《響の森》Vol.43 ニューイヤーコンサート2019|平岡拓也

東京文化会館《響の森》Vol.43
ニューイヤーコンサート2019

2019年1月3日 東京文化会館 大ホール
Reviewed by 平岡拓也(Takuya Hiraoka)

<演奏>
サクソフォーン:須川展也
管弦楽:東京都交響楽団
指揮:川瀬賢太郎

<曲目>
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」Op. 24 より ポロネーズ
グレグソン:サクソフォーン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
アイルランド民謡:ドゥーン河のほとりにて
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op. 36

 

東京文化会館がシリーズで催すオーケストラ・コンサート《響の森》から、恒例となったニューイヤー・コンサートを聴く。例年、新年を寿ぐ名曲コンサートとして親しまれている本公演であるが、今年はひと味違うようだ。中プロに置かれた英国の作曲家エドワード・グレグソン(1945-)による『サクソフォーン協奏曲』は、あまりオーケストラのコンサートでは見かけない曲目である。委嘱・初演者の須川展也を独奏に迎えて、吹奏楽では定番のグレグソン作品がどのように文化会館に響くか。

曲順が前後するが、協奏曲から書き起こしたい。

指揮者が入場、答礼してオーケストラと向き合うが、舞台上にソリストはいない。やがて舞台の照明が少し落とされ、翳を帯びる。そこで聴こえてくるのがアルト・サクソフォーンの独奏だ。下手の舞台袖からこだまのように我々に語りかけ、だんだんその声は近づいてくる。旋律を豊かに歌う須川展也に、ビッグバンドの延長線上にあるオケはキレ味鋭いリズムで応じる。第2楽章で独奏はソプラノ・サクソフォーンに持ち替え、前楽章とはまた全く違う一面を見せた。第3楽章では再び音楽が活気を帯びて曲を閉じる。須川は最後の超ハイトーンに至るまで、盤石のプレイで客席を沸き立たせた。都響の各セクションの活躍も楽しく、ドラムセットを鮮やかに操るティンパニ奏者、ベルアップするクラリネットやオーボエなど、この楽団の高機能が遺憾なく発揮された瞬間でもあった。オーケストラ側の負担が大きいなどの障壁も考えられようが、クラシック音楽におけるサクソフォーン協奏曲のレパートリーとして、今後定着して欲しい楽曲であると感じた。
須川展也のアンコールはアイルランド民謡『ドゥーン川のほとりにて』、前半を温かな余韻で締めくくる。

演奏会冒頭と後半はチャイコフスキーの『エフゲニー・オネーギン』ポロネーズ、『交響曲第4番』という華やかな選曲。前者はやや小手調べという印象を受けたが、交響曲ではこの楽団の美質である緻密な合奏を土台に、川瀬が濃厚なフレージングを加味。更に実演ならではの即興的な激情が随所で燃え立ち、聴き応えのある演奏であった。
ここからは余談である。このコンサートは1月3日に行われており、筆者はどうしてもリハーサルのスケジュールを勘繰ってしまうのだが―仮に1日だけの練習でこの水準の彫琢が成されていたとすれば、それは指揮者・川瀬賢太郎の優れた手腕の賜物ではなかっただろうか。そうなると、じっくり定期並みの練習を重ね、彼がやりたいことを楽団に透徹させた演奏も聴いてみたくなるというものだ。勿論、これは聴き手のエゴでもあるが。

(2019/2/15)