ、マウリシオ・カーゲルを取り上げる工藤あかねのステージ、日本の古楽界をリードする演奏家たちが次々登場する古楽リレーコンサートなどが予定されている。
新たな古楽音楽祭の出発を楽しみにしたい。
8/14~17@川口総合文化センター・リリア 音楽ホール/催し広場
https://davinci.anthonello.com/
♩8/16〜18第14回 HAKUJU ギターフェスタ 2019
夏の恒例、HAKUJUのギターフェスタ、今年は『音楽の旅〜ドイツ・オーストリア』。「福田進一&ドイツ歌曲の情景」「荘村清志 室内楽の世界〜磯村和英、堀了介、森岡有裕子を迎えて」のほか、旬のギタリストには秋田勇漁が登場、バッハ、シューベルト、アサドを弾く。暑さを忘れる涼やかな響きに耳を傾けたい。
8/16~18@HAKUJU HALL
http://www.hakujuhall.jp/schedule/concert/pdf/concert04_2019-20_01.pdf
♩8/17〜31 草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル
例年、温泉地草津で開かれるアカデミー&フェスティバルも今年で40年目となる。音楽監督が西村朗になって9年。現代音楽への視点を常に持つという理念は健在だが、よりバラエティに富んだ現代音楽シーンに間口を広げて欲しい感もある昨今ではある。
今年のテーマは「バッハからシューベルトへ」。常連だったヘフリガー生誕100年記念のシューベルティアーデの豪華な布陣を楽しめよう。
8/17~31@草津音楽の森コンサートホール
http://kusa2.jp/concert/2019schedule/
♩8/23~31 サントリーホール サマーフェスティバル2019
現代音楽の祭典サントリーホール・サマーフェスティバル。今年のテーマ作曲家はミカエル・ジャレル。彼の「ヴァイオリンとオーケストラのための新作」の初演が、パスカル・ロフェの指揮、ルノー・カプソンのヴァイオリンで予定されている。もう一つの柱、ザ・プロデューサ・シリーズは大野和士によるセレクション。ターネジ、リーム、細川、シャリーノ等の室内楽も楽しみだが、大きな話題はジョージ・ベンジャミンのオペラ《リトゥン・オン・スキン》(2009~12)の日本初演。2012年の初演後、世界各地で公演が行われ高い評価を得ている作品。セミ・ステージ形式ではあるが、現代のオペラを味わえる貴重な機会となるだろう。
8/23~31@サントリーホール
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2019/
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20190828_M_3.html
2009年に開催された東京リコーダー音楽祭の第2回。若手からベテランまで第一線で活躍するリコーダー奏者が一堂に会し、2日間にわたって繰り広げるリコーダーの世界。独奏、アンサンブル、協奏曲と多彩な編成に加え、15世紀から現代曲に至るレパートリーの広さから、あの「縦笛」のイメージを一新してみませんか?
8/24,25@東京文化会館小ホール
https://tokyo-recorder.com/
スウェーデン放送合唱団首席を経て現在はオランダ室内合唱団首席指揮者の任にあるペーター・ダイクストラを指揮に迎え、ハイドンの超大作、オラトリオ「天地創造」全3部を上演する。ソリストには盛田麻央、櫻田亮、青山貴など日本の声楽界の気鋭を起用。なかなか上演されない大曲だけに、世界屈指の声楽エキスパートによる演奏は貴重な機会となりそうだ。
8/25@京都コンサートホール
https://www.kyoto-symphony.jp/concert/detail.php?id=800&y=2019&m=8
♩8/29,9/1 パーヴォ・ヤルヴィ&NHK交響楽団 オペラ『フィデリオ』
来年となるベートーヴェン生誕250周年を先取りした企画。演奏会形式ながらN響でフィデリオが聴けるのは貴重。パーヴォがこれをどう振るのか、世界中から集められた(もちろん日本からも鈴木准、大西宇宙が)精鋭歌手たちの美声がどう響くのか、興味と期待は尽きない。
8/29,9/1@ Bunkamuraオーチャードホール
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/19_fidelio/
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8月以降の注目コンサート
♩10/18 KYOTO EXPERIMENT ウィリアム・ケントリッジ『冬の旅』
今年のKYOTO EXPERIMENTは、「世界の響き〜エコロジカルな時代へ」をテーマに、10月5日から27日までの23日間にわたって京都市内で開催される。演劇や美術、音楽、ダンスの分野で世界的に活躍する約 10組のアーティストを招聘し、公式プログラムの他、様々な関連行事が予定されている。
10/18@京都芸術劇場 春秋座
https://kyoto-ex.jp/home/
本誌で注目したいのは、南アフリカの美術家で、オペラなどの舞台も手がけるウィリアム・ケントリッジの演出によるシューベルト「冬の旅」。2010年に京都賞を受賞したケントリッジは、KYOTO EXPERIMENT 2019の参加アーティストの一人に選ばれたが、昨年10月に新国立劇場で上演された「魔笛」の演出と美術を担当したことでも話題を集めたばかり。今回はオペラではなく歌曲の演出だが、世界屈指のバリトン、マティアス・ゲルネの独唱に、ザルツブルク音楽祭芸術監督も務めるマルクス・ヒンターホイザーのピアノと、オペラに引けを取らない豪華な顔ぶれ。声楽ファンのみならず、美術、舞台芸術を愛する者には見逃せない一夜となりそうだ。