だからどうしたクラシック|カラヤン& ベルリン・フィル1966年来日公演|松本大輔
カラヤン& ベルリン・フィル1966年来日公演
奇跡の松山公演!&福岡公演
text by 松本大輔(Daisuke Matsumoto)
レーベル/商品番号:キング・インターナショナル KKC 2186
<演奏>
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィル
<曲目>
(1)J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051
(2)ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
(3)ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
<録音>
1966年4月26日/松山市民会館(1)(2)、
1966年4月28日/福岡市民会館(3)
(ライヴ)/STEREO
アリアCDでの掲載URL
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=101/101new10#61
まだ発売にもなってないCDを紹介するな、と言われそうですが、もう紹介せずにはいられないんです。
松山なんです。
まさかの松山なんです。
カラヤンと ベルリン・フィルが来たんです。
松山まで。
1966年。
このときのカラヤンとベルリン・フィルの来日公演で、彼らが私の生まれた街松山に来たということは情報としては知っていました。
へー、そりゃすごいなあ、と。
よく四国まで。
これだけの顔合わせのクラシック・アーティストが松山に来ることはもう二度とないでしょう。
ほんとに松山の歴史上ベスト10に入る重大事と言っていいのではないでしょか。
・・・ところがなんと!
そのときの演奏がCDで出るというんです。
NHK レジェンド・シリーズ 6
カラヤン& ベルリン・フィル1966年来日公演(その2)
そのシリーズのなかの一枚に松山での演奏が入っているんです。
信じられますか!?
ほかにもいろいろ行ったであろうに、こともあろうに松山のライヴを入れてきたんです!
曲は2曲。
(1)J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051
(2)ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
このとき私、1歳。
さすがに聴きに行くことはできなかったんですが(行きたいと駄々をこねたらしい、・・・というようなことはないです)、1歳の自分の1キロほど離れたところにカラヤンとベルリン・フィルがいたわけです。
「いや、そんなこと言ったら、自分は1988年の来日公演でサントリーホール の最前列で聴いたから、すぐ目の前にカラヤンがいたよ」、とか言われちゃいそうですが、1966年の日本クラシック界黎明期に、カラヤンとベルリン・フィルが松山に来てくれたというのが嬉しいじゃありませんか。
で、それは話としては知っていたんですが、まさか、まさか、まさか、そのときの演奏会の記録を耳にすることができるとは!
カラヤンのことを好きとか嫌いとか関係なくこれは嬉しいです。
母校が春の甲子園に「21世紀枠」で出たとき以来の郷土愛的感動です。
そのときのスケジュールはこんな感じ。
1966/4/12(火) 東京文化会館
1966/4/13(水) 東京文化会館
1966/4/14(木) 東京文化会館
1966/4/15(金) 東京文化会館
1966/4/16(土) 東京文化会館
1966/4/17(日) 宮城県民会館
1966/4/19(火) 札幌市民会館
1966/4/20(水) 愛知文化講堂
1966/4/21(木) 金沢市観光会館
1966/4/22(金) 大阪フェスティバルホール
1966/4/24(日) 岡山市民会館
1966/4/25(月) 高松市民会館
1966/4/26(火) 松山市民会館
1966/4/28(木) 福岡市民会館
1966/4/29(金) 広島市公会堂
1966/4/30(土) 大阪フェスティバルホール
1966/5/2(月) 東京文化会館
1966/5/3(火) 東京文化会館
これは大変なツアーです。
1957年の初めてのベルリン・フィルのツアーのときも全国縦断してますが、ここまで地方には行ってないです。
もちろん3回目以降はもうこんな無茶はしてません。
2回目の来日、しかもカラヤン、元気バリバリ。
東洋にこれからガンガン攻めていこうという商魂と芸術家魂と開拓者魂がないまぜになった強行軍と言っていいでしょうか。
岡山、高松に行くんだったら、ついでに松山も行っておこう、という感覚だったのかもしれませんが、なんにしてもよく瀬戸内海を渡ってくれたと思います。
松山公演の次の日は休みですね。
道後温泉とか行ったんでしょうか。行ってないと思います。
でもカラヤンはお城山の上の松山城の美しい天守閣を見上げて祖国のザルツブルクを思い出し、「ここは日本のザルツブルクか!」と言って涙したかもしれません。ないと思います。
でもあの松山市民会館で演奏したんですね〜。
あのホールで演奏してくれて、なんと言っていいか、申し訳ないやらおこがましいやら・・・。
いや、ちょっと待ってください。
松山市民会館って、ちょっとベルリンのフィルハーモニーに似てません?
あのころの日本の建物って、なんとなくドイツの建造物に似せて造ってるようなところありませんか?ちょっとモダンで前衛っぽくて。
松山市民会館もそういう雰囲気あります。
ひょっとしてカラヤン、松山の市民会館の概観を見て、「おお、これは日本のフィルハーモニーではないか。ここで演奏会をやらないのなら今回のツアーはなかったことにしてくれ」とかいったのではないでしょうか。言ってないと思います。
あれ・・・
ふと思ったんですけど、松山市民会館って、私が小さい頃にできたんです。
幼稚園の頃行った松山市民会館はできたてですごくピカピカしてました。
このときのカラヤン&ベルリン・フィルが公演したホールの完成年を見てみましょ
う。
広島市公会堂 1955
札幌市民会館 1958
愛知文化講堂 1958
大阪フェスティバルホール 1958
東京文化会館 1961
高松市民会館 1961
金沢市観光会館 1962
福岡市民会館 1963
宮城県民会館 1964
岡山市民会館 1964
松山市民会館 1965
な、な、な、なんと、松山市民会館が一番新しいじゃないですか!
できたてですよ!
設備なんてきっと最新だったはず!
あ、だから松山、カラヤンを呼んだんでしょうか!
一大竣工記念イベント!
きっとカラヤンもベルリン・フィルの団員も「おお、日本にこんなすばらしいホールがあったのですねえ」とか言ったかもしれません。これは言ったかもしれません。
その23年後、亡くなる直前、目の前にいた元Sony会長の大賀典雄氏に「ああ、最後にあの日本のザルツブルクの、あのフィルハーモニー・ホールでもう一度演奏したかった」と言ったかもしれません。これは言ってないと思います。
うーん、でもなんにしても、そのときのツアーではそうとう印象的なホール、公演、街だったのではないでしょうか!?
まあ、そんなこといろいろ好き勝手に想像しながら聴いてみてもいいでしょうか。
★★★★★
カラヤン& ベルリン・フィル1966, 奇跡の松山公演!&福岡公演
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=101/101new10#61
ちなみに私、大学が岡山だったんですが、岡山での公演も今回のリリースの中に入ってました!
いっしょに聴いちゃいましょう!
★★★★★
カラヤン& ベルリン・フィル1966岡山公演
ドヴォルザーク:交響曲第8番/「牧神」「海」
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=101/101new10#60
(2019/5/15)
———————————————–
松本大輔(Daisuke Matsumoto)
1965年、松山市生まれ。
24歳でCDショップ店員に。1998年に独立、まだ全国でも珍しかったネット通販型クラシックCDショップ「アリアCD」を春日井にて開業。
クラシック専門CDショップとしては国内最大の規模を誇る。
http://www.aria-cd.com/
「クラシックは死なない!」シリーズなど7冊の著書を刊行。
愛知大学、岡崎市シビック・センター、東京のフルトヴェングラー・センター、名古屋宗次ホール、長久手、一宮、春日井などで定期的にクラシックの講座を開講。