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だからどうしたクラシック|ドヴォルザーク:ヴァイオリン作品集|松本大輔

ドヴォルザーク:ヴァイオリン作品集

text by 松本大輔(Daisuke Matsumoto)

レーベル/商品番号:AUDITE AU 92566

<演奏>
イヴァン・ジェナティ(Vn)、イゴル・アルダシェフ(P)

<曲目>
4つのロマンティックな小品Op.75-1
 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調Op.57
 バラード ニ短調Op.15-1
 マズレック ホ短調Op.49
 ソナチネ ト長調Op.100

録音:2006年11月23-25日

アリアCDでの掲載URL
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=40/40newmin1#0

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<いなかおやじのこどくなタワゴト>

◆2019年3月〜4月

★息子がもうすぐ帰ってくるらしい。久しぶりに男二人で飲みに行くか。
◎今日の視聴曲:サン=サーンス/レクイエム
  サン=サーンスにもレクエイムがあったとは知らなかった。
  フォーレほどではないとしてもとても熱く美しい。
  こんな曲があったとは。

★息子が大学野球でエースで4番で大活躍。ただ、練習が忙しいみたいでなかなか帰ってこられないらしい。
◎今日の視聴曲:ヴィエルヌ/ピアノ五重奏曲
  知られざる傑作として紹介されていたフランスの作曲家ヴィエルヌのピアノ五重奏曲。
  確かに気迫あふれる大作。苦悩にあふれているような気がする。

★米国留学してからもう何年経つんだろう。今度はいつ帰ってくることやら。
◎今日の視聴曲:シベリウス/マリンコニア
  チェロの美しい曲。シベリウスにこんな曲があったのか。
  なんとも切ない。

★詰襟姿もまぶしい。ずいぶん大きくなったものだ。親はなくとも子は育つ、か。
◎今日の視聴曲:スメタナ/ピアノ三重奏曲
  これまで聞いたことなかったが、なかなかエネルギーあふれる曲。
  終楽章など熱いくらいである。

★残業残業で忙しいらしい。帰郷どころか最近はメールしても返事が返ってこない。ブラック企業でなければよいが。体が心配。
◎今日の視聴曲:ドヴォルザーク/ピアノ三重奏曲 第2 番
  あまり聞かれることのないドヴォルザークの若いときのピアノ三重奏曲。
  先日聞いたスメタナの曲に少し影響を受けているような気がする。
  ドヴォルザークはスメタナの曲を聞いたことがあるのだろうか。

★桜の花がもう散ってしまった。やっと咲いたのでお花見でもと思っていたのに。
◎今日の視聴曲:ドゥラランド/ルソン・ド・テネブル
  また珍しい曲を聞いた。ドゥラランドは300年前にフランスで活躍していた作曲家らしい。
  ルソン・ド・テネブルというのは暗闇でロウソクを1本ずつ消して、最後は暗闇になって終わる宗教儀式の音楽とのこと。
  とても神秘的。

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スタッフ:昔よく事務所に遊びに来てくれていたお客様の◯◯さんが久しぶりにブログをアップされてましたよ。
店主:え。
スタッフ:ほら。日記っぽい感じですけど。日記とあわせてうちで購入されたCDを紹介してくださってます。
店主:え。
スタッフ:◯◯さんの息子さん、もう社会人になられたんですかね、早いですね。
店主:いや・・・。
スタッフ:なんですか。
店主:いや・・・これは・・・。
スタッフ:え?
店主:◯◯さんの息子さんは・・・
スタッフ:なんですか。
店主:・・・2年前に亡くなってる。
スタッフ:え。
店主:言わなかったか。すまん。
スタッフ:じゃあ、このブログは・・・息子さんのこといろいろ書いてますが・・・
店主:まだその事実を受け容れられないんだよ。
スタッフ:そんな。
店主:だから息子さんの描写がおかしいだろ。思い出と妄想が入り混じってる。
スタッフ:そんな・・・。
店主:それによくみてみろ、紹介している曲・・・全部子供を亡くした作曲家がその悲しみから書いた曲ばかりだ。息子さんの死を受け容れられないが、潜在意識のなかではやはり気づいていて・・・そういう曲ばかり聴いてしまっているんだ。
スタッフ:・・・
店主:ただ・・・一番最後の曲だけは違う。この曲を作ったあとドゥラランドは愛する娘を亡くすんだが、その子はこの曲を生前歌っていた。だからこれはドゥラランドと娘の美しい思い出の曲なんだ。だからこの曲を選んだということは、辛いけれど現実を見ようとし始めているのかもしれない。コメントも他のとちょっと違う。
スタッフ:あ、◯◯さん、そういえば先週久しぶりに注文されてましたよ!えっと・・・・これです。Audite92.566。
店主:あ!
スタッフ:なんですか!?
店主:ドヴォルザークの作品100!
スタッフ:なんですか?
店主:この曲は、子供を全員失ってしまったドヴォルザークが、新しく生まれた子供たちのために作った曲なんだ。
スタッフ:そうなんですか!じゃ、じゃあ、その曲を聴こうと思ったということは・・・
店主:そう、◯◯さん、前を向こうとしているのかもしれない。
スタッフ:ですね・・・

                         (2019/4/15)

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松本大輔(Daisuke Matsumoto)
1965年、松山市生まれ。
24歳でCDショップ店員に。1998年に独立、まだ全国でも珍しかったネット通販型クラシックCDショップ「アリアCD」を春日井にて開業。
クラシック専門CDショップとしては国内最大の規模を誇る。
http://www.aria-cd.com/
「クラシックは死なない!」シリーズなど7冊の著書を刊行。
愛知大学、岡崎市シビック・センター、東京のフルトヴェングラー・センター、名古屋宗次ホール、長久手、一宮、春日井などで定期的にクラシックの講座を開講。